059. 消耗と消失
迷っていても仕方が無い、とアトは思った。
「きちんと戻れる」と分かっているとは、なんて心強いのだろうか。
とにかく、検討をつけて進むしかない。
または、・・・大声で、金茶色の瞳の主に、こっちに来てくれ、と、叫んで呼んでみるとか?
アトは、またようやく隣に追いついて、肩を上下させて呼吸をしている黒いフォエルウに声をかけ・・・ようとして、控えた。
あまりに辛そうだ。
「ちょっと、休もうか」
一言言うと、黒いフォエルゥは、どうっと地面にしりもちをつくようにへたり込んだ。
しまった、思う以上に疲れさせてしまったみたいだ。
それにしても、こんなに体力が無いなんて―・・・。
アトは不思議に思った。
「キミ・・・」
しりもちをついている黒いフォエルウと、立っている自分とは、背丈が同じぐらいだ。
アトは黒いフォエルウの横に立ち、その黒いけむくじゃらの頭に、自分の額を、ゆっくりつけた。
腕の先がないアトにとって、フォエルウとはよく顔と顔を近づけて挨拶するからだ。
黒いけむくじゃらの頭は酸っぱい匂いがした。
「キミ、大丈夫?」
触れる事で、何か分かるのではないかと思ったが、毛むくじゃらすぎて、体温も何もよく分からない。
“・・・・・・・・・・ぐぅ”
アトは額を離した。
とにかく、やはりちょっと休んだ方が良いみたいだ。
というよりも、ちょっと歩いたら、たっぷり休んだ方が良いかもしれない。
黒いフォエルウの横に自分も座り込んだ。
これから、どうしようかな。
アトは空を見上げたくて、ごろんとそのまま仰向けに寝転がった。
空は赤紫色で、けれどどこか白っぽくて、ぼんやりしていた。
「変な色の空だね」
アトは隣のフォエルウに語りかけた。そして、ふと気がついた。
「キミはどこから来たんだろう? もしかして、キミのところの空は、また違う色をしているのかな」
“・・・・・・・・・・・”
アトの隣から、フー――ッっと、深い呼吸のような、長いため息のような音が聞こえた。
アトが隣を見やると、黒いフォエルウは、また、長い息を吐いた。
フー―――――――――――――・・・・・・。
“ォオア・・・・”
「!!!」
アトは、飛び起きた。
黒いフォエルウが、青い光を放ち出したのだ。
フーーーーーーー・・・・・。
青い光は、クルクルと小さく円を描きながら、黒いフォエルウの体のあちこちを飛び交った。
「な、何それ? なに、してるの・・・・」
“・・・・ウォ ヲ・・・?”
黒いフォエルウが、不思議そうな声をだした、ような、気がした。
自分の方に首をむけ、自分を見た、ような、気がした。
「・・・えっ・・・・」
黒いフォエルウの輪郭が、二重に見えた。三重になった。
“・・・・・・・オ・・・”
一瞬の、青い影のような光を残して、
黒いフォエルウの、
姿が 消えた。




