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015. 食堂

返答に詰まった様子の女の子と思われるダロンを、少年-クリスティンはジッと見つめていたが、不意に「うん」とうなずき、ダロンを促した。

「お腹減ったよ、食堂に行こうよ」


「う、うん」

うなずいた後、ダロンはほっとした。固められた時間が、再び解かれた様だった。


クリスティンは、すぐ傍の扉を入った。ダロンも続いた。

驚いたことに、建物の中は通路になっていた。

クリスティンは、扉をくぐって左に向きなおり、そのまま真っ直ぐ歩いていく。ダロンも従う。

通路はずっと延びている。

通路の左側にも右側にも扉が並んでいる。

左側の扉はたまに半分開いたりしていて、そこからは、先ほどまでいた石畳の広場が見える。

右側の扉はだいたい閉まっている。少し開いている扉は、振り返らないと中が伺えない。振り返ろうかと思ったが気が引けた。中から光が漏れているのは分かった。人の声や音楽が聞こえる。きっと右の扉は、家につながっている。


先のほう、右側、大きく観音開きに開かれた扉があった。カチャカチャと皿と皿が触れる音がする。人のざわめき。そして匂い。湯気が見えた。


クリスティンはその扉の前で、チラッとダロンを振り返り、「食堂だよ」と声をかけてその扉の中に入っていった。

扉の前でダロンは少し気後れした。たくさんの人が中にいる。


* * *


「こんばんは、マロンさん」

「おー、クリスティン、こんばんわ」

「マロンさん、あのね、ダロンも食べるから、2人分ちょうだい」

「ダロン? 誰だって? さーてーは新しいペットかい?」

木製の大きなカウンターの奥から、大柄太目の男性がにゅっと頭をつきだした。

クリスティンが何か小動物でも抱えているのかと見ようとしたが、彼は胸を開いて左手で、扉の方を指した。「ダロンだよ」と小さな男の子を指している。

食堂チーフのマロンは意外な客に驚いた笑顔を見せた。「・・・・あぁ! さては、噂の外のコか!」

「噂なの?」首をかしげるクリスティンを置いておいて、マロンはダロンに大きく手招きした。

「こっちにおいで! ダロンっていうんだね!」


呼ばれた少年は驚いた様子だったが、おずおずと入ってきて、クリスティンの後ろにそっとついた。

マロンはにこやかに話しかけた。

「やぁ! ダロン!」

少年は不安そうな困った顔をしていた。

クリスティンが、少年に話しかけると、少年はうなずき、マロンの方を見てうなずいた。

「あー、そういえば、口が聞けないんだっけ、そのコ?」

「え? 違うよ?」とクリスティン。「話せるよ?」

「そうなのか? でも、言葉が分からないみたいじゃないか」

クリスティンは首をかしげた。「そうなの?」

「『そうなの?』・・・って・・・まぁ良いや、人間は言葉じゃない、食べ物で分かり合えば良いのさ」

マロンは、二人分の料理をコンコンっとカウンターに置いた。同時に、クリスティンがダロンに、料理代金の入口を教えているのを目の端で捕らえて、二人にウィンクしてみせた。

「クリスティン、そのお客さんの分は要らないよ。俺のオゴリだ」

「え、そうなの! ありがとう!」

クリスティンは、何やら聞きなれない言葉で少年に伝えた。ダロンという少年は驚いたようだ。信じられないという顔でマロンを見た。口を開きかけたが、言葉は聞こえなかった。

マロンは意を汲んだ。「良いってことよ。俺はマロンっていうんだ。名前も似てるし、せっかくだ、おごってやるよ」

やはりクリスティンがダロンに伝えている。

ダロンはマロンとクリスティンの顔を交互に見て、まだ信じられないような顔をしていたが、クリスティンの言葉に今度はためらいがちに頷いた。

「@+☆◇・・・」

「『ありがとう』って」


マロンは目をしばたいた。

なんだ、この子、声はでるらしい。そして、もしかして、ひょっとして、この子は女の子だろうか。


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