093. 第五世界
トートセンクか・・・。トートセンクめ・・・。
残されて、セフィリアオンデスは、実はがっくりときていた。
うつむけば、自分が、『第五世界の鉱石の王』の上に居ることが分かった。
床にいると、床が抜けるので、この上に運ばれたのだろう。
自分の足元が『第五世界の鉱石の王』だと分かり、セフィリアオンデスはドカっと腰をおろしてあぐらをかいた。
それから上半身を後ろに傾けて、両手も後ろにつく。
有翼人種たちのスミカの中を見回した。
白くて淡くて。
とても静かで。
静かなはずだ。もう、有翼人種はトートセンク一人しかいないのだから。
大昔は、たくさんの有翼人種がここで暮らしていた。それは、さきほど、この自分が座り込んでいる『第五世界の鉱石の王』に伝えてもらった知識だ。
翼をもつ有翼人種たちは、上から下からこのスミカに戻ってきた。『第五世界の鉱石の王』にとって、このスミカにとって、それは美しく楽しい光景だった。
「・・・・」
自分が、もし、世界で一人になってしまったら、どういう気持ちがするかなぁ、と、ぼんやりとスミカのホールを見上げながら、セフィリアオンデスは思ってみた。
どういう気持ちがするかなぁ・・・。
寂しく、虚ろで・・・ でもきっと、もっと、そんなもの以上の感情を知ってしまうんだろうな・・・。
ゴロン、と、セフィリアオンデスは、第五世界の鉱石の王の上に寝転がる。うつ伏せになって、鉱石の王に話しかける。
「なんかさぁ、もー、なんていうんかさぁ・・・。
でもさぁ、私も一人残されたら、『昔の仲間以外はいらない』って、思うんかな。
そう思わないと、保てないんかな、自分の世界を」
タスケテクレ ミテイラレナイ
鉱石の王が、また伝えてきた。
「『マカセロー!』って、胸張って言いたいんだけどね」
セフィリアオンデスは、少し困って瞼を閉じた。
名前ってさ、相手に、自分のことを教えるために言うもんだよ。トートセンク。
アンタ、ただ、自分の世界がそのままであるって教えてもらえたから、その礼だって名前を私に伝えたね。
アンタの伝え方は、私の存在を認めたからって伝え方じゃなかった。
名前を教えてる時でさえ、アンタは、ただ、自分の世界のみに目を向けてる。
こう言ってやるのは、酷だろうか? 置かれた立場を分かっていないのだろうか?
トートセンク。
己の世界の枠を広げてごらんよ。
アンタと姿かたちが違っても、生きてるものはたくさんいるよ。
それとも、トートセンク。
今まで友人にも入らないものを 友人と認めるってことは。
今までのアンタの世界を否定しちゃうことになるのかな。
でも見てごらん・・・アンタの世界は、アンタが追い出そうとしても、私や、第三世界からも誰かが迷い込んできたりする。
アンタの世界、アンタが思ってるよりも、全体の一つでしかなかったり、するんだよ・・・。
別にさ、他の世界見なくて過ごしたって構わない。そういう生き方だってある。
でも、そこに気付いて、目を向けても、良いんじゃないかな・・・。アンタは、今、それをしても良いんじゃないかな・・・。
「どーしたモンかねぇ・・・」
セフィリアオンデスはつぶやいた。
とりあえずは、このスミカから出た方が良いだろうか?
このスミカの床は、ちょっとでも自分の調子が狂うと、自分を『浄化装置』へ落としてしまうに違いない。
第五世界に生きる者として第五世界に生み出されたこの体だが、有翼人種の体とは異なるため、床が反応してしまうのだろう。
「・・・あれ。そういや、女の子見たね・・・」
セフィリアオンデスは思い出した。
床の下、溺れているときに、少女を見た・・・あれも幻だったのだろうか?
トートセンクに聞いてみるか?
いや、鉱石の王から得た知識から考えると、床の下の世界は、この第五世界とはまた別のところに繋がっている。
第五世界ならまだしも、別の世界のことについて、トートセンクに尋ねても答えは返ってこないだろう。
とはいえ、せっかくの交流ネタだ。聞いてしまえ。
「トートセンクー!!! ちょっとさ、聞きたいことあるんだけどー!!! トートセンクー!!!!! 」
うるさすぎて無視できないほどに、セフィリアオンデスは連呼することにした。




