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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
50/51

第5話-7/7

初めまして、【れいと】と申します。


初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。



むしろ力を込めすぎ、むせ返ってしまうほど強烈な一撃だった。


敢えて笑いを誘ったつもりだったが、月姫はクスリともせず、


真顔のまま言葉を続けた。



「ええ、わたしのほうこそ大丈夫です…

蒼ちゃんは19時にはあがってくださいね…」



らしいといえば、彼女らしいが何かが違う。


この違和を払拭できずに蒼太は違う切り口で彼女の様子を伺ってみることにした。



「う、うん。分かったもう少しいちゃだめ?」



「では20時まで許可いたしますが…明日も朝からアレを

お願いしないといけないので終業時間は約束してください…」



思っていた通りの返事に蒼太は一人納得するしかなかった。


もしかすると自身が今日の出来事に浮かれすぎているのかも知れないなと反省を


する。



「うん。分かった。かぐも無理するなよ」



あまり彼女の仕事を止めるのも良しとせず、見送るよう会話を切る方向へと


持っていく。



「わたしは…大丈夫です…ご心配ありがとうございます…」



月姫も持ち場に急いでいる感じはあったためそれ以上留まることはせず、


そのままエントランスへと向かっていった。


程なくISKはいつものように開店し、待っていたファナー達を迎え入れるの


だった。






開店してから1時間程度たった頃、蒼太はホールをうろつきつつ、


自分にできることをこなすよう頑張っていた。


仕事の合間に初見のキャスト達の様子を伺い、癖や特徴と名前を覚える様に


努めていた。


ただ一度も接したことのない相手に積極的に話しかけることも出来ず彼は自身の


人見知りの性格に悶々としていた。


それでもここ数日で仲良くなったキャストは少なくない。


が、着る服が変われば雰囲気も変わるもので昨晩のスーツ姿からすれば


今日は個性豊かな印象を受けるキャストばかりだった。



「サキさん、ちょっといいですか?」



店内を一人ぷらぷら歩いていたサキを捕まえて彼は先ほど抱いていた疑念を


問いかけようとする。



「あらあら~そうちゃんからおサソいだなんて~コシツいっちゃう~?」



ニタニタと笑顔を浮かべながらサキは上目遣いで蒼太の言葉に反応を示す。


いつもの彼女の衣装、ビキニから溢れそうな双丘を強調させるように


少し前屈みになって彼ににじり寄ってくる。



「もう、仕事中ですからからかわないで下さい。

それより今日のかぐ変じゃないですか?」



せっかくの期待を裏切られたようにサキは口を少し尖らせながら


彼の言葉に応えた。



「ヘンかなぁ~?どのヘンが~?」



「なんか、元気がないっていうか…もしかして告白のこと話しました?」



とぼけるような口ぶりのサキに真面目な面持ちで訪ねる蒼太。


そのことで月姫の元気がなくなるかは微妙なところだったが、


彼女の態度にはどうしても違和を感じて仕方がなかった。



「ジマンじゃないけど~クチがカルいアタシでもまだハナしてないわよ~

キャストのほとんどには伝えたけど~」



「広めるのはやめてくださいよ…いまさら言っても手遅れって分かってますけど」



確かに月姫と他のキャストが話をしている時間はほとんどなかったし、


そのような場面は見合わせていない。


蒼太の言葉に一様に考えるふりをするサキ。


そして合点がいったように手をポンと叩くと、突拍子もない答えにたどり着いた。



「あ~、タブンムーンってばキョウはあのヒだわ、きっと~」



またよからぬことを思いついた風な彼女の表情。


まだまだここでの付き合いが浅い蒼太にとっては彼女の言うあの日の意味が


分からない。


さらに深く追求するために彼はサキの言葉を拾って質問を重ねた。



「あの日?」



「え~オンナのコのデリケートなブブンをキいちゃう?

そうちゃんったらオモったよりダイタンなのね~」



サキのはぐらかすような言いぶりに蒼太は困惑の色を浮かべた。



「サキさんの冗談が俺にはどこまで冗談なのか分からないよ」



「でもマチガいなくあのヒだから、

あんまりかかわらずにホウっておいたホウがイいわよ~」



「そうなんですか?」



結局あの日が何の日か分からないまま蒼太はサキの言葉を受け止めて、


雰囲気の違う月姫との接触は最小限にとどめようと思った。


ただ女性特有の月の障りの可能性も否定できないまま、月姫の顔色も


どことなくいつもより悪かったように思えてしまう。



「うんうん、それはホントウだからアトアトヤッカイなコトに

なりたくないならね~」



ここまで言うならサキの言葉を信じるしかないだろう。


個人差があれど女性の体調不良の時は最悪寝込むことだってあると彼も知らない


わけではなかった。



「分かった、そうするよ…そういえば名札付けているんですね」



おとなしく月姫の事に関してこれ以上深追いするを辞めることにした。


ふとした瞬間にサキの腰につけていた名札に目が留まった。


そこにはひらがなで「さき」と書かれている。


昨日蒼太が提案した名札が早々にも実用化されているようだ。



「なんかキョウからツけてシュッキンするようにって~」



その名札をぷらぷらと手で弄びながらサキは右に左に首を傾げた。



「すごく分かりやすいです、俺は顔と名前の覚えが悪いから…」



「ジツはアタシも~」



「え?そうなの?」



一瞬覚えた親近感。



「ううん、ジョウダンよジョウダ~ン。

キャストはみ~んなおタガいのコトはしっかりオボえているわよ~」



まさしくその親近感は一瞬にして崩れていく。


すぐに信じてしまう自分を呪いながらも、サキにとって良い玩具にされている


ことに悔しさがこみ上げる。



「もう、サキさんの調子が本当に読めないですよ」



蒼太は不満を漏らしながらホール内を再び闊歩することにした。


それから約束の20時まではあっという間に過ぎ去ってしまう。


この時間帯には誰も居ないであろうアレテイアで着替えを済まし、


蒼太は月姫に一声かけて今日の仕事を終えることにした。


ステージ上でイベントを仕切る練の声が聞こえてくる。


名残惜しくも約束を破るわけにはいかず、蒼太はエントランスへと向かった。


いつもと変わらずそこにはメイド姿の月姫が受付をそつなくこなしていた。


丁度客足が途絶えるタイミングで蒼太は彼女に声をかける。



「お疲れ様、今日は約束だから帰るね」



「お疲れ様…また明日…」



笑顔を浮かべない彼女に感じる違和感。


接客時にはそれなりの笑顔を見せてはいたが、蒼太に関してはとても冷たい対応


に見える。


けどサキの助言もあってか、蒼太はこれ以上月姫の態度に対してとやかく言う


ことはせずに手を振ってISKを後にするのだった。



「やっぱりちょっとおかしいよな、今日のかぐ…」


ご覧いただきありがとうございます。


ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。


誤字脱字のご報告いただけると助かります。


応援していただける方は、ぜひここで☆の評価とブクマをお願いします!!


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