096. 世界の端
第五世界というのは、セフィリアオンデスの世界が勝手に命名した呼び名だ。
もちろん、第五世界の住人は、自分たちの世界がすべてだと思っているだろうから、「第五」なんて呼ばれているとは知りもしない。
なぜ「第五」か。単純に、自分たちの世界が発見した順番だ。
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セフィリアオデスの世界は、鉱石に満ち溢れている。
素晴らしいこの世界。美しい赤茶色の空。煌めく大地。満ち溢れる大地のエネルギー。
完璧な世界。
が、そのうち、学問として、「世界は一つではないだろう」という考え方が持ち上がる。
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自分たちの世界を鉱石世界と呼ぶとして、
それらの反対の状態にある、反・鉱石世界とでも呼ぶような世界があるに違いない。
なぜなら、この世界は、完璧とは言い難く、ある世界の「片方」であると思われるからだ。
なぜ、この世界のエネルギーは全て右向きの響きを持っているのか?
なぜ、左はないのか?
鉱石は、同じものが集まり結晶となり大きく育つ。それと同じ。
右も左もあるその中で、右のものだけが集まったのが、この世界であり、
ゆえに、左だけの世界もあるはずだ。
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その考え方は、セフィリアオンデスの世界の常識となる。
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自分たちの世界、と、「対世界」。
この二つがそろって一つなのだ。
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そして時代が流れ、また新しい考え方が持ち上がる。
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自分たちの世界と、対世界。その他にも、「世界」と「対世界」のセットがあるはずだ。
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なぜなら、自分たちの世界に伝わる響きに、自分たちの世界が発信したものでない響きが確かに含まれていると分かったからだ。
自分たちの世界ではない響き。「対世界」からのものではありえない。
なぜなら、「対世界」というのは、自分たちの世界には響いてこれない性質の世界だと考えられているから。
その結果として、本当に「第三世界」が発見された。
第三世界にも、鉱石が溢れており、世界が異なっても、鉱石同士で一部の響きを共有していたのだ。
第三世界の発見により、より、意識して、それら世界との交流を楽しむことができるようになった。
明瞭に伝わってくる事柄は少ない。
けれど、別の世界でありながら、自分たちと同じような世界が他にもあるということは喜ばしく楽しいことであった。
同時に、第三世界の「対」であるはずの世界を、「第四世界」と呼ぶことにした。
そして、第三世界の発見は、セフィリアオンデスの世界にこう思わせた。
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第三世界があるのなら、世界には、もっと多く複数の世界が存在しているに違いない。
我々が知りえるのは、きっと、そのほんの一部に過ぎないのだろう。
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それに皆は納得していた。
新しい世界の発見に夢を見、それを研究するものを多く生み出した。
そうして、次に見つかったのが、「第五世界」だ。対世界の「第六世界」もあるはずだ。
鉱石世界の住人には、耳が5つある。それぞれの耳の聞こえる範囲は異なる。
第五世界は、額の耳でのみ聞きとれる音を出していた。
発見時、鉱石世界の住人は、他の全ての耳をふさいでみて、額の耳でのみ聞こえる響きに一生懸命耳を凝らしたという。
それらは本当に小さい響きで、聞こえる者も稀だった。
けれど、確かにそれは聞こえた。
ある時誰かが言いだした。
第五世界から、いつもと違う響きが聞こえる。なんだか、火花が散るような、キンキン高い音が騒がしい。
やはり皆で耳を澄ませて、その大多数がその響きを聴いた。
ところが、ある時を境に、ぱったりその響きは届かなくなる。
心配した者たちがずっと耳を傾け続けた。
傾け続け、傾け続け-・・・・
長い歳月の後、また誰かが気付いて言い出した。
第五世界から、助けを求める、響きがすると。
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セフィリアオンデスは、座り込んでいた。
ただ、眼下の景色をじっと見つめていた。
スミカからは離れ、第五世界の鉱石の王から伝えられた地図を元に、重要だと思う場所に移動していた。
トートセンク。 アンタ、取り残されちゃったんだね・・・。
眼下に、たくさんの白い塊が立ち並んでいる。
大きいのから、小さいの。
大きいのは、まるでちょっとした山のようで、小さいのは、みんな背中に羽をつけている。
全てが、見事な彫刻のようだ。
第五世界には、この場所と、あのスミカと、そして、一番初めに自分が顔を出し、第三世界の人間が姿を現したあの場所の、大きく3つの場所ぐらいしか存在していない。
異様に小さいこの世界。その世界の端っこの、この場所。
セフィリアオンデスは、腰かけて、ブラブラと足を動かした。少し高い、見晴らしの良い所から、その群れを眺めていた。
セフィリアオンデスは、小さく歌を歌った。
鉱石世界の皆はよく歌う。
第五世界では初めて歌う。
セフィリアオンデスは、歌を歌った。
他にできることが、わからなかった。




