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075. 現実

「居ましたか!?」

一番に聞いたのは、床屋のロバートさんだった。


「○△×@**・・・!!?」

ロバートさんを一瞬見て、外の商人も大きな声を出した。


父は、かぶりを振りながら答えた。

「△%◇*・・・・#◎×○。

 アトロスが向かったところには、おられなかった」


ふわぁ、とも、ウワァ、とも。大声で泣きだしたのはクリスティンだった。


商人は一瞬あっけにとられたような呆然とした表情を見せたが、まるでどこからか力が中に入り込んだみたいに、ビクンと、跳ね上がったように身振り手振りを大きくして、叫び出した。

「!◇%・・##*▽∴、○△&・・・!!!!!」


アトたちの方に向かいかけて、また突然気がついたように、アトたちよりもまだ商人の近くにいるロバートさんに迫ろうとする。

体の大きなデルボがそれを制止にかかる。「落ち着いて! 落ち着けって!」

「◇◇▽・・・! ◎%&・・・!」

グィンが、きっと商人に分かる言葉で、きっと落ち着くようにと話している。


「イングス様・・・」

テルミさんが、クリスティンに覆いかぶさるように引き寄せていて、

すぐ傍に怒声が飛び交っているのを、

そちらなどまるで聞こえていない様子で、

じっと真っ直ぐに父を見つめていた。


「どうすれば・・・何をすれば・・・」


父はゆっくり頷いた。

「娘さんの本当の名前を聞けば、探す手がかりになるはずだ」


父は、暴れる商人に、歩み寄った。


商人は、体をデルボに抑えられながら、自由になる口で大声で叫んでいた。


何を言っているかアトには分からない。言葉が分からない。


けれど、口調、その目つき、殴りかかろうとするその手足、グィンのなだめるような様子・・・


アトには理解できなかった。


なぜ、そんなに怒る? なぜ、一人でそんなに・・・

まるで、皆が敵だと言いたげに・・・


いや、そう思っているのだ、と、アトはやっと思った。



不信感を持っている、と、先ほど、あの不思議な部屋で父が答えていた。


そうだ。こちらを信じていない―・・・


つまり?



たくさん泣いただろうに、また激しく泣いているクリスティン。


テルミさんも泣いている。



つまり・・・?





フォエルゥはどこ、と、アトは思った。


何故だか急に心細くなって、心でフォエルゥを想った。


一緒に居てくれる友達。家族。





つまり


そうだ


商人は



自分の娘を、この町の人が隠したとでも思っている。



どうして? そんな馬鹿な。



いや「信じない」とは そういう事だ。


この町の人が善良である事を、信じていないのだ。





泣いている。ワァワァと泣いている。

商人が、怒鳴っている。



なぜ?



母のような人が脳裏で繰り返す。『可愛そうなクリスティン!』




アトは ゾッとした。



自分は聞かされた。商人の娘が居なくなったと。


だから探してきてと。


自分には簡単にいける場所にいるだろうと。



受けた。



受けたけれど。




アトはゾッとした。




自分は 現実を


人が居なくなったという現実を


きちんと 理解しなかった。








アトはゾッとした。


なぜなら


自分は あの奇異な世界に行ったくせに


 何かを為した 尽くしたとは


 とても思えない状態で


こんな風に この場に戻ってきたのだから


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