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063. パパとママ

母に尋ねられて、クリスティンはもうどうして良いか本当に分からなくなった。


「ぅ」

と声が出たかと思うと、クリスティンは大きく泣き出した。「ああああああああん」


母は勿論、まだ頭しか部屋に入っていない父も驚いた。


「ど、どうしたの」

母は近寄ってクリスティンを抱き寄せた。「どうしたの・・・・・・・」


父も、泣き声を聞いてハシゴを登りきって部屋に上がった。父母は顔を見合わせた。


「お客様と、ケンカでもしたのかい」と父がそっとクリスティンの背丈に身をかがめ、尋ねた。


クリスティンは首を横に振った。激しくしゃくりあげた。


母はクリスティンの髪をなでてやりながら、また尋ねた。「・・・・うん・・うん・・・・・。・・・・どうしたの・・・・。・・・・ダロンちゃんは、どこに行ったの・・・・?」


うっ、うう、と、クリスティンは泣いている。


父が部屋を見回した。「なんだ、お客様が居ないのかい・・・?」


薄ボンヤリと青い光の中、父はそう広くも無い部屋をそっと歩き、誰かが隠れていないか、物の影などを探した。


「・・・本当だ。どこかへ行っちゃったのかい。クリスティン?」


父は、またクリスティンの元に戻り、また目線をクリスティンに合わせようとした。

クリスティンは、母の寝巻きに顔をうずめて、目線を合わせようとしなかった。


両親は困惑してまた目を合わせた。

自分たちの可愛い息子が、こんな風に自分たちと目を合わそうとしないなんて。


それから、母は、父に、目で『アレを見て』と示した。

目線を追って、父も見た。

クリスティンの背後、棚の中、静かに青く光るモノがあった。


あれは?

ひょっとして。


父母は声に出さないながら、同じ思いを抱いた。


母はクリスティンの髪を撫で続けた。「・・・うん、そうね、悲しいのね・・・? そうなのね・・・?」


父は、まだ目線を合わせようとしないクリスティンと同じ目線を保ったまま、そっと尋ねた。

「クリスティン」


「これは、パパが、こうじゃないかと思って言う事だよ。きいてくれるかい」


クリスティンは、少しの角度だけ顔の向きを変えて、少しだけ父の顔を見た。目を合わせた。

コクンと頷いて、鼻をグシュッとすすりあげた。


父はクリスティンに話しかけた。

「もしかして、これは、石見の塔の老婆さまと、クリスティンが何か約束をしたのかな。

 誰にも言っちゃいけないよ、って」


クリスティンは、驚いたように、息を飲んだ。

当たりだわ、と、母は髪を撫でながら思った。

クリスティンは、母の寝巻きにしがみつきながら、ぐっと顔を横に向けきって、父の顔を見た。

父は、そうか、と、思った。


「じゃあ、クリスティン。パパの、『運命』の話を、今、クリスティンと、ママに、教えてあげるよ」


パパの運命の話?


クリスティンはまたぎゅっと母にしがみつきながら、何故父がそんな話をしようとするのかを不思議に思った。





「まぁ」

ママが、撫でる手を止め、その両手を僕の両肩に置いて言った。

「私、その話、ずーっと教えてもらってないのよ!」


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