017. ダロン
「おいしい?」
問われて、男のふりをする少女―『ダロン』は返答にうっと詰まった。
初めて来た町で食べるご飯。
実は食べる前からマジマジと目の前の皿を、控えめに、けれど凝視していた。
使用されている野菜だが・・・、どう考えても、発色が悪い。
見た事もない野菜だけれど・・・生育不足に見える。日光が不足しているのではと思えた。
目の前の男の子が食べようと声をかけて食べ出して、仕方なくーというのも変だが、やはり恐る恐る、少量を口に運んだが・・・・。
素材となる野菜が・・・随分弱ったものを使っている気がする。味も薄すぎる。
ここは安さが自慢の食堂なのかもしれない。
と、感じた瞬間に、本日の恩人とも言える男の子のこの言葉・・・。
まさか試されているのだろうか? 味オンチかどうかを?
返答に詰まった瞬間、食堂で食事中のこの町の人たちが、ご飯を楽しんでいるざわめきが耳に届いた。
みんな、このご飯を喜んで食べている―・・・。
ダロンは、慌てて返事をした。「う、うん」 コクコクと頷いた。
なぜだか不意に、料理が、心底ヘタクソだった、けれどいつも笑顔だった兄が思い出された。
よく兄に「おいしい?」と聞かれて、がっかりさせたくなくて、いつも、さっきみたいに返事をした。
突然思い出されて、泣けてきた。
「ど、どうしたの!?」
慌てる目の前の恩人を前に、ダロンは一生懸命、涙を抑えようとした。




