009. 学校
「行きたくないんなら行かなくても良いんじゃない?」
「そうかな。世界を救うんだって言うなら、旅に出てもらわないと 正直心配だな。世界が滅んじゃったら大変じゃないか。俺たちどうなると思う?」
「そう言われてみれば」
「じゃあ、行ってこいよ、アト。」
僕はため息をついた。
昼が過ぎたので、普段どおりに学校に来たのだ。
「誰も止めてくれないんだ」
僕は、正直、恨みがましい目つきをした。
「あら、止めて欲しいの? どうして?」
「私たちと離れるのが淋しいのよ」
キャー、と、女の子三人が盛り上がる。
僕は思いもかけない発言に返す言葉がない。
「でもまさか今日だったなんてね。早いよね」
「でもセレスティンは3歳だったっていうぜ、運命聞いたの」
僕もそれは聞いた事がある。「あんまり早いから、覚えてないって聞いたよ。セレスティンは。」
「良いんじゃない、だって、代わりにセレスティンのパパとママが内容を覚えてるっていうじゃない」
「三歳児が、自分の運命をちゃんと聞いて、ちゃんと親に伝えられたと思うか? しかもあのセレスティンだぞ」
「何と言われたんだろうね? 誰か知ってる?」と、僕。
「さぁ」
「忘れ物に注意、とかじゃないの?」
「あ、私、ママから聞いたことある。セレスティンは、陶芸をすると良いって言われたんですって!」
「ふーん」
「ふーん」
「どうせなら、オレは、アトみたいな運命が良いな」
僕はため息をついた。「僕はむしろ陶芸がよかったよ・・・。」
「・・・アトには陶芸は難しいわよ」
「いや、そうでもないだろ。器用だしやればできるさ」
「ぼやいてないで、受け入れなさいよ。アトが聞いたアトの運命でしょ。誰かのと取り替えたりなんてできないわよ」
それはそうなんだけど・・・。僕は、またため息だ。
「旅に出たいなんて思ったこと、ないもんな」今までただ聞いていたザティが、唯一、同情を示した。「でも、どうするの?」
そう言われてもな。
「良いんじゃないの、行きたいと思ったときでー」キャラキャラと笑う。
「困るよ」アルゲドが真面目な顔で言った。「世界が滅びたらどうするんだよ」
そんなことを言われても。
チャラン、と、鐘が鳴らされた。
授業が始まる―先生が来る合図。
「不安なら、僕もついてってあげようか?」トルカが愉快そうに言った。
「え」
「あ、じゃ俺も」
「皆で行くか?」
「石見の塔に探検に行った時思い出すよな!」
「バカね、学校があるじゃない!」
「やかましい」
「先生来たよ!」
エルテアス先生がシャランと布を押し上げて入ってきた。
まだザワザワした空気の残る教室を見回して気持ちを切り替えるよう促した後、先生は僕を見つめてにっこり笑った。
「アトロス、あなた、運命の日だったんですってね。おめでとう!」
僕は、笑顔を返した。