048. 発(た)つ時
アトはとりあえず、歩き出した。先ほど、白い人と、金茶色の瞳の主が向かった方向に。
ズ・・・。
後ろで、巨体が歩む気配がした。
振り返ると、やはり、黒いフォエルゥが、ゆっくりと、足を踏み出しているところだった。
あぁ、一緒に来てくれるんだ。
アトは嬉しく思った。
それから、気がついた。
この黒いフォエルゥの、歩き方は、妙だ。
足を踏み出し・・・それから、グラリ、と傾きかけて、止まる。そして、片方の足を、地面にこすり付けるように、持って来る。
大分と、年寄りなのだろうか。
それとも、やはり、人間ではなくて、こんな風な歩き方をする生き物なのだろうか。
自分の言葉が伝わっているのは間違いないと思うが・・・。
そういえば、と、アトは思い出す。
ここに送り出す時、母は、クリスティンとやらと、自分の知らない言葉で会話をしていた。
言葉の通じない場所かと思ったのだが・・・先ほどの白い人たちといい、言葉の心配はここでは無用のようだ。幸いな事だ。
母を思い出して、それから、首のペンダントの事を思い出した。
「・・・・・・・・・・・。あれ?」
アトは、眉をしかめた。
どうも、首に、ペンダントのチェーンがかかっているような感じがしない。
首をグっと下に向けた。
「・・・・」
ペンダントの影も形も無くなっていた。
「・・・・・」
「・・・・・・・・・」
実は、あるけど、見えなくなっているとか?
「・・・・・・・・・」
まさか、落とすようなことは・・・・・。
「・・・・・・・・」
アトは、この世界に足を踏み入れた早々の出来事を思いだした。
自分の視界における景色の流れ方などを考えると―・・・あれは、体を前に回転するような形でどこかから落下してた―ような―・・・・・
まさか、もう、落としちゃったりなんか、してないよね、
なんか、大切にした方が良さそうな、あのペンダント。
アトは、顔をしかめながら、キョロっと、周囲を見回した。
そこらへんに落ちてたら良いんだけど。




