第6話-4/14
初めまして、【れいと】と申します。
初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。
恋敗れた蒼太にとってこの集会は無意味どころかマイナスでしかなかった。
「でもお仕事は続けられるようですよ?ご安心ください」
ユカはいつものように言葉を返した。
「ご、ごめんなさい、あたしのせいで…」
「ツバちゃんはな~にもワルいコトしてないよ~。
アワれなDTがヒトリまたコイにヤブれただけだから~」
謝罪の言葉を告げるツバキに近寄り、サキは横目で蒼太を見ながら彼女を慰めた。
元はと言えば今回の元凶は蒼太の独りよがりな告白から始まった惨事だからだ。
「でも、ひとつ…ムーンさん伺っても良いですか?」
ユカは赤面している月姫に首をかしげ問いかける。
「なんでしょう?」
顔が火照り熱いのか、月姫は自身の手で扇ぎながら答えた。
「わたくしだけではないと思うのですが、
初めて会った時から蒼太さんには…その…あの…」
途中まで言いかけて最後は言い淀んでしまうユカ。
はっきりと意見を述べる彼女にしては珍しいことだ。
「何か問題点がありましたか?」
当人が眼前に居るためよっぽど言い難いことなのかと思い、
月姫は背中を押すように続きを求めた。
「いえ…こほん。性的な魅力を感じてしまうというか、蒼太さんを見ると
身体の奥底が疼いてしまうのですが…」
「それね~アタシも~」
すぐさまサキもユカの言葉に続いた。
「…わ、私もです…」
ちょこんと翼を少し上に上げながらツバキもそれに続く。
「多分、ここにいるわたくしたちだけでなく、
キャストみなさん共通して言えることだと思います」
珍しくユカの白く透き通る肌がほのかにピンク色に頬を染めていた。
この手の類の話題が苦手な彼女らしいだろう。
「え?そうちゃんに?」
月姫は隣に居る蒼太に視線を向けたが、すぐさまユカに向き直り、
視線をテーブルに落としながら彼女の答えを待った。
「はい、他のファナーさんでは一度も感じたことはないのですが…」
「あれあれ~こーちゃんにも?」
ニタニタした狡猾な笑みを浮かべながらサキがユカの言葉に疑問符を打った。
「は、畑さんは別格です。幸一さんには身も心も捧げていますから…」
そう言ってユカは胸の前で祈るように両手を組み、空を仰いで見せた。
たちまち先ほどまでほのかなピンク色だった頬が赤く染まっていく。
「あついわ~、ユカったらハクチュウドードー。おサカんなことで~」
「紗希さんが変な言い方するからです。
…こほん、で本当のところどうなんでしょうか?ムーンさん」
煽るサキにユカは咳ばらいを一つして、祈りのポーズをやめ真顔に戻しつつ
月姫に追及する。
「そういえば昨日エルナもそんなこと言ってた気がする…どうなの?かぐ?」
ユカの追及に蒼太も昨日問われたことを重ねて月姫に詰め寄る。
一歩後退りながら月姫は未だ紅潮した顔で蒼太に向かって答えた。
「わ、私もわかりませんよ!それより私との約束はどうなるんですか!」
むしろ正解が分からず、頓挫してしまった前の話題を持ち直してくる。
「約束?」
瞬間的に思い出せず、眉間にしわを寄せながら蒼太は彼女の言葉を反芻する。
「さっき言ったばかりじゃないですか!け、けけけ、結婚の約束って!」
いよいよ手を上げそうな勢いで月姫は蒼太に詰め寄った。
彼女にとっては今日のどんな問題点より大事なことだった。
サキのスキルのチャームはすでに解除されてしまっているが、
それをはっきりとさせておきたいとすごむ月姫。
しかし当事者たる2人の感情の温度差は歴然としていた。
距離を詰めた月姫の肩を持ち、両手で押しのけてまあまあと言いながら彼女の
約束に対して答えを出した。
「4歳ぐらいの頃って幼稚園だよね?よくあることじゃないその時にお婿さんに
するとか、お嫁さんにするとか…さすがにそんなのは約束とは言わないよ」
刹那、乾いた音があたりにこだまする。
月姫の平手が見事に蒼太の左頬を叩いた音だ。
「帰る!」
強烈な平手打ちをお見舞いした月姫の目じりには彼女が滅多と見せることの
ない水球が今にも零れ落ちそうになっていた。
そのまま踵を返すと足早にこの場から去ってしまう。
一瞬の出来事にみんなあっけにとられその背中を見送ることになった。
早足で進む彼女の背中は瞬く間に小さくなり、残された四人のうち最初に口を
開いたのはサキだった。
「あ~あれはホンキだったみたいね~」
「…や、約束破るの…良くないと思います…」
「そうですね、今みたいな言い方しなくてもやんわりと
お断りすればよかったでしょうに…」
「お、俺の味方は居ないの?」
好き勝手を言う3人に蒼太は恨み節とばかりに助っ人を求めた。
すでに月姫の姿は見えなくなり、蒼太は近くの椅子に腰を下ろすことにした。
「アタシはそうちゃんのカラダのミカタよ~♡」
座った蒼太の背中にもたれかかりながらサキはいつものように彼に絡み
つき始めた。
それを阻止する役は誰も居ない。
「蒼太さんの身体の秘密は結局分かりませんでしたね」
ユカも先ほどまで月姫が座っていた席へ腰を下ろすことにした。
まじまじと彼女は蒼太の身体を眺めるが逸脱して何かを感じる部位は無いよう
に思われる。
彼女は相手を見るだけである程度病気や怪我の度合いを診ることができ、
触れることで正確にどの部分がどのような症状かを判断することもできた。
またスキルによってそれを健康な状態に戻したり、呪いや他者からの悪影響を
与えるスキルを解除できたりもする。
彼女の見立では別段蒼太に異常はなかったが、触れることで体の疼きが
増幅することだけは存知していた。
「…私もそれは知りたい…と思います」
続くツバキ。彼女は蒼太と対面するような位置に定着したが、あえて椅子には
座ろうとしなかった。
人間の姿を取っている時は違和感はないが、今の姿だと椅子に座るには尾羽根が
邪魔になってしまうようだ。
興味津々に見つめる真ん丸の彼女の瞳は愛くるしいが、それを直視するには
失恋に泣く蒼太の心境では難しかった。
「もう、焼くなり煮るなり好きにしてくれよ」
焼けになりながら蒼太は天を仰ぐように叫んだ。
「え~タべちゃってもいいのかしら~♡」
背中越しに抱き着いていたサキは彼の耳に舌を這わせながら悪戯っぽく囁いた。
未だにサキに対しては冗談の範囲が読み取れない蒼太。
「それは勘弁、本当にこの前はキャストに食べられたんだから…」
すぐさま自身の失言を取り消すように先日の出来事を思い返す。
見慣れない宝箱から突如と襲った暗闇…文字通り丸呑みにされた苦い出来事。
「へっくしょぃ!っくしょぃ!」
こことは別の場所、アレテイアの居住区内で鼻に妙なむず痒さを感じて
立て続けにくしゃみをした人物が居た。
それが昨日蒼太を丸のみにした張本人、ミクだが自分の噂話が近くでされている
など思いもしなかっただろう。
団欒を楽しんでいた四人だが、不意の胸騒ぎにツバキは思わず声を上げた。
「…ムーンさん、追わなきゃ…蒼太さん、肩貸して」
「え?あぁ…」
放っておいてもと思いながらもツバキの申し出を無碍にすることも出来ず、
彼はゆっくりと椅子から立ち上がった。
纏わりつくサキを一旦離し、言われたように肩を貸すべく、右手を広げツバキが
来るのを待った。
がしかしツバキの言った肩を貸しては蒼太の想定とは全く違い、彼女は翼を
はためかせ少し浮遊すると蒼太の頭上からを趾を使い
彼の両肩を鷲掴みにすると更に羽ばたき、上空へと飛行し始めた。
ご覧いただきありがとうございます。
ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。
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