061. 老司祭
町の司祭は60を超えた年齢だった。
どこからか まるでケモノのような けれどきっとヒトのような
叫ぶような声が聞こえる
どこか 悲しい いたたまれない そう感じるのは 歳のせいか
まだ半分夢の世界に意識がありながら、司祭は思った。
『あれは・・・誰の泣く声だろうか』
“オォオオオオオオオ”
誰の泣く声だろうか・・・・
そう思いながら、司祭はまた眠りの世界に落ちていく
オォオオオオ・・・・
司祭はそうして 夢を見た
昔 実際に体験した 若かりし頃の 夢だった
あぁ なんと華やかな パンデフラデ 豊かな土地よ
皆の笑う 愛らしい事 美しい事
誰かが 泣いている
どうした あぁ あなたは プラム様
まだ か弱き 愛らしき
パンデフラデ・トータロス・プラム様・・・
夢の中 その小さな子の周りに囲いが出来る
影が伸びる 影が立ち上る 影が落ちる
プラム様が泣いている
泣いている
夢の中 自分の体と視点が分離する
若かりし日の自分が まだ 見習いの自分が
話し相手として 神の教えを与えるものとして
プラム様に 会いに行く
扉越しに 話をしている
夢の中 老いた自分が それを見る
あぁ あれから 40年が 経ったのだ
『あなたにも神の祝福を』
立ち去る自分 若い自分
壁が 光り出した
青い光で
扉の隙間から
ヒトとは思えない影が ゆらゆら ゆれる
口が開き 赤黒い キバが 舌が よだれが
扉の隙間から 幼い手が伸びた
隙間を引き伸ばして 幼い顔のプラム様が
見えないはずだろう この「自分」に手を伸ばす
タスケテ タスケテ 食べられる!!!
慌てて 老司祭は手を伸ばす
急に 視界が遠く離れる
手を伸ばすのに 届かない
ギヤアアアアアアアアア!!!!!!
幼いプラム様が―・・・・・・・赤く―・・・・・・・・・
“オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!”
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悪夢のせいか、または、また響いた気がする声のせいか
年老いた司祭は、動悸と共に、ガッと眼を覚ました。
震える手で胸元をを掴みかけ
夢の中 幼い子に届かなかった右手を 見つめて とめた




