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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
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第5話-2/7

初めまして、【れいと】と申します。


初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。



キリの緊迫感を緩んだと同時に張りつめていた辺りの空気が霧散していくのを


蒼太も肌で感じ取った。



「騙しては?」



再度キリがエルナに問いかける。



「まぁ当然の反応だな、ついてくれば分かる。こっちだ」



当のエルナはくるりとキリに背を向け通路を歩き始めた。


あまりにも無防備なエルナの背中、襲い掛かるチャンスなら今だろう。


けれど今のキリからは殺気の欠片も感じ取ることが出来なかった。



「そうくんは心だけでなく体も素直だからな…本当に助平な奴だ。

君も一緒にこちらに来たまえ」



「ななな!」



エルナの言葉に蒼太は感嘆の声を上げる。


彼女が指摘したのは蒼太の膨らむ股間の事だった。


命のやり取りが行われようとしていた状況下でも目の前の女性の裸…


キリのスタイルの良い裸体に男性の男性自身が男性としての反応をしていた


ことを彼は恥じた。


だが、恥じたところですぐさまその生理反応が治まるものでもない。


意識すればするほどそれはあらぬ妄想と共に自己主張が激しくなってしまう始末。



「あぁ、ここに来たのは偶然ではないぞ。

ムーンからそうくんの事で連絡はもらっていたしな、新参者の受け入れは

私の業務の一つだ。

少しそうくんの到着時間が私の効いていたそれより早かったのが誤算だった」



エルナは歩きながら蒼太に話を続けた。


だが、当のキリはまだ先ほどの場所から動こうとはしていなかった。



「決まって一週間に一人はここに新参者がやってくる、今日がその日だ。

覚えておくと良い…たいていは丸腰だが今日みたいに身体が変化する輩も

居るから要注意だな」



月姫からは伝達されていなかったことをエルナが話す。


今日みたいな危険があるなら事前に言ってほしかったと蒼太は心の中でボヤいた。


エルナには連絡していたといことで万が一を避けたつもりだったのだろうが


彼の中では腑に落ちずもやもやとした思いが残ってしまった。



「武器とか用意した方が良い?」



今日みたいなことがあるなら用心に越したことがないだろうと蒼太はエルナに


持ちかける。



「戦う気か?今回のように好戦的な相手も居るがいずれ仲間になる相手だ、

武力を行使するのはいただけないな」



「でも、今日みたいに襲われることだって…」



今日もエルナのように武器があれば抵抗を試みることはできただろう。


たとえいずれ友好的な相手になるとしてもファーストコンタクトも大切だと


蒼太は問うた。



「己を磨くことを忘れなければ、杞憂に過ぎない。

それに新入りが来るときに私が居ないことはないからな」



やはり納得できないまま蒼太はエルナが衣裳部屋に入っていくのに従った。


程なくして2人が居る衣裳部屋の扉が開かれる。


他でもないきりが恐る恐るやってきたようだ。



「…来たか」



キリが部屋に入るのを待って、エルナは彼女の元へと歩みより右手を差し出し


握手を求めた。



「改めてエルナと申す。新入りの教育係でもある。

きりくん今日からよろしく、私たちはお前を歓迎するよ、

この後ここでの生活について詳しく説明をしよう。

その前に先ほども言ったがお好みの衣装を身に着けると良い」



その申し出にキリは拒絶することなく己の手を差し出し、形式上での握手を


交わす。


そのままエルナは目配せで蒼太に合図を送ると、その意味を察し蒼太も彼女に


倣うように右手を差し出してキリに握手を求めた。


彼女から殺意は感じることはなく、その表情も少し穏やかになっているのを


感じつつ蒼太は先ほどまで鎌に変化していた右手を握り返した。



「改めてよろしく、きりさん」



握手をしたままキリが眉間にしわを寄せ蒼太の胸元に顔を近づけた。


思わず逃げようと距離を取ろうとした蒼太だが握手をしている状態では


その思いは叶わない。


とはいえキリも蒼太に危害を加えようとしたのではなく本当に胸元で彼の匂いを


嗅ぎ取るように鼻をひくひくと動かし、眉間の皺をより深く刻みながら言った。



「なにかわからないが、体の奥からこいつを求めるなにかを感じる…」



鋭い眼光で蒼太の中を覗こうとするが彼女に透視能力など備わってはいない。


更に何度か男の匂いを嗅いだ後、ようやくその握手を解きうっすら笑みを


浮かべているエルナに向き直った。



「奇遇だな、私も出会った当初からそうくんにはそれを感じている。

きっと特別な何かがあるのだろう…ナニカ、かは分からぬが…」



意外な告白に蒼太も驚きを隠せなかった。


他のキャストからそのようなことを聞いたことはなかった。


だが必要以上に構ってくるサキやミオがただのお人よしではなくそのナニカに


惹き付けられているとすれば説明がつくだろう。



「そ、そうだったんだ…」



エルナとキリの言葉に今度サキに確認してみようと頭の中で蒼太は思った。



「あぁ、普通の人では感じることがない特別な何かだな、そうくんの傍にいると

身体が疼くのが分かる」



「なるほど、私のこれもそれか…」



妙な一体感を醸し出す2人。


殺伐とした雰囲気よりよっぽどましだが、何か特別扱いをされる自分自身に


蒼太はむず痒さを感じてしかたなかった。



「よくわからないけど、かぐにはキャストに手を出すなと言われてるから」



2人の蒼太を見る目が普通でないことを悟ると蒼太は切り札と言うべき免罪符を


彼女たちに示した。


月姫から堅く言われているISK内でのご法度。


ある意味良くも悪くも蒼太の足枷になっている決まり事。


これが無ければ蒼太はいとも簡単に他のキャスト達と関係を持ってしまって


いたかもしれない…



「ん?そうくんから手を出すのはダメだが、出されるのは良いと言う事か?」



突拍子もないことを言い出すエルナ。


それに慌てふためき蒼太は両手を交差して振り、拒絶のジェスチャーをして


みせた。



「違うよ、とにかく過度なスキンシップはダメってことだから」



朝とは違う意味で彼を獲物として認識しているだろうキリの眼差し。


隣に居るエルナもそれと同じ類の熱視線を蒼太に送っているようだった。



「そうか残念無念。ところでそうくんは別の用事があったのだろ?」



独特の言い回しをした後、エルナは彼の本来なすべきことを思い出させる。


そうキリの登場は蒼太にとって完全にイレギュラーであり、自身の役割を


まだ何一つなせていない現状だった。



「あっ、忘れてた。俺は俺の仕事をしなきゃ…」



ぽんっと手を打つと蒼太は慌てて衣裳部屋の入り口へと向かって駆けだした。



「また会おう、そうくん」



そんな彼の背中にエルナが別れの挨拶を投げた。


否が応でも彼女とは近いうちに再会することになるだろう。


毎週のように今日のようなことがあるとすれば少なくても一週間に一度、


ISKに彼女の出勤を考えればもっと高い頻度でエルナとは時間を共有することに


なるのだった。


それを頭に思い浮かべながら蒼太は今来た道を駆け足で戻っていく。



「まだまだ大変なことが多そうだな、ここは…」



誰も居ない通路に彼のため息交じりの独り言が寂しく響くのだった。



ご覧いただきありがとうございます。


ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。


誤字脱字のご報告いただけると助かります。


応援していただける方は、ぜひここで☆の評価とブクマをお願いします!!


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