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066. スミカ

スミカへと向かう中、自分を追うセフィリアオンデスの悪態が耳に響く。


有翼人種のトートセンクは、大切なスミカへの案内の道を進みながら、眉を不快にしかめた。


お前がついてこれる速度で飛んでいるのだがな。




だが、そもそも異世界の住人に自分と同じ礼節を求めるのが無理というものだ。




トートセンクは、セフィリアオンデスが自分を見失わずついてきているのを響きで把握しながら、スミカへと飛び続け、スルリと辿り着いた。



幾重の光と音の層を組み合わせて造られたスミカ。

光の屈折率、音の振動の仕方が異なる層を組み合わせることで、空間を幾つもの「部屋」として独立させた場所。



自分が好んで使っている上層部の出入り口から、トートセンクは内部へ降り立つ。


セフィリアオンデスもそのうち到着する。

トートセンクは、地上部の出入り口をセフィリアオンデスが出入りができるよう、念じておく。



「茶を振舞え、だったな」



スミカへ辿り着いたトートセンクは己の右手の中、手渡されていた青い石を見つめた。


今は何も光らず、何も響いていない。


だがそれでも優しい気持ちになった。


トートセンクはその石のために少し微笑んだ。



さて・・・茶、か。



トートセンクは石を服の帯にしまいこみながら一瞬思案した。

茶を出せというのは、つまり、摂取できるエネルギーを出せということだ、と、トートセンクは思う。




トートセンクは、スルリ、と壁の層を移動させ、隣の「部屋」にふんわりと移動した。


そこは、有翼人種がエネルギー摂取の場として集う部屋だ。



その部屋の中をそっと浮かぶように移動する。


部屋の中には、大勢の仲間の「球」が浮かんだままになっている。


たくさんの「球」。


それは、仲間自らが造り出した、各々用の食器だ。


両手で球を抱くような仕草をして念じると、生み出すことができる。

自力で、薄い光と音の層を作り、固定するのだ。


簡単に生み出すことができる分、繊細なモノ。

衣服が触れるぐらいならいいが、背の羽が不用意に球に当たると、それはパリンと壊れて散ってしまう。



トートセンクは、己が仲間の「球」を壊さないよう、つとめて静かに部屋の中を進み、奥に無事に辿り着いて壁に手を伸ばした。



・・・ットン・・・ ットン・・・



壁から、光る黄色いエネルギーが、とても静かな音を響かせて、上から下へと ポツリ ポツリと 流れている。


これが 有翼人種が口にするエネルギーだった。

これが エネルギーの 全てだった。



トートセンクは、その光る黄色い小さな粒を、左手で受け止め・・・。


「・・・」


ゲストとして、と、いう言葉を思い返し、一旦手を引っ込め、自分の胸の前で「球」を持つ仕草をした。


フォン


小さな風が生まれる音とともに、トートセンクの掌の間に「球」が生み出される。



「・・・」


脳裏に、頼もしい仲間との― 先達との― 記憶が蘇った。


『どうして わざわざ そんな入れものを造るのですか?』

『ふふ トートセンク これは 大人の礼儀というものですよ』


記憶の中、皆が自分を見て微笑んでいた。

『トートセンクも 一人前になれば 自然とこういう風に エネルギーをいただくようになるのさ』



トートセンクは眉をしかめた。


一人前?







私は


まだ


半人前なのだ







パリン



己の手の中、「球」を壊してしまった微弱な振動でトートセンクは我に返った。




ヴォン・・・その直後にスミカが響いた。


地上階の入り口を セフィリアオンデスが通りぬけたのだ。


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