021. 濃霧
食堂で、皆が歌い出した。
もしかして、自分を元気付けるために始まったのだろうか。それとも、いつもの事なのか・・・。
どちらかは分からなかったが、皆が陽気になって、ダロンはほっとした。
自分のせいで、空気が暗くなるのは耐えられない。
目の前の恩人の男の子も、楽しそうに歌ったり、体を揺らしたりしている。
と
そのうち、椅子に立ち上がってピョンピョンはねだし、
ダロンが驚いているうちに、
あの料理人・マロンさんに怒られて大人しく椅子に座りなおし、反省したりしている。
なぜだか感心した。
羨ましく思った。
これほどに、自分の感情をストレートに表していること。
先ほど言われた、男の子のママの言葉だという言葉を思い出した。
『泣きたいときには泣くのが子どもの仕事よって、よくママが言うよ』
自分の母親を思い出した。懐かしかったが、もう涙は落とさなかった。
突然、恩人の男の子が話しかけた。
「ねぇ、ダロンの食堂も、皆、こんな風に歌ったりする?」
「え、う、ううん」
自分の町には、皆が集まって食べる場所など無い。自分の家で家族で食べる。
「そうなの?」
男の子は、不思議そうに首をかしげた。
「ダロンは、いつ笑うの?」
「え?」
「口に、留め金がついてるよ。本当の留め金じゃないけど」
話がよく分からない。
男の子は、今度は両手で頬杖をついて、真正面からダロンを見た。とはいえ、先ほどのような見透かされているような眼差しではない。
ダロンは正直どう対処して良いか困った。
唯一言葉が分かる子だが、話の内容がよく分からない。
それとも、やっぱり言葉が分かっていないのだろうか? そうか、そうかもしれない。
返答に困っていると、返事を待たずにまた質問が来た。
「ダロンって、小さい置物、好き?」
「え、ええ」
男の子はにっこり笑った。「良かった!」
本気でさっぱり分からない。
さすがに、問いかけようかと思った時―・・・。
シャララララ・・・シャララララ・・・・
歌が、パタッと止んだ。
一体、何・・・?
音の出所を見ると、扉につけられたたくさんの鈴の束が上下して、音を出している。
食堂の皆が口々に会話を始め、かと思うと、マロンさんに挨拶して、去り出した。
どうやら、帰る合図のようだ。
ふと、目の前の男の子に視線を戻すと・・・。
男の子は、難しく考えたような顔をしていた。
よく分からず見守っていると、男の子は説明くれた。
意外な内容だった。
「あのね、ダロン。
今日は、もう、外には出れないよ。
お父さんとは、明日合流しないといけなくなっちゃったよ」
一体、何を言っているのか。この町の規則?
「濃霧の合図だよ。外への扉はもう開かないよ。
ダロンのお父さんは、イングス様のお屋敷で泊めてもらってると良いけど―・・・」
不測の事態? どういう事? 急激に不安が押し寄せる。
「濃霧だもの。
ダロンは ―・・・ 僕のお家に泊まると良いよ。パパもママも分かってくれるよ。」
ダロンは思わず立ち上がった。
男の子も困った顔をしていた。




