プロローグ
なにもないただっぴろい白い部屋の中、僕は一つの小さな画面をみていた。
その画面の中には、明るく楽しく話す女の子たちがグループとなって話している。
僕はその中にいる一人の小柄で一番楽しそうに話している女の子が前から気になっていた。
彼女の名前は桐谷幸。
名前の通り、幸せそうな子だ。
「どうして…君はそんなに幸せそうなの?」
僕は誰にも聞こえない声の大きさで、ボソッとつぶやいた。
「君が生きている意味って…なんだろう…」
生きていた意味…そう、僕が失ってしまったもの…
そんなことをつぶやいていると、後ろから不意に呼びかけられた。
「おい、01。許可がでたぞ。まぁ、俺も同行するから安心しろ。」
「あっ、絶兄!」
つい、大きな声をだしてしまう。
「だから、絶兄はやめろ。」
後ろにいた長髪で長身の青年は照れるように言う。
声の正体は、僕にとって兄の存在の絶兄だった。
顔も整っていて、優しくて、頼りになる、僕の憧れの存在だ。
あっ、そんなことよりも…と思ったところで再び絶兄が口を開いた。
「ってか、またその子をみてたのか。まぁ、よかったな、01。明日にはあの子に会いに行けるぞ。」
ドクン、と、僕の胸が高鳴った。
「本当に?僕は…あの子のこと…幸せを知ることができるの?」
僕はいまだに信じることができなくて…恐る恐るもう一度きいた。
すると、ため息まじりで
「はぁ…だから許可がでたっていってるだろう?お前はそういうところがよくない。」
そういわれて、おでこにでこぴんされた。
いちゃい…
心の中で噛んじゃった。
「別に、何度確認してもいいでしょ!でもそっかぁ…本当に許可がでたんだね…あの子に会えるんだね…」
「ああ、それじゃあ確認しておくことがあるし、それにお前が同意しなければいけないからゆっくり確認するか。」
そういうと絶兄は目をつぶり、僕の目の前に机といす、お茶の入ったコップを出現させた。
僕にはあんなことできない。
やっぱり絶兄はすごいなぁ…僕もいつかあんなふうになれるのかな…なれたらいいな…。
僕と絶兄はいすに座り、お茶を飲みながら確認事項を確認することを始めた。
「まず、だ。お前の記憶、ここでの記憶と、過去のアノ記憶はすべて書き換えられて、もともとあっちで生活していた、という記憶がすりこまれる。大丈夫か?」
過去の記憶が消えるのは僕としてはとてもうれしい。
あんな記憶…
少しの沈黙の後、僕は口を開いた。
「もちろん大丈夫だよ。」
「そうか、じゃあ次だ。俺たちがあっちに滞在していい期間は1年だ。そのあと合言葉をいってこっちに戻ってくる。戻る1か月前になったら、夢でこっちの記憶を少しずつ思い出していくからその点は安心しろ。それにいざというときは俺もいるしな。」
1年…短いようで長い。
僕は1年の間に知ることができるかな?
あれ…そんなことよりも…
「え!?絶兄も来るの!?」
「おい、最初にいっといただろ!ちゃんときいとけよ。」
ガン、とコップを机にたたきつけて大きな声でいわれた。
こ、怖いよ、迫力ある…
少しビクビクしながら、謝った。
「ご、ごめんなさい。それで、他には?」
そう焦るな、といった感じで絶兄は再び話し始めた。
「タブーについてだ。記憶が戻りかけているときに間違ってもアノ言葉はいうなよ。お前は権限を失って追放される。あの方の許可がなければな。それにあっちにとどまりたいからといって合言葉をいわないのも、もちろん追放されるからな?それに俺たちのことについて誰かに話してしまったとき…」
タブーについてはここに来た時に教えられたから大丈夫だ。
それよりも…
暗そうにいう絶兄の言葉をさえぎって、僕は声を発した。
「タブーは大丈夫!もう…いいから…」
絶兄が暗くなるのは見たくない。
ついこの間あった事件を、絶兄は今も気にしているのだろう。
話題を変えよう。
「ぜ、絶兄、それで、話はおしまい?」
「あ、ああ、大まかに重要なことはこんな感じだろ。さあ、旅立ちは明日だ。お前は早く寝ろ。」
「うん、ありがと、おやすみ絶兄。」
「ああ、おやすみな。」
そういうと絶兄は出した物を瞬時にすべて片づけて部屋から出ていった。
明日から始まるんだ。
そう、ずっと会いたかった子に会える。
そんなことを思いながら目を閉じた僕は、思いのほか早く眠気がきてそのまま眠ってしまった。
初めまして。
閲覧いただき、ありがとうございます。
プロローグのみで、とても短くて申し訳ないです。
はじめてかいた作品なので、漢字ミスや言葉の使い方が間違ってる、などの指摘がありましたらどんどん教えてもらえるとうれしいです。
次回からはしっかり本編にはいっていきます!
投稿は不定期だとおもいます(震え声)