029. 城中
真夜中― 気配に、アトは、そっと廊下への扉を開いた。
開いた隙間から廊下を伺う。耳を澄ます。
何かが・・・妙だ。
そっと、アトは廊下に踏み出した。
左に、何かの薄っすらとした気配を感じた。
なんだろう。「誰」という感じがしない。フォエルゥでももちろん無い。
眼を細めてみる。何か―・・・気のせいだろうか? 青くー・・・。
「!!」
するっと、何かが動いたように見えた。
「っ・・・!!」
誰だ、と叫びかけて、余計逃がしてしまいそうに思えた。
アトはパッと駆け出した。
角を曲がる。
そこは、左に鏡面続きの廊下でー・・・。青白く光っている?
スルっと、人影が、鏡面に入っていくのを、見たようなー・・・気がした。
まさか!
ウヮアアアン・・・
気のせいか、何かが響いている、わずかな音がする。
人影が消えた場所までかけつけた。気のせいか。まさか。
アトは腕と足を伸ばした。
ス、と。
鏡面に、抵抗無く、体が入った。
まさか。
そのまま、踏み込む。
ガクン、と一瞬体が落ちた。
ヒヤッとしたが、すぐ着地した。わずかな段差だったらしい。
ここは?
こんな、通路が?
暗くて、よく見えない。
ヒヤリとした空気。
よく見えないが―・・・
左側に、扉が浮かび上がっている。
中からの光で、扉の隙間から光が漏れているのだ。
アトは唾を飲み込んだ。
ここは? それとも、夢を見ているのかー・・・。
現実とは思えない。
けれど・・・間違いなく起きているような気も・・・する。
扉を凝視した。
誰かが、居るに違いない。




