033. ホクロ
アトの発言に、目の前の人は、ムゥと眉をしかめた。
「やっぱり・・・そんな風に思ってたのね・・・」
と、言うと?
アトは黙って続きを待った。
「見て御覧なさい、生きてるでしょ? ほら!」
目の前の人は、いきなりアトの鼻をつまんだ。
そして、残った左手で、自分の服の中に手を突っ込み、手鏡を取り出した。
その手鏡をグィ、とアトに向けて突き出す。
「御覧なさい! あなたの鼻、口回り、私にそっくり!!!
目は、イングス・・・というより、おじい様似よね」
パッと鼻から手を離され、超面食らいながら、自分の顔・・・鼻と・・・目の前の人の鼻を見比べてみたりする。
確かに、自分の鼻は、父のようなスッと通った鼻ではなく、どちらかというと低く・・・そういわれれば父よりはこの目の前の人に似ているかもしれないが・・・
アトはドキリとした。
鼻というより、口元の左上にあるホクロが・・・同じようにある。
まさか。本当に母なのか。
いやそれより、何故生きている・・・というのも変だけれど・・・一体今まで何をしていたのか。
アトは、もう一度口にした。「亡くなったと、ばかり・・・」
生きていた? 生きて、いた・・・
突然、胸の奥が、じわっと溢れるような気持ちになった。
「生きているわよ。ずっとね。」
目の前の人は、アトの変化に気付いたのか、まるで深くうなずくかのように、言葉をかみ締めるかのように、話した。
「あなたの隣の部屋に、ずっと居たのよ」
アトの、泣きそうな一歩手前の気持ちは、またにわかに固まった。
自分の、隣の部屋?
・・・よく分からない。




