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056. 盗み聞き

ワクワクしているセフィリアオンデスに水を差したのは、上空からの冷ややかな声だった。


「生憎と、そんな者がこの世界に紛れ込んだ形跡は無い」


セフィリアオンデスはキッと上空をにらんだ。

あの有翼人種が、いつの間にか、自分の真上に留まっていた。


「盗み聞き!? 有翼人種のマナーってあったもんじゃないね!」


いつもなら、自分から近づいたり声をかけたりしない有翼人種が、ひらりと自分の前に降り立った。


「セフィリアオンデス。確認したい。その石は何だ」


セフィリアオンデスは、耳を疑った。コイツ自ら何かに興味を持って質問してくるなんて!

意地悪してやろう。

「この石はね、私の大切な宝物さ」

ある意味、事実。我ながら正直者か。

ふふん、と、握り締める。


有翼人種は、じっと見ていた。

セフィリアオンデスは気がついた。

コイツ、この青い宝石以外、全く目にも留めていやがらない。


青い宝石は光っている。


「有翼人種が、石に興味があったとはね」

嘲笑してみる。


だが、相手は類を見ない自分主義者で、ただ自分の思いだけを口にした。

「声が、聞こえたのだ」


セフィリアオンデスは得意げに笑った。

「そうさ! 私、クリスティンと会話したんだ!」


「途中で消えてしまった。私が、ここに辿りつく前に」


ん? なんだ、今来たのか、コイツ? いや、『途中で』って、言った? アンタさっき、確実に、盗み聞きしてたよね、会話聞いて、コメントしたよね!?


「あの声の主は、誰だ」


「何いってんの、クリスティンだって言ったの、聞いてなかった?」


「その者の前に、他の者が声を出していた」


セフィリアオンディスは、チラっと考えて思いだした。

そういえばそうだっけ。

ある意味ゲンコツで黙らせたんだったけな。


「会わせてくれ」


「はあ!? 何いってんのよ、アンタ。自分が何言ってるか分かってる?」


「声が、聞こえたのだ」


何でそんなに固執しているのか、この有翼人種。

いつもこちらの言動全て無視しやがるくせに。

そんなに声が重要か―・・・。


と、ピンと、気がついた。

「あ、あの声・・・・」

第二の耳でのみ、受信可能な・・・・そう、目の前の、有翼人種と、質が、同じ声・・・。


まさか、コイツ。

セフィリアオンデスは推測した。

その推測は、多分、間違っては居ないだろう、と、思った。


「・・・・」


セフィリアオンデスは、ギラリ、と有翼人種を見た。

右手から、輝きがぼんやりと落ち出したあの青い宝石を見せてやる。


「欲しい? この青い宝石」


有翼人種は、じっとそれを見つめている。

なんだか切なそうに見えるのは気のせいか。

コイツ、本当に馬鹿だよ!


チッ、と、心でセフィリアオンデスは舌打ちした。

もー、皆、聞いてくれる? コイツ、本当に、馬鹿じゃない? どー思うよ、ホント。

もっとも、心でいくら愚痴ったところで、自分の世界の皆に届きはしないが。


「取引、してやっても良い、よ。この、大切な宝物の代わりに、アンタが持ってる、私の欲しいものを頂戴」


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