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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
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第8話-4/10

自身と同様に反応を示す蒼太の乳首に彼女お得意な絶妙な感覚の刺激を与え続けていく。


ボルテージが上がり、互いに更なる欲望を求めそうになったところで…


ピピピピピ…


無情にも壱瑚のブッチからホールでよく耳にする電子音が流れ出した。


タイムリミットを告げるそれに二人は同時にISK内に居ることを認識し、思考が正常に戻っていくのを感じ取るのだった。



「はふ…タイマー…いいとこだったのに…わふ」



残念とばかりに全身の力が抜け、うな垂れるイチコ。


顔は火照ったままだが、ペロンと長い舌で自身の鼻を濡らした。



「イチコは発情期?」



エルナの時もそうだったがついつい確認してしまう蒼太。



「違うわん!…っかしいわん、いつもこんなことないのに…なにかしたわん?」



慌ててイチコはそれを否定するが、彼女自身腑に落ちない様子で頭を掻きながら首を傾げていた。



「なにもしてないワン、変な気分になったのは俺の方ワン」



「あれ?言葉うつったわん?」



彼女の言葉に彼女の口癖をまねて蒼太も応えて見せる。


その冗談を真に受けてイチコは心配そうに蒼太の顔を見つめた。


蒼太は彼女の反応ににたにたしながら意地悪そうに呟いた。



「冗談だよ、真似してみただけだから。5分ってあっという間だね」



制限時間は過ぎてしまったが、イチコは未だ蒼太の太ももの上に乗ったまま話を続けた。



「個室解禁されたら一緒に楽しみたいわん」



よしよしと頭をなでると嬉しそうに彼女は目を細めて蒼太の胸元に顔を寄せる。


このような事後の戯れは許容されており、時間が終わったから「はい、さよなら」とそっけない態度をとるキャストは少なかった。


と言っても何事も限度をわきまえないと注意されることは暗黙のルールとしてキャスト達も分かっていた。



「みんなでかぐに嘆願書書いてくれないかな、俺も爆発寸前だよ」



色んな意味で自己主張をしている股間のおさまりが悪く感じ、蒼太は彼女を自身の上から降ろすことにした。


そうしなければ再び理性が欲望に負けてしまうのも時間の問題だったからだ。



「そうなると同士を集めなきゃだわん、これプレート渡しておくわん」



しぶしぶ蒼太に従うイチコは自身のマークが入ったハートプレートを蒼太に2枚手渡した。


チケットの使用枚数と同じ枚数のプレートを渡すのがこのお店のルールで、それを使うことで特別なサービスを受けることが出来る。



「おっ、ありがと!って個室にはこれを集めとかないと行けなかったね」



「わん、プレートとチケットが3枚ずつ必要になるから貯めておいてわん」



今貰った2枚のプレートを財布に仕舞いながら蒼太は以前にももらったプレートと合わせてその数を数えてみた。



「なんだかんだで俺は今プレート6枚あるから、2回行けるかな」



初めてこのお店に来た時にプレートを4枚もらっており、未使用のチケットもその中から1枚探し当てることが出来た。


チケットに1年と使用期限は設けられているが、常連になればそれも気にすることなく使用するため問題はないと思えた。



「アフターも行けるわん、そうさんとならぼくいつでも良いわん」



彼女が言ったアフターとはアフターリザーブのことでこちらもプレートが必要となりその数は5枚となっていた。


アフターを獲得するには簡単ではなく、例外を除いて営業の最後に行われるイベントアフターリザーブ争奪戦に勝たなければならない。


参加者も少なくはなく確率的には20%程度と言われている。


だが、今の蒼太にとって個室以上にアフターはハードルが高いと言えた。


女性と一晩お泊り、しかも密室で密接な関係を築く目的がはっきりとしているため月姫が容易に許すはずがないだろう。



「しばらくはかぐの監視もあるからアフターも個室も難しいかな」



とはいえ、蒼太も月姫の恋人でもなければ束縛される理由はないはずだが、彼女の独占欲+嫉妬心に今は油を注がない方が得策と分かっていた。



「またそのうちってことだわん?」



少しの期待を胸にイチコは蒼太に問いかけた。


ここで無下に断れないのが蒼太の良いところであり悪いところだろう。



「そうなるね、またファナーでも来るし、楽しませてよ」



口約束でも了承してしまうと相手は期待してしまう。


特に素直が売りのイチコは真に受けてしまう事だろう。



「合点承知だわん!今日はもう帰っちゃうわん?」



イチコは自身の胸をドンと力強くたたくと、ふんっと鼻息を荒くして息まいた。


時間もすでに22時を回っており、アフターを予定していなければ、そろそろ岐路につくファナーが増える時間帯だ。


残ったファナーも基本的にはアフター待ちが多くなり、キャストとしてもお楽しみの時間は減ってしまう頃合い。



「もう少し居てるよ、次は誰を指名しようかなって…」



まだまだ楽しみたいと思っていた蒼太はスマホをテーブルに置き、ISKのアプリを開いてみた。


今日出勤のキャストを確認し、好みのタイプを探そうとする。



「ここの数字が予約人数になってるわん」



イチコは蒼太の隣に立ち、アプリを一緒に観ながら助言をしていた。


見知った面々から、まだ話もした事が無いキャストが数人。


その中で最も親しいと思うキャスト、サキの所に目が留まる。


彼女のカードの右下に数字は5と表示されていた。



「サキさんってすごい人気なんだね」



日常的に彼女にはよく世話になっているから少しは貢献しようと思ったが、この人気ぶりではそれは必要ないと判断する。


さらに画面をスライドさせながら、見知ったキャストのところで手が止まる。



「そういえばこの前のこともあるし…シノさんにお願いしようかな」



シノのプロフィールカードは、この前会った時と同じように左目は前髪で隠れており、にこやかな笑顔がどこか癒しを感じられる雰囲気を醸し出していた。



「しのさんも人気あるけど…今は丁度空いてるわん!」



イチコの言う通りカードの右下に数字は表示されていない。


それは今の段階で彼女への指名が入っていないことを表していた。


シノのカードをタップし、テーブルに呼ぶと表示された部分をタップする。


他にもメッセージを送る、個室へ誘う、アフターリザーブの項目があったがどちらも今の蒼太には許されていない項目だった。


しばらくお待ちくださいと画面がシノに連絡を入れたことを表示していた。


それをみたイチコは自分のお役目ごめんとばかりに、蒼太ともう一度握手をして軽く頭を下げた。



「もっと一緒に居たかったけど、また声かけてわん♪」



笑うと目が細くなる彼女。



「おう、イチコ。またね」



彼女は手を振り別れの挨拶をしてテーブルを離れていった。


その後ろ姿に先ほどまで元気よくフリフリしていた尻尾が動きを止めているのを見て少し侘しさを感じた蒼太だった。


しかし感傷に浸る暇もなく彼の元に営業時間では初対面となるシノが訪れた。


ファナーで訪れた初日に挨拶は交わしていたが、わずか数秒だけで蒼太の記憶にすら残っていない。



「ばんちー、そーくん、あたしを呼んだー?」



コンセプトデーではないため、今日はほとんどのキャストは私服・普段着でホールを闊歩していた。


もちろんシノもそうだが、彼女は白いワンピースで大きく胸元が開き、そこにフリルがついているふわふわな感じの服を着ていた。


意識しなくても彼女の豊満な胸の谷間に視線が行ってしまう。


シノは彼の視線を知ってか、いつもそうしているのかわざと椅子に座った状態でも胸元が見えるように低い位置で彼に話しかけて来る。


ふんわりとした雰囲気に合う甘い香りが蒼太の鼻腔をくすぐった。



「えっと…しのさんでいいのかな?」



目のやり場に困ってしまうが、困るぐらいならと胸元を直視しながら蒼太は彼女の名前を確認する。



「しーちゃんでどうぞー」



真ん丸な瞳をしてシノは蒼太を見つめた。


大きな瞳に爛々と輝く虹彩に思わず見とれてしまいそうになる。



「でもーどーして、あたししめいー?あー、この前のくちどめー?」



匂い同様鼻にかかる甘ったるい話し方をするシノ。


先日話の主導権はリチと呼ばれていた女性が握っていた為シノの印象は薄かったが対面してみると引き込まれそうな魅力を彼女から感じてしまう。


シノの人差し指が蒼太の口元にあてがわれる。


その後彼女はその指で自分の口を真一文字に描いた。


ジェスチャーでいうところの口にチャックを意味しているようだ。



「ち、違くて…]



慌てて言い訳気味に否定する蒼太にシノは口を大きく歪めて笑みを浮かべた。



「あー、そーくんきょにゅー好きだもんねー、エロエロだもんねー」



言いながら不意にシノは蒼太に抱き着いてくる。


このお店でいう挨拶だが、前触れなしの抱擁に泡を喰ってしまう蒼太。


終始彼女のペースに呑まれてしまっていた。



「なんならグミちゃんも呼んであげよっかー?」



抱き付いたまま耳元で囁くシノ。



「えっと…」



展開の速さについていけない蒼太は口ごもってしまう。


それでも決定権は彼に持たせたまま、シノはハグを辞め、蒼太に答えを求めた。



「ちっぱいは嫌いー?」



首を少し傾け、自身の胸を両手で持ち上げ揺らして見せる。


ゆさゆさと音を立てそうなほど彼女はわざと自身の胸を揺すった。



「そ、そんなわけじゃ…」



目のやり場に困るどころか、あわや服からあふれ出そうな胸の膨らみに釘付けになる蒼太の視線。



「あたしたち一心同体だからー、呼ぶねー」



そう言いながらシノは自身のスマホを操作しながら蒼太の回答を待っているようだった。


蒼太も仕方なしとコクリと頷いて見せる。


その返事を待ってましたとシノはグミにコールを送るとスマホを服の中に仕舞った。



「そーくんは誰推し?」



再びシノが体を絡めて来る。


その動きはまるでサキと同じように、とても自然に蒼太の隙をついて密着してくるのだった。


今度はハグではなく彼の首に手を絡め、あたかも見知った恋人のようにゼロ距離で、いやそれ以上のマイナスの距離で胸を押しあてて来る。



「マイファナーとかは登録してなくて、ってしないようにしてて」



練の受け売りで蒼太は自分にマイファナーが居ないことを公言する。



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