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069. 帰館
帰り道に、迷うことは無かった。来た通りの道をただ進むだけだった。
進んだ時に時間がかかりすぎていたのだろうか、と思うほど、帰りはあっけないほど簡単だった。
チラチラ光る部分に、落ちないよう気をつけながら体をねじ込み・・・ゴロン、と、見えない段差を転がり落ちた。
落ちた瞬間、どちらに向かうかドキッとしたが、自分の体の左に段差を感じたので、それを背に進めば良いと判断した。
ただ、もし万が一、帰る方向を間違えたとしたら―?
ふとそんな考えが頭に浮かび、念のため、段差をもう一度のぼり、先ほどまでいた世界を再び覗き―。
間違いなくあの、赤紫の空と右から左に傾斜している坂の途中のような場所が見え―。
落ち着いて、ただそれらに背を向けて、段差を3つ降り、ただ前に進んだ。
真っ白な光の中。ただただ、前に・・・・
そうして、一瞬、青い光が自分の身をつつんだ、と思った瞬間。
アトは、母という人が居る部屋に、立っていた。
「アト!」
「アトロス!」
ドキリとした。
そこには、父までもが、自分を待ち構えた様子で立っていた。




