人生のお値段
人生のお値段
単行本ならたったの千円
時給と同じたったの千円
私の時給と一つの物語
明らかに釣り合わない
ひれ伏したいほど
釣り合わない
実在する
本の染みにもならない人間の
たった一時間と
誰かを救い
何かを成し遂げ
伝えるべき
テーマを持つ人間の
ドラマチックな一生なら
一体どちらに価値がある?
むしろ私に価値はある?
沢山の書籍を前にして
私の一生に
それ以上の価値はある?
いっそ図書館にでも
なりたいぐらいに
悔しくて羨ましくて
今日も映画を
本を貪るけれど
一歩も前に進めない
吐き出すように
駄文を連ねるけれど
一歩も近づけない
物語は常に紙の向こうで
私をあざ笑っている
おいでおいでしながら
私をあざ笑っている
せめて追いつけないならば
私は喜んで養分になろう
大きな木の
果てしなく分岐した
枝葉が枯れぬように
その根元で
枯れて朽ちて土に帰り
新芽を生かす養分になろう
そして素直に伝えたい
『私を生かしてくれて
ありがとう』と