表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
34/192

第3話-9/9

初めまして、【れいと】と申します。


初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。




厨房の部屋を抜けると見慣れたISKのホールが広がっていた。


誰も居ないISKに入ったのは蒼太は初めてだった。


何時もは人が溢れ、狭く思えたが無人のISKはとても広い場所に思えた。


実際に後数時間もすればいつものISKがここに繰り広げられるのだろうが…


ステージの横手を進み、その奥に上の階へ行くエレベータが設置されていた。


その横には非常口として扉があるが、今回はエレベータを使う様で月姫がその


ボタンを押していた。



「すでに知ってると思いますが、このエレベーターから上の階に行きます」



程なくしてエレベータが到着し、二人はその中に入る。


中に入ったところで蒼太は沈黙を打開しようと月姫に話を投げかける。



「君を負ぶっていったことがあったね」



「その前にそうちゃんが酔いつぶれて運ばれたんですけどね」



すかさず言い返す月姫に負けず嫌いは相変わらずだと蒼太はつぶやく。



「そんなこともあった気がする」



「気がするのではなくありました」



話を途切るつもりでとぼけたものの少し強めの口調で月姫が念を押してくる。


どうやら彼女の落ち度を少し抉ったのが悪かったのかもしれない。


狭い空間、許容範囲としては6人乗りの600kgだが、そんなに入ると窮屈で


仕方ないだろう。


階数のボタンはBを一番下に1、2、3、4、5と表記されている。


月姫が目的階として押したのは3階だった。


物の数秒で目的階に到着すると電子音でチーンとなり、ゆっくりと扉が開いた。


エレベータを出ると正面には壁があり通路は左右、二手に分かれていた。


月姫は右側の通路を進みその後ろを蒼太はついていく。


少し通路を歩くと道なりに左に曲がっていた。



「3階と4階に各4部屋ずつあります。普段は3階しか使わないので使用して


 いないときは4階のチェックは必要ありません」



説明をしながら月姫は歩き続け、左に折れ少し進むと通路を挟んで3-Cと


3-Dの扉があり、扉同士は若干位置をずらして向き合っていた。


月姫は3-Dの部屋のノブの下方に腕時計をかざし、それと同時にガチャという


金属音が聞こえた。



「部屋はオートロックですが、


ブッチを持っていればロックを外すことが出来ます」



月姫は扉を開け、自身はそこに立ったまま蒼太を招き入れる。


その部屋は見覚えのある場所だった。そう、蒼太が月姫と再会をした部屋、


ここで働くきっかけになった想い出の部屋だ。



「一般の人がブッチをかざしても開く?」



部屋に入りながら一応に全体を見渡し、蒼太は疑問を口にする。


ベッドシーツのしわや布団の乱れ様からおそらく昨晩はこの部屋が使用された


ことを物語っている。


それもそのはず、昨晩月姫を運んできた部屋がここだからだ。



「それは無理です、キャスト専用のアプリが入っていないと鍵は開きませんよ」



転送装置と同じで誰も彼もが使えるわけではないようだった。



「そのアプリって普通の人は入手できないの?」



「そうですね、普通のやり方ではインストールできません」



「違法的な?」



素朴な疑問を聞きつつ、蒼太はさらに深堀して答えを求めた。


月姫も即答はせず、怪訝そうな表情を浮かべながらしぶしぶ蒼太の問いに答えた。



「そういうわけではありません、


私は詳しくないのですが星詩瑠せしるさんに教われば」



「せしるさん?会ったことはないよね?」



瞳を輝かせながら蒼太が詰め寄る。



「普段お店にほとんど出ませんから、アプリの開発とかそちら方面を主に


 担当してくれてますよ」



「異住人?」



食い気味に質問を重ね、月姫に詰め寄る蒼太。


自分の興味があるものには好奇心旺盛で周りが見えないところは昔から変わって


いないようだった。


昔の蒼太を知る月姫だからこそ容認したいところだったが、なぜかしら彼女の


心の底に嫉妬心がふつふつと湧き上がってくる。



「その呼び方では分かりませんが、向こうの世界の人です。


 話は逸れましたが各部屋の備品の使用状況を確認します」



彼女はこの話は終わりとばかりに仕事の話を始めた。


そして蒼太を横に、室内へ踏み入れ冷蔵庫へと向かいその扉を開けた。



「主に冷蔵庫、アメニティグッズ、これらが減っていれば補充の必要があるので…」



開けた冷蔵庫の中には酒類をはじめ、水、お茶、乳酸飲料とスポーツドリンクが


並んでいた。


一般的なホテルなどに置かれている類の物。ありふれてはいるが需要が高いもの


と言えた。



「もしかしてこれもアプリを使ってとか?」



「ご名答です、これのこれを…数量をここで増加させて…、


 ここまでが私たちのお仕事です」



蒼太が持つスマホを月姫が操作しつつ、この部屋3-Dの備品の補充を行った。


同様にお風呂の使用の有無を確認し、タオル、アメニティグッズの補充を同様に


行っていく。


ただ諸々掃除や整理をする必要性があると感じたが、そこには月姫も触れな


かった。


察するにこの後商品の補充と片付けが行われるのだろうと蒼太は思考を巡らせた。


最後にもう一度部屋を見渡し、月姫は入口へと蒼太を誘導した。



「これを残り3部屋見て回って、補充は終了です」



ここで行う業務は在庫確認、アメニティの使用の有無、アプリで発注、とわずか


数分で終わるものだった。


一番時間がかかるであろうベッドメイクや清掃を行う必要がないのは非常に


助かったと思える。



「便利な世の中だね」



蒼太は独り言のようにつぶやいたが、その言葉を月姫は拾い上げた。



「世の中が便利なわけではなく、みなさんの協力があってですね」



彼女の言う通り、この後の面倒と思った作業は他の誰かがやっているに過ぎない。


蒼太はバツが悪く頭を掻くと少し離れた3-Cの部屋へと向かう月姫の後を


追った。


この部屋は3-Dと比べ、明らかに人の使用した痕跡がはっきりと醸し出され


ていた。


アメニティーグッズの消費も多く、飲料以外に備品も使用されており、その中に


は大人の情事に使用される装具なども含まれていた。


3-Dのチェックが終わると、今通ってきた通路を逆戻りし反対側の通路の先に


ある3-Aと3-Bの部屋も備品の補充手配を行うことになった。



「割と早く終わりましたが、キャストの早番の人がもう少ししたら開店準備を


行ってくれます」



先ほどは無人と同様に無人のISKのホールは、椅子は机の上に置かれていたり


まさに開店前の雰囲気だった。


だが、その雰囲気も蒼太は知っている光景の一つだった。


彼が来た初日、まさに今のホールと同じ状況を目の当たりにしている。



「あぁ、この前ミオと一緒にやったやつだ」



「話が早いですね、疲れていないようでしたらみなさんと一緒にお手伝いして


もらえますか?」



月姫は蒼太の身体を気遣って優しい言葉を投げかけた。


疲れると言っても蒼太は肉体労働もしていなければ、ほぼほぼ月姫の後に従い


説明を聞いていただけだ。


アレテイアでミクと若干の絡みがあったものの、さしたる労力は費やしていな


かった。



「あいよ」



二言返事で蒼太は彼女の申し出でを受け容れると、右手でグーを作って力強く


任せろとポージングをする。


その様に珍しく月姫はにこりと微笑みを落した。



「私も色々自分の用意をしないといけないので、お願いしますね」



彼女は蒼太に軽く一礼をし、望みを託す。


ご覧いただきありがとうございます。


ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。


誤字脱字のご報告いただけると助かります。


応援していただける方は、ぜひここで☆の評価とブクマをお願いします!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ