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朱雀や使用人を含むアリクサルト家の人々は家の門の前へと集まっていた。


「それでは、いってきます。」

「さっさようなら。」


二人は残るものたちに声をかける。


「スザク君たら、さようならってなによ、私たちは家族なのよ?いってきます、でしょ。」

「いってきます!」

「よろしい。」


朱雀の目に何か液体が見てとれる、そのことをエレーナに指摘されると、本人は雨が降ってきたなどと意味不明なことを繰り返した。快晴の空なのに。



その空は二人の門出を祝っているようだった。


「それじゃあ、二人とも気をつけてな-ー!」


アレキサンダーの声が走り出した馬車の後方から聞こえる。いつでも通信機を使えば良いだけの話だがやはり、離れるのは心苦しい。そう思った二人だった。


「えーと、エル、ここから大体馬車で六時間なんだよね?その、この間僕たちの居た街は。」


何をかくそう朱雀が倒れたあの日、あの後すぐに医者に診てもらった後、よくあるオーバーヒートだと言われ。馬車にのって港町までやってきたのだった、そのためその位置関係はよくわかっていない。


「ええ、そうよ、暇ね。」

「それならさ、トランプでもやらない?」

「良いわね!持ってきたの?」

「いや、作る。」


朱雀の口から平然とすごい言葉が飛び出す。普通に、考えればわざわざ紙を切ってその数字やなんかを書くだろうと思うがしかし。彼は想像魔法を使えるのだ。



「何する?ポーカーとか?」

「良いわね。何か賭ける?」

「お嬢様が賭けなんてしていいの?」

「あら、失礼ね、アリクサルト家っていったら豪運で有名なギャンブラーの一族なのよ?今の領地だってほとんどギャンブルで手に入れたものよ?」

「へーそうなんだ。」

「そ!れ!に!ポーカーは私の十八番よ。アリクサルト家の女は何も賭けずにカードはしないの。」

「オーケーじゃあ、一万点スタートで千点につき一時間を自由に使える権利ってのは?いわゆる荷物持ちだろうがなんだろうが。」

「良いわね。乗った。」


最もこれは朱雀がエレーナをデートに誘うための口実作りだった。そのデートと言ってもやましい理由は何もなくただ元気づけるためなのだが。


「それじゃあ、始めようか」


そういうと朱雀はカジノで使うようなチップを双方に一万点ずつ作り出す。



ーーー「そんな…嘘よ…こんなのってないわ…」


開始一時間でエレーナは手持ちのチップを失っていた。生憎にポーカーは朱雀の趣味でそれに関する確率は頭の中に入っていた。対して運にのみ任せるエレーナが勝てる見込みが無いのは明白である。


「もう一戦よ!もう一戦!それに!レートを十倍よ!千点で十時間よ!」

「まぁ良いけど。」


元々目的地であるその街、ダリエについたときの残金でと言う話だったが、今回は健闘し三日時間程度でまた飛んだ。


「嘘よ…あり得っこないわ。こんなの!ありえないわ!何でこんなにスザクは強いのよ!」

「いや、まあ、趣味?」


のちに朱雀の口癖として幾千の回数を聞くことになるそれはその時偶然に生まれた。


「もう、私は…寝るわ…」

「おっと、僕には百十時間君を自由に出来る権利があるんだが。」

「まさか…」

「そのまさかだ。今から二時間ほど起きておいてもらおうか。」

「鬼め…」


特に理由は無い、強いて言えば、何となくこの退屈な旅を一人でいるのは耐えられなかった、それだけの理由だった。


「それよりさ、お昼ご飯にしない?」

「それもそうね。今日はサンドウィッチよ。」

「それは、それは。素晴らしいね。」

「運転手さんもいかがですか?」

「良いのかい?だったら一切れ戴こうかな。」



その二時間後、彼らは無事目的地へとたどりつくことができた。。


「ありがとうごさいました。」

「私こそ、ごちそうさま。」


そう言って運転手さんと分かれると二人は寮へと歩き出す。大きい荷物はすでに運ばれており、二人は手荷物だけだ。


「それじゃあ、また後で。」

「ええ。」


朱雀たちは校門から入ってしばらくのところにある十字路を左右に曲がる、右が男子寮、左が女子寮への道だ。


朱雀は割と社交的なのですれ違う人、ひとり一人に挨拶をする。その中に見覚えのある人物がいた。氷の魔法使いだ。


「あ。キミは!あの時の!」

「え?あ!助けてくれた!」

「ええと、改めまして、初めまして僕はスザク=タカサキ」

「俺はゲイン=フリードマン、あの時はありがとな。」


ゲインと名乗るその少年は朱雀より少し背は低く頭は同じ黒髪で、何となくイケメンな感じがする。


「それで、スザクはもう寮に?」

「え、ああ悪い、まだなんだ。」

「じゃあ、一緒に行かないか?」

「是非とも。」


そうして朱雀はこの世界に来てから初めての友達ができた


エレーナはどうしたって?彼女は家族さ。


ーー「偶然ってあるんだね。」

「本当、俺初めて奇跡を見たぜ。」


偶然にも二人は同室だった。ルームメイトだ。他にも二人、同室のものが居るが


「62号室…ここだな。」


扉を開くと中には既に先客が居た。


「君ら!ルームメイト?俺は!トム=アンダーソン!よろしくな!」

「僕はスザク、スザク=タカサキ。」

「俺は、ゲイン=フリードマン」

「あと一人はまだかな?」


朱雀はそうつぶやきながら部屋を見渡す、目の前には短髪の茶色い髪でアメフトでもやってそうなゲイン、左後方にはサッカーをやってそうなゲイン、もちろん二人とも地球基準でだが。


ドアから入って左右には二つずつ、計四つの大きめのロッカー、おそらく私物入れだろう。奥には窓がありその手前には大きめの机と四脚の椅子。そしてその両隣には二段ベッドが。


狭くはないが広いとも言えない、絶妙な広さだった。


「ちーっす!おっ皆そろってるね〜俺はジェフリー=キュリー、ジェフって呼んでくれ!」


サーファーのような長い金髪をしたチャラめの少年が入ってくる。ハリウッド映画に出てきそうな彫りの深い、これまたかっこいい奴だ。


「ああ、よろしく。僕はスザク=タカサキ、スザクでいいよ。」

「俺はゲイン=フリードマン、ゲインって呼んでくれ」

「そして、俺はトム=アンダーソン、名字以外で呼んでくれ。」

「それじゃあ、自己紹介もすんだところだし。いろいろ決めるか?」

「ああ。」「そうだね」

「決めるって?」


ジェフの号令で机の周りに集まる四人、約一名ジェフは理解してないようだが。机の上には何枚かの紙が置いてあり、そのうち一枚を見ると担当を決めて書いてはっておけとのこと。


「えーと。まずは室長か。誰かやりたい奴いるか?居ないなら、一ヶ月交代でも良いって書いてあるし輪番で良いか?」

「それでいいんじゃない?」

「俺は良くわかんねーし。何でも良いぜ。」

「僕も。」

「じゃあ、輪番で。」


誰もがトムがやれば良いと思っていたが、自分から言い出さないのでどうしようもなかった。


「次に、あーチーム?を組めって、別に他の部屋のやつと組んでも良いらしいぜ、期限はこれだけ来週だ、ってもどうするよ?とりあえず俺たちで組むか?四人一組って書いてあるし。」

「それならとりあえず、それぞれの魔法を提示するべきだな!」


珍しくジェフリーが真面目なことを言う、そのせいで周りが一瞬固まったが気にしないでおくことにした。


「僕もそれが良いと思う。ちなみに僕は…」


一瞬口ごもる朱雀。もちろん本当のことを言うか悩んでいる。


「あー僕は雷だ。」

「俺は氷。」

「あーえーと。俺のはしょぼいよ?」

「良いから言ってみろって」

「気配を消す…」

「いや、強くね?女子更衣室とか入りほうだ…」


トムの拳が全力でジェフリーの体へと突き刺さる。


「冗談だって。」

「知ってる。」

「なら、やんなよ」


皆がどっと笑い出しその空間は和やかな空気に包まれる。


「で、ジェフ、キミはずいぶん強力な魔法を持っているんだろうね?」

「ああ、聞きたいか?俺の武器はこいつだ。」


そう言うとどこからが弓を取り出す。


「矢を作って撃てんだよ。あといろんな属性付加できるぞ。」

「それは普通に強いな。」

「僕が思ったより強かったわ。」

「ああ、意外だ。」


上から順にトム、スザク、ゲイン。三人にまとめて同じリアクションを取られる。それもそのはず、複数属性が限定的とは言え使えるのはかなり優秀なのだから。


「まっ!俺だし?余裕っしょ。」

「うぜぇ。」

「俺は弱いよ…弱いよ…」

「ちょっと落ち着けって?チームはこの四人で決定で良いよな?」

「俺もいいのか?」

「気配消されたら弓でも射れないだろ?」

「スザクッ!お前は天才か!」 

「かもしれない。」

「「「ハハハッ」」」


頭脳明晰なスザクに楽観的なゲイン、ネガティブだが冷静なトム、そして意外と良い奴だったりするナルシスト?のジェフリー。


この四人はのちに大勢の命を救うことになるが、それは少し先のお話…。



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