表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/475

001. 予言-前日

世の中の理屈は分からないが、ある時 父に「明日、石見の塔に行きなさい」と言われた。


人間には一生に一度、自分の運命を告げられる日がある。

人によって時期が異なるけれど、大概は親や保護者から告げられる。


けれど まさか こんな前触れもなく告げられるとは思わなかった。



父の敷地の 北西に 石見の鏡といわれる池がある。時々霧がかかって何も見えなくなる。結果として迷った挙句に池に落ちて命を失う…という事故も起きてしまうから、あまりその近辺には近づかないように町の皆も言われている。


けれどそこには不思議なものがたくさんあって、三つ頭の鹿や、赤い小さな実を栽培する蜂や、蛇を飲み込む花や… そして不思議の最たるものが、池からさらに北西に行ったところに建っている石見の塔だった。


運命は そこで告げられる。


人間は そこに 一生に一度 自分の運命を知るために 赴く。

一生に一度だけ そこに 入れる。


なぜだか扉はいつも閉まっていて、「その時」以外は、決して開かない。

槍で突こうが、爆薬を仕掛けようが。何をしようが。

幾世代も幾世代も それらは例えば勇敢な子どもたちによって試されたが どうあっても「その時」以外は開かないらしい。


明日か、と、僕は思った。明日、僕に、あの扉が開かれる。


誰かに告げたいと思った。

けれど、もう町で遊ぶには遅い時間で、かつ、すでに皆と別れてきた後だった。

この時間から町へと再び降りても、もう皆それぞれに戻り、眠りさえしているだろう。


そこで、身の回りの世話をしてくれているメチルが、僕の着替えを運んでいく時に、メチルに言ってみた。

「ねぇ、明日、明日、石見の塔に行けって言われたんだよ」


僕より少し年上のメチルは、目を丸くして、「まぁ」と驚き、ちょっと羨ましそうに言った。

「それはおめでとうございます。・・・私はまだなのです。私も早く行きたいです」


「うん」


「アトさま、私の祖母は、もう90になりますが、祖母は一度も石見の塔に行ったことがないのです」


それには驚いた。

メチルは続けた。


「祖母は、『もしかして、塔に一度も行くことができず、死んでしまうかもしれない』と言うのです。でも、そんなことってありえないですけれど」


「そうだね」


「とにかく、アトさまは 早くに行けて良かったですね!」


「うん。ありがとう」



メチルは部屋を出て行った。

メチルはおしゃべりをよくして行くけれど、メチルの祖母の話には正直とても驚いた。

メチルが出て行ってから、僕は気付いた。


90を超えた老婆に、誰が「塔へ行け」と告げるのだろう?

90を超えた老婆には、親か保護者など・・・もう亡くなっていていないだろうに。


明日、石見の塔に行って、メチルの祖母のことを聞いてみよう、と僕は思った。



みんな、代々聞いて知っている。

石見の塔には、不思議が詰まっている。

石見の塔には、運命を告げる老婆がいる。


僕は明日 その老婆に会いに行く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ