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053. アトと黒いフォエルゥ

出入り口の両端に腕をひっかけて上半身を乗り出した状態で、アトは足をじたばたした。


ばたばたしていたら、また黒いフォエルゥの頭を蹴ってしまった。


“ォオオオオオ!!!”


「ご、ごめん!!!!」

わびながら、アトは頼んだ。


「ご、ごめん、降りられないんだ。悪いけど、背中に、降りて良いかな?」


“オオオオオオオオ!!!!”


なんだか気のせいか激しく非難されている気がする―と勝手に思いつつ、

アトはそれでも、黒いフォエルゥの背中に再び立ちおり、そこからは地面に転げ落ちた。

「イタ!!!」


“ウォオオオオオオオ!!!”


「ご、ごめん。でも、ありがとう」


しりもちをついた状態で、アトは、黒いフォエルゥを見上げた。

「それにしても、キミは、大きいね」


“オォオオオオオオ・・・・ゥ”


「僕は、キミを、なんと呼べば良いかなぁ」


“ォ・・・・・・・・”


「名前― 僕が勝手に呼んでも良いのかな。うーん」


“・・・・・・・・”


「実は、フォエルゥっていう、僕の、家族であり親友の、白い大きな生き物が居るんだ。

 僕は本当に好きなんだ。

 キミは、キミがどう思うか知れないけど― キミを見ると、僕はフォエルゥみたいに思えてしまう。」


何故だか、アトは語りかけていた。


「『フォエルゥ』って、鳴き声からそういう名前にしたんだ。

 始め、『フォゥッ』って鳴いてた。その後に、『・・・・・ルゥゥ・・・』て鳴く。

 だから、僕は、それがフォエルゥの鳴き声だと思ったんだ。

 だから、『フォエルゥ』と名付けた」


まぁ、自分がどんな理由でフォエルゥと名付けたかというのは、

実はメチルの方が覚えていて(というのは、アトは当時幼く、年上のメチルの方がちゃんと覚えているからだ)、

メチルに「何言ってんですかアト様ー! 『フォエルゥって鳴くから、名前はフォエルゥだよね』って言ったの、アト様ですよー!!」と、言われた事があった。

余談だが、ちなみにメチルは『シェリーちゃん』とかつけて欲しかったらしい。あり得ないが。


「仲良くなるにつれてわかったんだ。

 フォエルゥが息を吐くように『フォッ』と鳴くのは、警戒してる時の鳴き方なんだ。

 小さく喉を鳴らすように『ゥ・・・』ていうのも、様子を伺っている時の声。両方、威嚇の時の声だった。

 甘えたら、フォエルゥは、太く『グルゥ』て言うようになった。喜ぶとたくさん『グルグル』って言うんだ。

 もし、初めから、僕が本当の鳴き声を知ってたら、きっと別の名前にしてたと思うな」


例えば、グルグルゥ、とかね。


アトは、黒いフォエルゥを見上げていた。


何か、名前で呼びたい気がするけれど― それには、まだ早い。そんな気がする。


「もしキミに名前があるのなら、分かれば良いな」

アトはそう言って、立ち上がった。


“・・・・・・・・”


黒いフォエルゥは、じっと、立ち尽くしていた。

自分の言葉が、分かっている― と 良いけれど。


さて。

「青いペンダントは、無くても大丈夫だろうし。

 僕は、人を探して欲しいって言われてここに来た。

 女の子が行方不明らしくて、ここに居るらしいんだ。

 正直、なんで僕が探すのか分からないけど、頼まれて引き受けたからには探してみないとね。」


“・・・・・・ウ・・・・”


「・・・・え・・・」

驚いた。

黒いフォエルゥが、まるで、頷くように、体をゆすったのだ。


「キミ、何か知ってるの?」


黒いフォエルゥは、今度は、Noというように、体を左右にゆすった。


アトの心がパァっと喜びに湧き上がった。

やはり、言葉が通じている!

そして、向こうも、意思が、分かる!


胸に広がる喜びを感じながら、アトは誘った。

「僕、とにかく、さっき会った人― あの、小さい方の人― あの人がそうかもしれないから、後を追うよ」


黒いフォエルゥは、ゆっくりと、頷くように体をゆすった。


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