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086. 先代司祭の日記

  ======


  845年 9月3日 天候 晴れの曇


  ソラ様がおいでになる。

  祭壇を持ち帰られた。私が貸し出した。ソラ様が求められた。


  一昨日までハッシュラン領のジエラダ司祭が滞在されていた。

  ソラ様に祭壇の事を話したのはジエラダ司祭だと推察する。


  数日で返ってくるだろう。

  神の慈悲を願う。


  ======




アルパッサは、図書室の暗がりにてじっとその日記を見詰めた。

(これだけ?)

見開きを1日として記載される形式ようだが、左半分のページには何も書かれていない。


「・・・」


アルパッサは次の日の分も読むことにした。




  ======


  845年 9月4日 天候 曇りのち強風


  珍しい天気で今日は皆で飛んだものを回収してまわる。


  噴水前のヒムカイ草が大分倒れてしまった。

  背が高いものは強風に弱いようだ。

  数本は残ったので種は残せるであろう。

  

  キンクット領シュルト司祭に連絡する日であったが祭壇が手元に無く延期する。

  後で詫びること。



  ======


  845年 9月5日 天候 晴れ


  ミトに食事を運ばせるのを止めさせる。

  食べられないであろうから止めるように、と言った。


  ======



『ミト』とは、間違いなくミト師の事だろう。


(どういうことだ)


アルパッサは、その次の日を読む。



  ======


  845年 9月6日 天候 晴れ 昼に天気雨


  夕食後にソラ様の元へ呼ばれた。戻った直後にこれを記す。


  プラム様は生きていると、ソラ様が確認された。


  プラム様は天性の司祭の質をお持ちであったのか。

  人の世にまだいるべきだと神が判断されたか。


  神よ


  ======


筆圧が強くなっていて、ペン先が通常の日よりも紙に食い込んでいた。


(どういうこと)

湧き上がる疑問を繰り返し心でつぶやきながら、アルパッサは読み進める。

いつのまにか、本にぐっと身を乗り出すように読んでいるが、アルパッサ本人は気づいていなかった。


筆が乱れ出し、書いた文字が同じ勢いで塗りつぶされている。


  ======


  祭壇は ■■■ ■■■■■■ ■■■


  ■■■ ■■■■■■


  ■■■

 


  プラム様の元にある。

  もう数日様子を見る。<!!>


  連絡が取れない。

  パンデフラデを訪れる司祭に相談するべきか。 < × 駄目 >

  連絡方法が無く著しく不便。


  =====


どうも断片的な書き方の日記で、アルパッサはイライラしてきた。

正直、よんでも内容がよく分からない。

もしかして、あえてそんな風に書いているのだろうか、という考えが頭をよぎった。


思いついて、アルパッサは、この日記の一番最後のページを読むことにした。


  ======


  847年 2月9日


  最後の日記になるか。


  ミトに弟子を取るよう再度忠告すること。


  セトロ。真面目で優秀。出て行ったこことは今でも惜しむ。

  ハグイト領のウツパットーン司祭の元にいる。よく訪れていたウツパットーン司祭にセトロが敬服したと推察。



  司祭の日記の閲覧に制限を加えると決定。領主の許可証も必要とする。

  ミトに伝えること。



  ミトに今だ祭壇について話さず。

  今だ手元に戻らず。



  絶筆を恐れ祭壇について記す。< 明日があれば 以下 塗り消すこと >


  祭壇

   司祭の道具。

   神の世界につながっている希少な門。

   神からの賜り物。

   同じくこれを持つ司祭と連絡が取れる。

   取り扱いには厳重な注意が必要。

   司祭以外の者が使用する場合、神の世界に引き込まれ人の世に戻れない。

   ゆえに 民の好奇心からの使用を防ぐため極秘とする。

   使用者は、司祭となるよう修練を受けたもののみとする。

   稀に 修練なく 生まれついて使用できるものもいる。神の御子と呼ぶ。

  

   開門方法。

   台の部分の中央を人差し指でやや強めに弾く。


   閉門方法。

   会話の終了をもって閉じられる。自然に閉じる。


  今現在、祭壇の在りか

   一年半前にソラ様に乞われ祭壇を貸し出す。

   プラム様に渡される。

     プラム様は不治の病であり神の世に送ることを救済と考えた。

     ■■■■■■■■■

     ■■■ ■■■■■■ ■■■


  ミトに祭壇を継げないままが無念。


  神よご慈悲を。


  =====


「可愛そうなプラム様」

耳元で小さなかすれた声がした。


アルパッサは驚いて反射的に身をそらせ、右を見やった。

司書のマーゼが静かに右側背後に立っていた。


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