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019. 涙

ダロンは、申し訳なささで、この町から早く立ち去りたいと思っていた。


兄を思い出して食堂で涙を落としてしまった事で、食堂にいたこの町の人の注目を集めてしまった。


色んな人が声をかけてくれた。

食事をおごってくれたこの料理人の人も、覗き込んで一体どうしたのかと言ったように思う。


けれど正直、構わないで欲しいと思った。


泣いてしまったのは事実だけれど、お願い、そっとしておいて。


私は、目立ってはいけないのー・・・。




とても心配そうに尋ねてくる、唯一言葉の分かる男の子に、

やっと「なんでもない、大丈夫」と言ったのだが、全く信じてもらえず。


男の子は「大丈夫!? お腹が痛いの!? マロンさんの料理が口に合わなかった!?」などと言い出すし、

気配を察したのか、マロンさんがオロオロしだして、もうどうして良いのか分からず、

結局正直に、「兄の、料理の味に似ていて、懐かしかったのだ」と伝えた。


涙の理由が分かってみんなほっとしてくれた様子だった。


ただ、兄の事を口に出したため、ダロンは余計に泣けてきた。


食堂の皆が、懐かしい味で泣いているのだと安心して、笑顔さえ見せた。

内心ほっとしたが、とにかくもう帰りたい。

家に帰りたい。

早く帰りたい。


そう思って今度はまた別に泣けてきた。


色んな人がダロンの頭を撫でたり背中を撫でたり肩を叩いたりしてくれた。


ようやく、落ち着いてきた時、やっとダロンは気がついた。


テーブルの前の席、あの恩人の男の子が、テーブルに身を乗り出しまくって、ただただ、ジーっと、自分の瞳を覗き込んでいた。





まるで全てを見られたような気がした。




男の子は、じっと目を見つめたまま、右目からポロリと涙を落とした。


と思うまもなく、左目からも涙を落として、すぐに両目から涙を落とした。


泣いているようには見えないけれど、両眼からポロポロと涙が落ちていた。



ダロンは驚いた。



まるで― 泣き止んだ自分の代わりに、泣いてくれているかのような錯覚を覚えた。




「大丈夫」

男の子は言った。「僕は、大丈夫だよ」


驚いて―なぜだか胸が震えて、また泣けた。



すると男の子はにっこりと笑った。


「泣きたいときには泣くのが子どもの仕事よって、よくママが言うよ」



泣きながら、ダロンはちょっと笑えた。


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