第18章:悲劇
はい、どーも。作者です。更新が遅れてごめんなさい。今回は読者の皆さんにお知らせがあります。これまで約二日ペースで投稿してきましたが、執筆スピードの関係で、少しペースを落としたいと思います。楽しみにしてくれている方には申し訳ありませんが、ご了承下さい。それでは前置きが長くなりましたが、本編をお楽しみ下さい。
ズガアアアアァァァン!
前章で俺は、中濱の協力もあって、ラグナシアめがけて、角をぶつけたのだった。完璧だった。もうピンポイントだった。俺から言えることは何もない。
奴は雷を落とされて、プスプスいっている。奴の体が黒くなっている。
「ぐ・・・ま、まだ・・・まだ終わってねえぞ・・・。お、俺は・・・兄貴のと・・・ころに帰らなきゃ・・・い・・・かんのだ・・・よ。こんなところで・・・くたばる訳・・・にはいか・・・ねえんだよ!」
奴がゆっくりと体を起こしながら、息も絶え絶えにこう言った。
何故立ち上がれる?俺はただそれだけが不思議で堪らなかった。
きっと中濱も・・・ってあれ?中濱がいねえ。かわりになんか、ちっこい緑色のかわいいフェレット的な奴がいるんだけど・・・あ、そうか!中濱も完全漂依に成功しやがったのか。だからあの時も物凄いバリアの出力だったんだ。全く、中濱には底が見えねぇよ。でもそうしたら俺の努力って一体・・・?ちょっと空しくなった。
ドサッ。
けれどもラグナシアは流石に倒れた。前の俺との戦いのダメージが少しばかり残っていたらしい。更に、俺の一発の威力が大幅に上昇したことも繋がった気がする。まあ、とにかく、十二魔将に、勝ったど〜〜〜〜〜〜〜〜!
ああ〜、長かった。
コイツには一度殺されかけて、挫折も味わわされた。
更にお陰で治療虫(第12章参照)の地獄のような痛みも味わう羽目にもなった。けれども、もしコイツと出会わなかったら、俺はあの時の自分に勝手に満足し、修行を積んで、完全漂依を身につけないまま、他の十二魔将に殺されていたのかもしれない。それだけに・・・なんか、可哀相な気がしてならなかった。
「お、おい!お前、とどめをささない気か?早くさせよ!」
「・・・」
俺は答えなかった。なぜか答えられなかった。ここでうん、と言ってしまえばそれまでだし、1番簡単だ。だって、俺達を殺しに来たのだから。けど、だけど・・・
「なんだ、ささないのか?じゃあ遠慮なく俺が・・・」
「よせ、中濱!」
俺はとどめをさそうとする中濱を必死に制して言った。
「なんでだよ!だって、コイツは俺達を殺しに来たんだぞ?」
「わかってる。だけど・・・だけど、俺はコイツにとどめをささない、いや、させない。だから生け捕りにして、捕虜にする。」
「はあ?お前、さっきの戦闘で頭がイカレちまったんじゃないか?」
中濱が俺の半ば無理矢理な意見に反発する。
「わかってるのか?確かにそりゃ、コイツを捕まえとけば、情報源にもなるし、敵への牽制にもなるけどさ・・・」
「その心配をする必要はないぞ、小僧共。」
突然、中濱の話を遮る形で、何か黒い影が現れた。気配はなかった。俺達は思わずびっくりして、距離をとった。
「な、なんだよ!急に来やがって!何の用だよ!」
俺と中濱は、少し焦りながら言った。
「おっと、名を名乗るのを忘れておったようだな。私の名はガラクトス。バイオ・ウォーズを始め、更に貴様らの命を狙っているといえばわかるかな。」
その影は静かにそう言った。
いやいやいやいや、もう十分ですって。バリバリでわかっちゃいましたから。それにしても、何故影だけ?見た感じだと、普通の老人にしか見えないけど・・・何のためにこちらへ?
「実はな、今お前らの始末を精力的に行ってる訳だが、どうやらコイツがしくじったようだからな。お前らを始末ついでに、処分を言い渡しに来たのだよ。」
ガラクトスは言った。
あれ?何この予想外のフラグ。急に親玉登場は、反則、1回!じゃね?そんなに急に来られても、返事が返せないんですが・・・。
「ガ、ガラクトス・・・様。も・・・申し訳・・・ございませんでした。」
ラグナシアは息も絶え絶えだ。
「全く、なんだ!その無様な姿は!こんな小僧共にやられおって!たるんどるぞぉ!」
バリバリバリバリバリバリ!
さ、流石親玉。
いきなりラグナシアを叱り飛ばした。
けれども、もっと驚いた事に、その一声で目の前の木々が何本も倒れ、ラグナシアが吹っ飛んでいくのが見えた。俺達も完全漂依状態なのに、一メートルほど後ろに飛ばされてしまった。思わず尻餅をつく。こ、これが親玉こと、ガラクトスの実力とでもいうのか!まったくどれほどの力を持っているんだよ、コイツはよ!
「ふぅ、とにかくお前は十二魔将から降格させる!二階級な!じっくりと実力を蓄えておけ・・・」
ビシイイイイィィィ!
不思議と俺は体が勝手に動いていた。もう考えてる暇などなかった。許せなかった。確かに組織ではミスは重大だ。けれども、そんな簡単なもんじゃねえだろ!
俺は必死で角をぶつけにかかっていた。しかし、それは考えが甘かった。俺の角はおもいっきり受け止められてしまった。しかも左の人差し指一本で。
「まだまだぁ!いっけえええぇぇぇ!」
ズドオオオオォォォォン!
文句なく奴の頭上にドデカイ雷が打ち落とされた!これならどうだ!確実に決まっ・・・
「ほお、まあ一応は完全漂依のようじゃな。なかなかいいセンスをしておる。」
は?無傷ですか?あんだけ完璧に決めといて無傷って・・・どんだけだよ!
「攻め的にはうちの小隊長レベルじゃな。けれども威力だけは幹部クラスだと認めてやろうかの。」
いやそれほどでも〜じゃねえよ。敵に誉められてどうする。何やってんだよ、俺!
「しかしなあ、この程度の攻撃じゃあ、このわしは倒せんぞぉ〜!」
ブオッ!
奴の周りに衝撃波が吹き荒れた。俺は危うく吹き飛ばされそうになったが、何とか踏み止まった。
「しっかし、貴様の角は邪魔じゃなあ。ちょっと失礼するぞい。」
ガシッ!
ボキン!
「ぐ、ぐおああああぁぁぁぁ!」
麒麟自慢の角が、いとも簡単に折られた。体中に激しい激痛が走る。
「そうそう、お主らは知らないようじゃが、完全漂依状態だと、痛みは倍増するから、そこは気をつけておくんだな。まあ、気をつける間もなく貴様らはあの世に葬られるから、気にすることはないがな。」
いやいやいやいや、気にしますって、そこ一番。そこを知らなかったら、どうしようもないでしょうよ。
シュオオオオオオォォォ!
ありゃりゃ、なんか奴の右手におぞましいものが溜まっちまってるよ。こんなの喰らったら確実にあの世行きだよ。
「さらばだ、こわっぱぁ!廼颶鄲黶!」
「う、うわあああああああ!」
やばい、やられる・・・
ドゴオオオオオォォ!
あ、あれ?俺達には当たって・・・ないよな。じゃあ中濱か?と思ったが、中濱は後ろで腰を抜かしている。ってことは・・・ラグナシアか!あいつ、死ぬぞ!
「ふん、命拾いしたな。それではまた来るとしようかの。それじゃあ、グッドラック!」
とガラクトスは親指を立てて、勝手に帰っていった。やりたい放題である。何しに来たんだよ、あの糞爺!
俺達は、あんな巨大な闇を喰らっちまったラグナシアのところに駆け寄った。奴はもう完全に碧い血が近くに飛び散りまくっていた。
「おい!しっかりしろよ!おい!」
俺は必死で奴の肩を揺する。でも、返事が返ってこない。
俺は更に、タレーランさんからもらった治療虫を振り撒いて奴らに無理矢理治させた。その甲斐があったのか、ラグナシアは何とか少しだけ喋れる位にまでは回復したのだった。
「おい!一つだけ聞きたい事がある。何故さっき、敵である俺達を助けた!言えぇ!ラグナシアァァ!」
俺は襟首を掴んで叫んだ。もうそのまま泣き崩れたかった。助けてくれたことはありがたいが、なんか腑に落ちないからだ。
「・・・似てた・・・から・・・さ。」
「え?」
「あの頃の・・・俺は・・・無茶しまく・・・りだった・・・んだよ。それが・・・さっきのお・・・前と重なった・・・からさ。」
そうだったのか・・・。それだから自らの身を犠牲にして、俺達を守ってくれたのか・・・。俺は胸が詰まる思いがした。どうしてだろうか。コイツは俺達を殺しに来た筈なのに・・・?
「あばよ・・・、お前・・・ら。兄貴に・・・、サミュエルの・・・兄貴に・・・よろし・・・くな。」
と言い残すなり、奴は風にのって、そして、ふわりと消え去った・・・。
「なあ、中濱。」
「何だ?」
中濱は少し驚いた様に聞き返した。
「絶対・・・たおぞうな。」
俺は泣き崩れていた。悔しさと、申し訳のなさで一杯だった。
「何言ってんだよ。当たり前だろ?」
中濱は俺の肩をポンと叩きながら言った。
俺は涙が止まらなかった。俺の頬を滝の様に伝う涙・・・。けれども、やっぱり戦いってこういうものなんだなと俺は痛感した。戦争だってそうだ。同じ生きている人達なのに傷つけ合う。そんな事が良いはずがある訳がない!
「中濱・・・俺は絶対に、バイオ・ウォーズを終結させてやる。力を貸してくれ!」
「わかったぜ!任せとけよ!」
今少年達の新たな決意の戦いが始まる・・・筈だった。
To be continued...




