052. 確認
アトが帰路について思ったとき、サラっという感じで何かが光った。
目をやると、長方形型が右上に浮かび上がっている。
「・・・・」
中空に浮いているが、もしやあそこが出入り口か。
じっとアトはそこを見つめた。
ここは白い世界で、分かりはするのだが、それでもイマイチ、どこが「何もないところ」で、どこが「地面」なのか分かりにくい。
「・・・・・・・・・」
ここに来た瞬間のことをアトはきちんと思い出そうとした。
踏み出した足、何も無くて転落、右からの助け、右上に・・・引き上げ、られた?
そう。
右に見ていたはずの翼の人の、背後に引き上げられていた。
それで、坂を転がって、黒いフォエルゥの居る場所に移動・・・・。
ということは、この四角い形が出入り口ならば、向かって左側からなら道が繋がっている―かも。憶測だが。
「僕、ちょっと、あそこに入れないか見てくるからね」
アトは、無言の黒いフォエルゥに、ついフォエルゥに語りかけるようにして声をかけた。
それから、自分が推察したルート―左前に向かって進み― 案の定、上り坂になっている― それから、右のあの出入り口のところに― ズルっと、すべり落ちかけた。
ゴスッ!
“オォオオオオオオオオオォオオオオ!!!”
「タっ、あっ、ご、ごめん!! ありがとう!」
アトは驚いた。
自分の後をついてきていたらしい黒いフォエルゥが、自分より歩みが遅いせいで、ある意味タイミングよく、自分が回りこんで落下した位置に立っていた。
坂の上を登り、回りこんでいたアトは、足を滑らせ、まだ坂の下にいた黒いフォエルゥの頭と背中付近に着地してしまっていた。
“オォオオオオオオオ・・・・・・ゥウウウウウウウウウウ・・・・”
「ご、ごめんごめん・・・・」
両腕で、頭を触りかけたが、両腕を下ろすとバランスを崩して倒れてしまいそうだった。
黒いフォエルゥはよろめいている。
「ごめん・・・・」
アトの真横に、あの長方形が流れ込んできた。
「・・・・・あ・・・・」
アトは、両腕をグィ、と、あの長方形の枠に押し込んだ。あまり広くないので、両枠に腕をかけることができる。
グィとそのまま体を持ち上げた。
中を覗きこんだ。
白い、白い場所。
ここの白さとはまた違う。まるで光源のような白さ。
今居る世界の白さは、反射光のような白さ。
似ているが異なる場所。
あぁ、ここが出入り口。アトは目を細めた。真っ直ぐ真っ直ぐ来たはずだ。
真っ直ぐ真っ直ぐに、あの母がいる部屋に辿りつく。
じーっと見つめた。
大丈夫。帰り道は、確かにここにある。




