072. 領主の城
確かに、それは階段で、狭く暗く、降りるものだった。
冷やりとした暗闇を進んだ。行き止まりになり立ち止り、腕で探っていると、後から降りていた父から少し待つよう指示された。
「よし、もう良い。
あぁ、少し目を細めなさい。光が差す」
何かを操作したのだろうか?
アトの目の前に、言葉通り光が差し込み
―と思うと、それは扉の形となって目の前にあった。
そして、その扉は、自分の背後から伸ばされた父の右手によって押し開かれていた。
アトは扉の外へ踏み出した。
瞬時に、様々な大きな声が耳に届いた。
騒がしい? 何? 誰?
何が、起こっている?
左側だ。
そちらは大きな石柱で、これを抜けないと向こうの様子は見れなかった。
同時に、この場所について、アトは違和感を覚えた。
恐らくここは、1F玄関ホールの奥にある、中央階段の下だ。
中央階段は、ホールから見て左側から始まり、奥へ、そして右上へとついている階段だ。
今、アトから見える景色からして、自分は「右上の階段部分の下」になる部分にいる。
今、自分の左にあるこの大きな柱は、上の階段を支えている柱のはずだ。
かくれんぼに丁度よかったこともあって、この「柱の陰」の空間は良く知っている。
陰になっている壁には扉があることも知っている。
その扉は普段使われないけれど、壁の向こうの小部屋にいける。
居城に用事があって来た町の人たちを案内する部屋で、「表」の扉のとは別に、この陰の「控え」の扉があるのだ。
――そんな扉だが、どうも、今、別の部屋から降りてその扉を開けたらしい・・?
なんだろう、この居城は。
家族であるアトにもさえ教えられていない、領主のみ知るような仕掛けがゴロゴロ・・・。
今まで自分が暮らしていた居城が、実は全くの表向きであって、本当の姿かたちを一切見せていなかった。
なんだか、自分の体の「皮膚の裏」がゾワゾワするような感覚がした。
ムズムズぞわぞわ、気持ちが悪い。
アトはそんな感覚と共に数歩歩み、大きな柱の陰から出た。
騒がしい左を 見詰め―。
アトはその場に固まった。




