第6話-7/14
初めまして、【れいと】と申します。
初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。
アレテイアでのいざこざが終わり、蒼太は通常業務をこなすためにISKに
戻ってきていた。
アフタールームの備品チェック、これも欠かせない業務の一つだ。
それほど量は消費していないがドリンクやその他のアメニティーグッズ等は
日々購入され、補充の連絡を入れなければならない。
男女の関係で使用されるそれらは蒼太にとっては少し刺激の強いものだった。
大人の玩具と言えば軟らかく聞こえるが使用方法を考えてみれば玩具と
言うには失礼なのかもしれない。
「っと、後1部屋でARの在庫チェックも完了か…」
すでに3部屋の見回りを終えた蒼太が誰に言うでもなく独り言をつぶやく。
残り一部屋と言ってもその部屋が使われない可能性が高く、ただ見回りで
終わる日もある。
通常毎日の最終イベントでアフターのチャンスがあるのは3組で、4組目は
予約か非常事態に備えて空室にしてあることが多い。
4階にも同様に4部屋用意はされているが蒼太がここで働いてからは一度も
使われていないし、足を運んだこともなかった。
この部屋を後にしようと扉に手を掛けようとした瞬間、扉の方が勢いよく
開いてしまった。
「そ、そうちゃん!」
血相を変えて飛び込んできたのは月姫だった。
メイドの衣装にはまだ着替えておらず昼に別れた格好のままの彼女が目の前に
現れた。
「どうした?息を切らせて」
「急いで、来た、から…」
走ってきたのだろう、荒い息をしながら彼女はその場に座り込んでしまった。
時間にして数秒、彼女は息が整うのを見計らって、蒼太に手を差し出し言葉を
かける。
「早速だけど…スマホ貸してもらえる?」
「ん?あぁ…」
言われたように蒼太はポケットにしまっていた仕事用のスマホを彼女に渡す。
パスコードはかかっているものの、もらった時のまま変更していないので
解除コードは月姫も知っているのだった。
手慣れた手つきで月姫はスマホを操作し、新しいアプリケーションを。
インストールし終えていた
もう片方の手で自分のスマホも取り出し、同時に操作を進めていく。
「これで、よしっ!っと…後は設定で、期間は…最長7日間、とりあえずは
1日で様子を見て…距離?0~10m、なら0で、OKっと…」
スマホを見ながらつぶやきつつ彼女は画面をタップしていく。
何をしているか分からない蒼太だったが、おそらく…いや間違いなく彼女が
よからぬ何かを企んでいることは予想がついた。
2人のスマホが同時にメロディ音を奏で、互いの手にはめているブッチがそれに
合わせて電子音を鳴らした。
次の瞬間、蒼太は左手が引っ張られ、月姫の左手と引っ付いてしまう。
「んなっ!」「えっ!」
突然のことに感嘆の声を上げた2人だが、月姫には予備知識があったようで
それほど驚いている様子はなかった。
すぐさま蒼太はそれが何なのかを察知する。
「もしかしてこれがさっき言ってたやつ?」
サキが提案した離れられないようにするギミック。
「うん♡」
色よい声色で返事をする月姫。
言うまでもなく彼女の願いを具現化したようなアプリがこれなのだろう。
くっついてしまったブッチを蒼太は力づくで外そうと、右手に力を込め一気に
引っ張ってみる。
しかし先ほど引っ張られた異常な力と違い、何一つ抵抗を感じることなく
それを離すことに成功する。
「あれ?でも簡単に離れれるみたいだけど?」
拍子抜けとばかりに蒼太が言うと
「あれ?そうなの?」
月姫も期待外れと失望の色を帯びた返事を返した。
やはりアプリ程度では肉体的に何かを強いるのは難しいのかと月姫は首を
ひねった矢先、2人のブッチから同時に電子的な警告音が流れる。
月姫と蒼太は自身のブッチの画面を見てみると、そこには大きな数字で3と
表示されており、目の前でそれが2に代わり、秒を刻むように1と減り、
0へと変化した。
刹那、2人のブッチから強烈な電気が流れ、全身を貫いていく。
電流が流れたのはわずか1秒程度だったが、思わず2人は悲鳴を上げ、
その場に崩れ落ちてしまった。
今まで味わったことのない強烈な刺激に、蒼太は思わず月姫に悲鳴のような
質問を投げた。
「な、なんなんだよ!これ?」
「せ、星詩瑠さんが作ったアプリ…」
「どんなアプリ?」
あらかたの予想はついているものの、確認の意味を込めて蒼太は尋ねた。
「二つのブッチを登録して、それがある程度の距離離れたら罰が下る
って感じでお願いしたらこうなったみたい」
痛みが引き、電撃の発信源であるブッチを見ながら蒼太はため息を吐く。
多少のわがままなら受け入れるつもりでいたが、彼の許容を超える威力の
電気ショックに容認することは出来なかった。
「こうなったみたいじゃなくて…」
恨み節を零しつつ立ち上がろうとした蒼太の左手から再び警告音が鳴り始めた。
すぐにブッチのディスプレイを見やると数字は10を表示している。
「ど、どうするの!?」
「多分、距離…0mで設定したからお互いのブッチの距離をそれ以下にしないと」
慌てる蒼太に早口に月姫は応え、どちらともなく互いのブッチを合わせるように
手を差し出した。
すると表示されていた数字が消え、代わりにディスプレイの色が青に変わった。
同時に発せられていた電子警告音がぴたりと止まったことで安全を意味するのは
説明が無くても検討がつく。
「良かった…」
ほっと安堵のため息を吐く月姫。
「良かったじゃなくてさ、これはいつまで?」
軽蔑の眼差しを浮かべながら蒼太が彼女に尋ねる。
「一応1日の設定だから明日の今の時間までかも…」
先ほどの細かな設定が元凶のアプリの仕様なのだろう。
すなわち彼女が日付以外に設定していた項目が当てはまるとしたら、距離の
設定が0mということになる。
仕方なしに蒼太は自身の手首のブッチをタップし、このアプリに関して調べて
いくが、設定には0m、残り23時間58分と表記されそれの変更が出来ないか
どうかとあれこれ操作を試みる。
がまるでロック画面のようにこのアプリに関して操作が全く聞かないことを
思い知り、月姫に尋ねかける。
「解除できないの?」
「星詩瑠さんにお願いしないと」
元々この手の機械にはひどく疎い彼女は軽く弄ってみるもすぐに降参の白旗を
振った。
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