041. 救い手
アトが、自分の体に何かが巻きついた、と感じた瞬間、グィっと上にひっぱられるのを感じた。
「イタっ」
体がキュっと締め付けられ、思わずアトの口から言葉が零れ落ちた。
その瞬間、ドスン、と、体が地面に着地した。
まるで自分がどこかあるべき場所に戻されたような、切り離された時間が再び元に戻されたような感覚がした。
「シィッ」
目の前に、金茶色の瞳があった。大きく吊りあがった目で、アトを見つめていた。
「静かに!」
小声でアトに告げてから、その人はアトから顔を離した。
アトの体の束縛がふわっと解けた。
アトは自分の体を見た。
自分の体の回りに、長いベルトのようなものが巻きついていたらしい。
目の前の金茶色の瞳の主が、そっとそれを自分の手に巻き取った。
アトはその長いベルトの動きを辿って、その持ち主をきちんと見つめた。
白い肌。けれどたくさんそばかすがある。
短く刈り立てた、金茶色の髪。大きくとがった耳には、赤色と緑色のピアスがついている。いや、それは左耳だけのようだ。横向き顔の向こう側についている右耳からは、長く細い金色の大きな輪っかが1つ、耳辺りからぶらさがっているようだ。
アトと同じぐらいの背格好?
黄土色の服を上下ともに着ている。足首まですっぽりと袋のような布で覆っている。靴ではなく、サンダルを履いている。
「・・・・」
アトは、じっとその人を見た。
その人は、ジィッと、アトではなく、左の方を、まるで動物が獲物を狙う時のように首をすくめて、下から眺めている。とても厳しい表情。何かの機を伺っている。
けれど、アトはその人の視線の先ではなく、まじまじとその人自身を見詰めた。
とても女らしくない厳しい雰囲気を持っているが―・・・体つきから、女性だった。
行方不明の、商人の娘を探すためにここに来た。
きっと、入ったあたりでウロウロしているに違いない―とかなんとかで・・・。
あ、この人か。
と、アトは思った。




