054. 会話
セフィリアオンデスは、誘惑に抗えずに声をかけた。
「クリスティン、聞こえてる?」
すぐに、喜びの一声が返ってきた。
『あっ! アト様!?』
「ごめん、私はセフィリアオンデス。初めまして、クリスティン」
『えっ・・・は、はじめまして。セフィリアオンデス・・・』
会話が出来た!
セフィリアオンデスは喜びに身をゾクゾクとさせた。
あぁ、皆に教えてあげたい。
あの、小さなクリスティンと、会話したんだよ、と!
「“アト様”に、用事? 私にできることなら、やってあげるよ、クリスティン」
むしろ、『私』という部分を、『私たちクリスタルスレイ一同』と言い換えても良い気分だ。
『えっ・・・あの・・・・』
「何かが欲しいのかい? 取ってきてあげようか」
『・・・友達のダロンが、聖域を通って、聖域の世界に行っちゃったの』
「なんだって?」
セフィリアオンデスは、本日初めて会った2人の存在を思った。
むやみやたらに吼えていた黒いのと、無鉄砲な小さいのが居たが。
どちらかに違いない。
この世界には、有翼人種と、自分と、ぐらいしか、居ない。
『お願い、ダロンを、探したいんだ!!! どうしたら良い?
僕も、聖域に入りたい!』
「クリスティン」
一方的な好意だから、きっとクリスティンは、どうして私がこう味方をするか分からないんだろうな。
などとフと思いながら、セフィリアオンデスは、小さな子どもをたしなめた。
「クリスティンはね、こっちに来なくても良いよ。良い子だからね」
『どうして?』
泣きそうだ。
「代わりに、私が、その世界に居るよ。探してあげる」
『・・・・今、聖域の中に居るの?』
「多分ね。で、探してるのはどっち? 大きいの、小さいの?」
『髪が短くて、ほっぺたにプツプツニキビがあって、首の左側にアザがあって・・・・』
妙に細かいところからの説明で、セフィリアオンデスは、キョトンとしてしまった。
クリスティンの説明は、延々と続いている。服は麻で出来ていて、袖のところが破れていて・・・人差し指にケガの痕があって・・・・
あぁ、こういう子なのだな、私たちのクリスティンは。
セフィリアオンデスは笑いそうになって、しかしクリスティンへの好意のためにそれを悟られまいと噛み殺した。
「クリスティン、あのさ、まず、背丈を教えてくれる? まぁ大きくはないよね」
『えーと、僕と同じぐらいだよ』
クツクツクツ、と、セフィリアオンデスは笑みを漏らした。
「クリスティンは、どれぐらいの背丈なのかい」
『えーと・・・80フィルト』
フィルトとは、恐らく、長さの単位だろう。
聞いてから、セフィリアオンデスも自分の馬鹿さに気がついた。
クリスティンの背丈を知る方法が無い。単位も、全く知らない。
第三世界の人間の、標準的な大きささえ知らない。
自分と同じぐらいの背丈なのか、それより、随分と大きいのか。
あの大きいのと、小さいの。
どちらか分かれば、はっきりと答えられてクリスティンを喜ばせてあげられるのだが。




