第20章:来訪
はい、どーも。作者です。さてさて今回は新キャラを出しました!名前はもう出て来てますがね。コイツは後でなかなか重要な役割を果たしていただく予定でいます!楽しみにしててください!あ、それから最近最新章の執筆スピードが酷く落ちているので、下手すると更に投稿スピードを落とすかもしれません。予告だけしておきます、はい。それでは本編をお楽しみ下さい。
「なんだ、お前もやりゃできんじゃねぇか。なんだ?隣にいいとこ見せようってか?よっ、この色男!」
前章のテストで奇跡を起こした俺は、井伊に肩をつつかれていた。
「はあ?まっさか〜!俺がそんな事絡みで努力する訳な・・・」
「いや、あるだろ?正直に言ってみろよ。なんならここで大声でばらしても・・・」
「わーっ、それだけはよしてくれ!頼むから!」
そうだった。俺は中学時代、好きな子に、
「テスト頑張ろうね!」
と言われ有頂天になり、過去にないくらい真面目に勉強して、たった一度だけ、井伊を追い越したことがある。しかしながら、そいつには彼氏(井伊)がいて、逆に嫌われてしまったという空しいくらい恥ずかしい過去がある。こいつ、まだ根に持ってやがるのか。俺の忘れたい過去を・・・。
しかし、隣のために頑張った筈がなかった。そんな事まで気にかけてる余裕等なかった。とにかく俺は赤回避が絶対だったからだ。そのためにあの糞箱をかばんに忍ばせて、数学と英語だけばれない程度に教えて貰っていたなんて、口が裂けても言えなかった(皆は真似するなよ、ってできねぇか)。
その日の放課後、部活をして、家路に着いた。ちなみに俺の部活は剣道部だ。これでもレギュラーで、小学校時代は名を轟かせたものである(言い過ぎ)また、担任が顧問だ。普通それはねえだろと、クラス替えの時に思ったのが懐かしい。
最近の部活は、修行のせいかほとんど疲れる気がしない。お陰で真面目にやってないと思われて、担任に稽古でボコボコにされる日々が続いている。しかもあいつ、どことなく外してきやがる。そんな姑息な手を使うなってんだよ!こっちゃ普通の高校生(学校では)だぞ!
「ああ〜!肩痛い!」
そんなこんなで、俺は家路に着いたが、お陰で全身がたがただ。
最近これが口癖になっている。
これから修行はマジで勘弁してほしい次第である。これ以上やったら、学校で間違いなくぼろが出るだろう。腕相撲なんかやったら、確実に相手の腕をぶっ壊す羽目になるのは間違いないことくらい俺だって分かっていた。それだけは避けたかった。そんなことしたら、余計はぶられる。さて、どうしようかな〜・・・。
ガチャ!
「ただい・・・」
「ガハハハ!お前も酒は強い方だなぁ!」
帰ってくるなり、親父の馬鹿でかい声が玄関にこだました。親父はかなりできあがっているらしい。
「ええ!酒と弓とが俺の取り柄ですからね。いや〜、親父さん。凄い楽しいっす!」
「そうかそうか!それでこそこの秘蔵のワインを出した甲斐があるってもんだ!おい、母さん!棚にある、大燐丸出してくれ!」
「もう。お父さん、飲み過ぎよ。また検診でひっかかるわよ。」
と言いつつ、お袋は父のお気に入りの焼酎、大燐丸を差し出す。そこで俺に気付いた。
「あら。帰って来たの?テストどうだった?」
第一声でテストのことを聞く親はよくいるものである。それは本当に辞めてほしい。
「お袋、お客さんいんのにテストの話はまずいって!」
俺はお袋を止めた。
「え?別にいいじゃないの。だってこのお客さん、あなたをずっと待ってたのよ。少し前に来て、あなたがいないからって帰ろうとしたらお父さんが帰って来て、一緒に酒を飲もうと言って家にあげたらこの始末よ。」
とお袋は半分呆れながら言った。
そうである。親父は無類の酒好きで、日本中のうまい酒を集めては、自作のセラーにきっちりとしまってあるのだ。しかも、今日は酒好きがもう一人増えたときたもんだ。止まるはずはない。
「親父!いくらなんでも飲み過ぎだって!」
俺は二人を止めに入ろうとして、やめた。異常に酒臭かった。俺はこのニオイはどうもダメなのだ。とりあえずこの二人が収まるまで待つことにした。
1時間後、ダメだ。止まらない。こうなったときの親父にたいする最強の切り札が、
「親父。コートからなんか出てきたけど?」
俺は中身の何もない封筒を親父の前でちらつかせた。
「わ〜っ、わ〜っ!頼む!それだけはあ〜!」
親父が必死に俺を制止にかかる。
「じゃあ、酒をそろそろ辞めろよ!そしたら返してやるよ!」
「はい、わかりました。」
親父を騙すには、適当な封筒ではったりをかますのが一番だ。間違いなくひっかかる。そして、もう一人を俺の部屋に連れてくる事にしたのだった・・・。
「で、名前と、俺の家を訪問しにきた目的は何ですか?正直にお願いします。」
俺はとりあえず質問してみた。
「サミュエル、28歳。ちょっと用事があってな。」
サミュエルと聞いて俺は飛びのいた。
「わーっ、止めてください!命だけは、命だけはぁ!」
そうである。サミュエルといえば、十二魔将一の弓使いである。精確無比な弓捌きで、敵を葬るらしいということは糞箱から叩き込まれた(第8章参照)。
「用事って、俺を始末しに来たんでしょ!それくらいわかってますよ!ガラクトスとか言う奴の命令でしょ?そして俺を・・・」
「あ〜、言いたいことは分かったから落ち着けって。それが・・・どちらかというと、組織を半ば抜け出して来たんだ。」
サミュエルとか言う奴は、一瞬表情を曇らせながら言った。
「え?それじゃあ・・・裏切りって事に・・・?」
「・・・まあ、平たく言えばそういう事になるなぁ。」
彼は少し照れながら言った。いや、そこ照れる所じゃないから。むしろもっと表情を曇らせて、しんみりとさせる、大事な場面だから。もう少し考えよ、うん。
「でも、何故ワイらと手を組もうと考えたんや?」
「うるさい!黙ってろ!」
ゴッ!
俺は勝手に首を突っ込む糞箱に、きっちり肘鉄砲をかます。
「ああ、気にしないでどうぞ。」
「おお、すまない。実はな、極秘で隠密作業を計画してるんだ。君達が、ラグーン・・・いや、ラグナシアって奴と戦って、目の前でガラクトス様が消したのを見ただろう?」
「は、はい・・・。」
驚きだ。しっかりと情報が回っているらしい。まあ、十二魔将の一角が首領から消されたとなると、広がらない訳がないけどな。
「ラグナシアとはちょっとした仲でな、あいつには『兄貴』と呼ばれていたんだ。で、俺も、なんか弟ができたみたいでな。『ラグーン』なんて勝手にあだ名をつけて、戦いに勝った時とか、ラグーンに何か悲しいことがあったら、二人でつまみ片手に酒を飲んだもんだよ・・・。あ、ごめんな。なんか、空気を壊して。」
俺の部屋に、しんみりとした空気が流れた。そりゃ誰だってそうだ。目の前にいたかけがえのない友人とか、身内とかを突然奪われれば辛い。そういう事はよく分かっているつもりである。けれども、今はまだ聞きたい事が山とある。だから、まずはそちらが先決だ。
「あ・・・気にしないで下さい。全然平気ですから。」
とは言ったものの、平気な筈がない。でもそこで足踏みしてても仕方がない。俺は一歩踏み込んで聞いてみる事にしてみた。
「あ、そうだ!サミュエルさん・・・でしたっけ。あまり聞くような所ではないし、無礼を承知で聞きたい事があるんです。その・・・隠密作業って・・・一体、何を考えているんですか?」
ダメと言われたら、必殺のバック宙返り二分の一捻り土下座を見せる覚悟もできていた。この技は、非常に危険なのだが、体育のマットの実技テストで、何もする技を考えてなかった俺が、やけくそになってやって成功してしまったせいで、以来うちの高校で半ば伝説化している幻の大技である。
「ああ、まあ、ばらしてもいいか。親父さんにおいしい酒を御馳走になったし、君達の協力が必要だしね。」
あれ?随分とまあ、簡単に言ってくれたよ。ナイス、親父!
「さて、本題に入ろうか。君達のクラスに唐沢って人がいるだろう?」
「いますけど・・・どうかしたんですか?」
俺は少し驚いた。なんでこの人が唐沢の名前を知っているんだ?
「実は、これは軍内の機密情報なんだけど、その唐沢って人に、十二魔将が取りついて、君を狙っているらしいんだ。」
衝撃の事実、発覚。一言でまとめるとそうだった。いきなり言われても困る。それが俺の率直な感想だった。
「いや・・・それはちょっと驚きす・・・ブッ!」
彼は俺のあまりにも何かが抜けたような表情に吹き出した。結構失礼だ。
「まあ、それは置いといて・・・。君には何か思い当たる節はないかい?」
「そういえば・・・席隣だったんですけど、なんか物凄い冷たい視線で見てきたり、この前は放課後呼び出されて、『あなたにこの世から消えて欲しいの。』って言われました。」
俺は彼に正直に言った。
「そうかぁ・・・それじゃあまだその感じだと、俺の行動には気付いてないようだな。それじゃあ明日、また来るから、君のお仲間達にも伝えといてくれ。あ、忘れてた。親父さんに、大燐丸美味しかったです、って伝えといてね。それじゃあまた明日。」
といって、彼は去っていった。
しかし、あの人、また来るのかよ。しかも酒目当てってのが見え見えだよ。もうちょいひねろうよ。そう思いながら俺は、昨日中濱から渡された、ニュータイプのホログラムキーを取り出して、修行しに向かったのだった。
次章、サミュエルの練った計画が明かされる!
To be continued...




