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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
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第5話-4/7

初めまして、【れいと】と申します。


初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。



その時…



「まっ、待って下さい!」



彼女にしては珍しく大きな声で彼を呼び止めた。


戸惑う蒼太。


インターフォンからブツッと短い電子音が聞こえた後、ドアの向こうからトトト


と足音が聞こえ、次いで解錠の音が聞こえ目の前のドアが開かれた。


現れたのは紛れもなくツバキ本人だった。


くつろいでいたのか、だぼだぼのスウェット姿で髪も寝起きだったのか寝癖が


付いたぼさぼさの状態。


ISKで会った時とは違い、両肩についていた翼はなく見た感じでは人間の女性と


何ら変わらなぬ姿をしていた。



「あ、あの…せっかくなのでお茶でも…」



一瞬蒼太と目が合ったものの、彼女は伏目がちに視線を落し、恥ずかしそうに


言葉を紡いだ。


オフショルダーセーターのように伸びに伸びた首回りが最初から


そうであったかと思わせる。



「え?良いの?じゃ、遠慮なく」



彼自身それほど図々しい性格ではなかったが相手に興味があった分その背中を


押すのには充分だった。


彼にとっては千載一遇のチャンス、異住人がどんな部屋に住んでいて、


どんな生活をしているか好奇心を駆り立てていた。


通路を挟んで左右に扉が3つあり、その突き当りに解放されていた扉の


向こうへと案内された。


そこがリビングになっているようで広さにして10畳程度、開放感があり、


壁の一面は透明度の高い窓で充分な光が差し込まれていた。


別の壁には大型のテレビが埋め込まれており、部屋の中央に小さなテーブルと


不定形に形を変えるビーズソファーが置かれていた。


少し気になったのは床に落ちている羽根のようなものだった。


彼は一瞬部屋の中に羽根?などと思ったが色、大きさからしておそらくツバキの


ものだと推測される。



「あ、ごめん、ちらかって…、かも…」



テレビの横に設置されているパソコンデスクに2つのディスプレイ、


キーボードにデスクの上にアクリルスタンドや小物が置かれていた。


そこには彼女の趣味が出ていたのだろう。


アイドルやアニメであれば蒼太も興味を持たなかったが、彼も良く知る歌手の


ものがいくつも置かれていた。


去年の後半から爆発的に人気が出て、今もまだ衰えることなく第一線で活躍


している女性歌手。


残念なことに本当の姿は誰も知らないが、歌唱力は同世代では群を抜いて高く、


正体不明の歌い手「TBK(ティービーケー)」としてその名をはせていた。



「え?もしかしてツバキさんもTBKのファンなの?」



自然とパソコンデスクに足が向く蒼太。


よく見ればマニア垂涎もののグッズがズラリと並んでいる。


さすがに手にするのはおこがましく、顔を近づけてみる程度に留めていたが、


近くにあるスピーカーやヘッドフォンなども一流と呼ばれるメーカーのものが


揃えられていることにも着眼していた。



「ファ…ファンというか…」



消え入るように答えるツバキだが、いつも以上恥ずかしそうに前に組んだ両手を


もじもじとさせしていた。



「色々グッズがあるから、つい。俺、ファンだからさ」



そう言った後に蒼太はツバキに振り返った。



「あ、ありがとう」



顔を赤く染めながら短く礼を言うツバキ。


人見知りで尋常じゃない程のあがり症の彼女。


思わず勢いで彼を家に上げてしまったことを今更ながら後悔していた。



「そういえばツバキさんの声質ってTBKに似てるよね、似せてる?」



目の前で赤面している彼女に男は問いかけた。


そう、過去に一度ISKで彼女の歌声を耳にしたことがある。


まるで別人のように歌い上げる彼女の姿は心惹かれるものがった。



「えっ、は、はい…ちょっとお茶、…てきます」



話しかけられる度に顔の赤さを増すツバキは居てもたってもいられず


その場を離れ、カウンターを挟んだキッチンへと向かった。



「あっ、おかまいなく」



社交辞令的に蒼太は声をかけたが、その言葉にツバキは何も答えず食器棚を開け、


グラスの準備を進めていた。


異住人の生活は不便だろうと思っていたが、以前ミオが蒼太にアプリで


変身できることを打ち明けていたことを思い出す。


ツバキの本当の姿なら両手が翼になっていたので、私生活では苦労すると


思っていたが案外そうでもないようだった。



「綺麗な部屋だな…いい匂いだし…って音楽機材?

結構色々あるんだ…本格的な感じで…」



部屋独特、いや彼女独特の匂いを鼻腔に取り入れ、再びパソコンデスクの上に


あった機材に目をやった。


先程は確認できなかったが、マイクやエフェクター等、到底素人ではなさそうな


ものに感嘆の声を上げてしまう。


程なくして背後から彼女が声がかかった。



「お待たせしました…」



部屋の真ん中あたりにあった小さな丸テーブルの上に蒼太用と自分のコップを


対面に置いた。


その横に会ったビーズソファーを蒼太が座るようにと配置して、自身も腰を


下ろした。



「あ、そんなに気を使わなくても…」



と言いながらも蒼太は遠慮なく彼女が勧めてくれたビーズソファーに腰を


掛けてくつろぐことにした。


ツバキも特段綺麗と称されるほどの美人ではないが可愛く整った顔立ちは


していた。


なにより蒼太の好みのタイプにドストライクなのだ。


初めて見たあの時から蒼太の心は彼女に奪われてしまったと言えるだろう。



「ごめんなさい、本当に来てくれて助かりました。

私没頭すると周りが見えなくなってしまって…」



そんな彼の熱い眼差しが痛いのか、それともただ単に照れてなのかツバキは


蒼太を直視せず視線を落しながらいつものように答えた。



「没頭って今日はなにをしてたの?」



「ん?えっと…あっ、っと…歌の…練習を」



途切れ途切れ言葉を繋げるツバキ。


パソコンの電源がついていたことを思えば、本当についさっきまで彼女は


そこで歌っていたのかもしれない。



「え?なになに聴かせてよ!」



彼女の歌声に感動を覚えたのは記憶に新しい。


どんな歌でも彼女の歌声を聴けるならお願いしたいところだ。


目の前に置かれたグラスには目もくれず、蒼太は前のめりになってツバキに


迫った。



「…ま、まだ発表前だから…」



彼の熱意に思わずたじろぐツバキ。


座っていたためわずかしか彼との距離を取れずに彼女は困った表情を浮かべた。


ISKでもその引っ込み思案な性格は変わらず、拒絶しているわけではないが


受け入れることも容易には出来なかった。



「発表?え?なにかで出してるの?」



ネットに存在しているなら今では簡単に探すことは出来るだろう。


SNSの類をツバキがやっているなら是非ともフォロワーになりたいところだ。


ツバキは恐る恐る人差し指でパソコンデスクがある方向を指さし示した。


その方向に振り替える蒼太。


彼女の指の先には先ほど目にしたTBKのCDが置かれていた。


しかもよく見ればそのCDは今のところ発売日を迎えていない。


つまり発売前のTBKのCDを彼女は所持しているどころか、蒼太の問いかけの


答えがそれだというのだ。



「えっ?ええぇぇ!!も、ももも!もしかして!?」



驚愕に声が震える蒼太。


俯き視線を逸らせるツバキだが、彼の言葉にゆっくりと小さく頷き返した。



「その、声が似てるとかじゃなくて?TBK、ほ、本人!?」



再確認する蒼太の言葉に同じように小さくうなずくツバキ。



ご覧いただきありがとうございます。


ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。


誤字脱字のご報告いただけると助かります。


応援していただける方は、ぜひここで☆の評価とブクマをお願いします!!


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