024. 聖域
クリスティンは、仕事から帰ってきた父母に抱きついて帰宅を喜んだ後、
「パパ! ママ! 今日、ダロンが泊まるけど、良いよね?」と願い出た。
普段から突拍子も無い息子の言動に慣れている両親は、慌てず事情を確認した。
なんと、町で話題の外の商人の娘が、家に泊まる事になっていようとは。
「良いわよ。クリスティンのお部屋を貸してあげるのね?」
「うん、良いよ」
「じゃあ、クリスティンはどこで寝る?」父がからかって尋ねた。
「えーと、じゃあ、台所かなぁ?」
「この子ったら!」母が笑った。「パパとママと一緒に寝るのよ」
「ちょっと狭いよ? パパ、大丈夫?」
父と母が笑った。
話がまとまった。
クリスティンが喜んでハシゴを2つまた登って自分の部屋に行くと―
登りきる前に、気がついた。
クリスティンは青ざめた。
―聖域への門が、開いてる―
父母にさえ教えてはいけないと―言われた―秘密のモノ―・・・。
クリスティンの部屋が青白い光で満ちている。
ダロンの姿が・・・無い! なぜ!
クリスティンは、『聖域』へと繋がるオブジェを、壁に隠していた穴から取り出した。
それから気付いて、あわてて、ハシゴに蓋をする。
「ダロン!」
クリスティンは、小声で、女の子の名前を呼んだ。
だが、狭い部屋だ。
しかも、隠れる理由は無い。
応える声は無い。
そして、この満ちる青い光。
クリスティンは、オブジェを、窓際に置いた。
それは、祭壇とも呼ばれる。それは、暖炉のミニチュアのような形をしている。上に、十字がついていて、それより細い線が、十字の交わる部分から放射状にたくさん出ているような装飾がされている。
これは、石見の塔の老婆から―運命のあの日、渡されたものだ。
クリスティンは、窓の外、空を見つめた。窓の外の景色は、もう随分と白くて、ほぼ何も見えないに等しい。
大丈夫だろうか。
誰か―・・・繋がって!!!
クリスティンは、オブジェの、暖炉のような部分を指で弾いた。
材質に似合わず、キィン、と、高い音が響く。
クリスティンは、この町の言葉ではない言葉で呼びかけた。
『誰か! お願い! 教えて!』




