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殿下は無能なので、婚約破棄すらまともにできない  作者: マンムート


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5/5

5 思い出しました! わたし殿下にいやがらせされてました!

 わたしは深呼吸をしました。


 落ち着きなさいわたし、敵は罠にかかっている。


 こっちが圧倒的に有利なんです。


「……殿下。状況を整理させてください」


「うーん。オレの説明が悪いからだね。ごめん」


 いや、そうではなくて。


 落ち着きなさいマリア。こちらには証拠があるんですから。


 殿下達が、わたしに冤罪をかぶせようとした証拠が。


「殿下は、そこにいるナントカ男爵令嬢と真実の愛を成就させるために、その男爵令嬢をいじめている高慢なわたしと婚約破棄するのですよね?」


「そうよ! わかっているんじゃないの! このブス悪役令――」


 と、男爵令嬢がわめくのを遮るように、


「まさかと思うけど、してるの?」


 と殿下が言うと、側近のひとりが勢いづいて


「殿下だってご存じのはずです! ジャンヌが泣きながら話してくれたじゃないですか!」


 わたしはそれを無視して、


「心当たりはありません」


 殿下は、やっぱり、という風にうなずき、


「だよねー」


 ナントカ男爵令嬢がわめいた。


「そんなはずはないです! あの女にあたしは――」


 殿下は、首をひねって、


「うーん。それって理由としてありえないでしょ。だって……ええと誰だっけ、まぁいいやキミは男爵令嬢だったっけ? メープル侯爵令嬢は侯爵令嬢だよ?」



 侯爵令嬢は侯爵令嬢ですよね……。


 二度も繰り返すと、すごく……すごくマヌケです殿下。



「男爵令嬢にいやがらせなんてしないよ。常識的に考えて」


 あっさりと言われて、ナントカ男爵令嬢はヒス気味に、


「殿下! わたしは本当にその女にイジメられて――」


「だって、キミ、()()男爵令嬢でしょ」


 またも、わたしとナントカ男爵令嬢は同時に


「「へ?」」



 彼女は多分、殿下が何を言っているかすら理解していないからでしょう。


 わたしは、『まだ』と言ったことに対してでした。


 殿下はわかっていらっしゃるのです。


 この場に出て来てしまったことで、そう遠くない未来、彼女が男爵令嬢の立場を喪うことを。



「キミが目障りなら、家ごと潰すだけだよ。彼女がひとこと『あの男爵令嬢はめざわりですね』と呟けば、周りが勝手にキミを潰すよ。いやがらせとか、なんでそんな面倒なことを、キミ程度のとるにたらない小物にしなくちゃいけないんだい?」


「と、とるにたらない小物……」


「そもそもだよ。メープル侯爵令嬢は、学園では授業と生徒会で忙しいし、放課後から夜遅くまで書類仕事させられているんだから、いつイジメなんかするのさ」


「え」


 殿下! なにをまともなことを!




 って、思い出しました!


 殿下は知っていて当然です。


 その時間帯。


 わたしが一番疲れてる時間帯を狙いすまして、わたしに嫌がらせをしかけてきているのですから!



 王妃教育と称して、こき使われているわたしのところへ、小さな手編みのカゴに入ったハーブを


『疲れている時に効くんで飲んでみて! カゴは返さなくていいよ!』


 という頭の悪い手紙と一緒に送りつけて来て。


 わたしの侍女が確かめたら、腐ってました。


 飲んだらお腹を壊すところでした。


 それ以降、送りつけられて来たハーブは、カゴごと燃やして処分しているので何事もありませんが……。



 一度も実害がなかったので忘れてました!


 わたしとしたことが不覚!


 もう惑わされません!




「な、なら、そのブス女の周りの取り巻きが!」


「そうです! 我々が報告書にまとめたものを殿下はお読みに!」


 殿下の質の悪い側近とナントカ男爵令嬢がわめいています。


 側近のひとりは、その報告書とやらをとりだしてふりまわしています。


「いや、だからさ、その報告書に、メープル侯爵令嬢自身が手を下してるって書いてあったよね?」


 側近のひとりが思わず、という口調で、


「よ、読んでいたのですか……」


 ですよね。


 気持ちはわかります。


「それにさー。彼女の友人達って侯爵令嬢や伯爵令嬢だよ? なんで男爵令嬢、しかも庶子で引き取られたどうでもいい存在にイジメするとかありえないでしょ」


「殿下まであたしを男爵令嬢の庶子だとバカにするんですか! ひどいです!」


「それに実際! 彼女はイジメられているんです!」


 なおも女と側近達がわめくと、


 殿下は『あ、なるほど』というように、ポンと手を叩き。


「あ、そうだそうだありえるね!」


 ああ、やはり殿下は愚かです。


 せっかく正しい認識に達していたのに、愚かな側近達にひきずられて、わたしがイジメを背後で命じていた説に賛同してしまうとは……。


「礼儀知らずの男爵令嬢が目障りだしうるさいし、男爵なら爵位の差でどうとでもなるから、いたぶってうさをはらしてるけど、いざ「お前が犯人だな」と問い詰められると『これはまずい、両親にばれたら体面が潰れる怒られる』と思って、自分より上の爵位の令嬢に罪をなすりつける、とかだね! あるある! それかー!」



 あれ?


 そっちなんですか!? どうしてまともなんですか!?


 わたしに嫌がらせをしていたくせに。


 でも、まともでも外れですね。


 だって、我が侯爵家の親族や寄子に、そんな方がいるはずありませんから。



「まぁ貴族とかいっても人間だからねー、中身は毛のないサルだから、そういうどうしようもなさがあるのは仕方ないけどね。あはは」


 え?


 会場のあちこちの御令嬢が、真っ赤になったり、青ざめたり、わなわな震えたりしてるんですが……。


 わたしの寄子や一族の中に、ナントカ男爵令嬢に、いやがらせをしていた人がいたなんて……。


 しかも、わたしに言われてやったなどというウソを……ショックです。



 殿下は、男爵令嬢を憐れむような目で見ると、


「だけどそれ以前に、キミって全然まともに相手にされてないじゃん、誰にも。キミを相手してるのは、今となっては、そいつらだけだよ」


「な、なにを」


「評判悪いよキミ。あちこちの婚約を破壊したって。礼儀作法も知らないって。前に熱をあげてた奴らも、今では遠ざかってるか、学園を退学させられてるからいないでしょ」


「そ、そんなことっ」


 あらあら、男爵令嬢は泣きそうな顔になっています。


 もはや、男を騙す演技とは思えないです。


「成績も悪いし、下から数えて一桁だし。キミより下の人は、病気療養中とか、家の都合とかだもの。実質的に最下位だよ」


「に、人間の価値は成績じゃありません!」


 余りの容赦なさに、ナントカ男爵令嬢が逆ギレ気味に叫ぶと、


「うん、そうだね。成績がよくても、どうしようもない人間なんていくらでもいるからねー。血筋がよくてもオレみたいに、どうしようもないダメ人間もいるし。キミが虐められたというのが本当なら、それを実行した奴らもどうしようもないね」


 殿下はとどめをさすように。


「でもキミが最下位なことにはかわらないでしょ」


 うちのめされた男爵令嬢が床にへたりこむと、側近達が駆け寄って


「で、殿下ひどすぎです! 言っていいことと悪いことが!」


「女の子を泣かせるなんて!」


 殿下は頭をかくと、


「だから、オレだけで済ませようとしたんだけどね……キミら来ちゃうから。はぁぁ……キミらだって、これから大変だよ」


「「「?」」」


 理解していない側近達に向かって殿下は、


「こんな礼儀作法もなければ常識もない男爵令嬢を、たしなめるどころかチヤホヤして、鼻の下のばしてるとか、まずいよ。しかもさ、オレってこうみえても王族なんだよね。王族にこんなのをホイホイ近づけるとか、しかも、彼女がもってきたクッキーを毒見もしないとか、だめでしょう」



 側近のかたがたが顔を青くしていらっしゃいます……。


 殿下のおっしゃってることが正論なので、同情はできませんが。


 ひとりが辛うじて口を開き、


「で、殿下はそんなことひとことも……」


「一度か二度は言ったよ-。そうしたらさ、その女が目をウルウルさせて『殿下ぁひどいですぅ』って言うと、キミらは『殿下! 彼女は頑張っているんです! やさしく見守っていてください!』って言ったじゃないか。だから見守っていたんだよ」


「そ、そんなことはありましたが……で、でも」


 あったんですね……。


 というか、こんな殿下が、どうしてわたしに嫌がらせをしていたのか、わかりません!


 やっぱり殿下はわけがわかりません!



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