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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
30/52

第3話-5/9

初めまして、【れいと】と申します。


初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。



たしかに公衆トイレの様だが、それほど大きなものではなく、男性・女性の


区別はなく入り口は一か所で、反対側に回っても入り口らしきものはなかった。


彼女が入った入り口から少し中をのぞくとそこには個室が3部屋あるだけだ。


月姫が出るまで待つのも一つの案だったが時間を割くのも気を遣うと思い、


蒼太は彼女の後を追うように別の個室に入り、不本意ながら座って用を足すこと


にした。


座りながら考えると、男女を分ける必要がないのは男性の姿をここに来てから


一度も見ていないからかもしれないと想像する。


駅に向かうまでのタクシーの運転手は男性だったが、それは外部の話。


ISK内では何人か男性スタッフが居たがそれも蒼太と同じように普通の人だと


思われた。


圧倒的に男性比率が低く、ここアレテイアでは皆無とさえ思えた。


用を終えた蒼太は、手を洗い外に出て来るがまだ月姫の姿はなかった。


男性女性で時間差はあるのは致し方ないが、彼女の代わりに蒼太の視界には


宝箱が映っていた。


どこからどうみても宝箱らしい宝箱。


少し古びてはいるが、木製で箇所箇所を金属片で補強しているザ・宝箱だ。


お手洗いに行く前からあったかどうかは憶えていないが、蒼太の好奇心は


この上なく駆り立てられてしまう。


幻想世界・地下迷宮・遺跡とくれば宝箱。ただ不自然なのはこんな原っぱに


置いてあることだ。


冷静な彼なら分かり切ったことだがテンションが爆上がりしている状態では


そんな不条理はお構いなしだった。


見たところ鍵はかかっている様子はなく、両手を広げれば持ち上げるぐらいの


大きさのもの。


一歩、また一歩と近づき、その宝箱の前に膝をつき蓋に手をかけた時だった…


一瞬蒼太を頭から覆いかぶさる影が見える。


次の瞬間蒼太は暗闇の中に閉じ込められてしまった。



「イーヒャヒャヒャヒャ!かかったかかった!ほんとにかかったぞぇ!」



甲高い笑い声に嘲笑う口調でハイトーンの女性の声が蒼太の耳に届く。


その声の主は近くまるで耳元にでも居るのかと錯覚してしまうぐらいだった。


彼女の声は反響し、洞窟の中に入っているように響いていた。


蒼太は何が起こったか分からなかったが四肢の自由が制限されている状況は理解


できた。



「鼻を突くような童貞臭がすると思って仕掛けたらまんまと引っかかったぞぇ!」



再び女性の声が木霊する。


蒼太は恐慌に陥らないように一度大きく深呼吸をした。


息苦しさは感じない、呼吸は正常、視覚は封じられてはいないが暗闇、皮膚は


少し生暖かさを感じる。


包まれている感覚に近いが自由が制限されている状態。


深呼吸のおかげで冷静さが戻り、改めて作動している五感を精査する。



「…」



声はでない、匂いは少し甘い、目は開いているが真っ暗、生暖かいという触覚、


味は…今は気にすることではない。



「イーヒャヒャヒャ、覚悟しな骨の髄まで吸い取って、


 精が涸れるまで絞ってやんよ!」



立て続けに同じ声が耳に届く。


言葉だけ聞いているとこの後非道なことをされる予感がする。


言い返すにも言葉が出ず、蒼太は四肢をばたつかせて抵抗する意思を示した。


それによって制限こそされていたものの完全に自由を奪われていたわけではなく、


抑えられている感じはあるもののある程度の自由は効くことが分かった。



「痛いの嫌い?苦しいの苦手?溶けてなくなっちゃうの怖い?


 どーれもこれも慣れれば悦楽、楽しみぞぇ!」



声の主が若く、威圧感が感じられないトーン、それが蒼太の恐怖心をそぐのには


十分な判断材料だった。


改めて蒼太は再度深呼吸をして、事の成り行きを思い出し対策を練ることにした。



「どこがいい?まずは目かな?目を頂いちゃおうかな?それとも耳?


いっそのこと女性を経験できない体にしてやろうか?」



時折彼女からのノイズが入り、蒼太の思考を邪魔するがここはISKのキャスト


の住居なら彼女も異住人には違いない。


となれば蒼太が詳しくしる幻想世界に存在する相手だと推測する。


そして導き出された答えが、ミミックという生物だった。


遺跡や地下迷宮に生息し、外観は宝箱に擬態し近づいた冒険者を食べてしまう


魔法生物。


ノイズの元凶になる彼女の言葉もすべては嘘でないかも知れなかった。


体内に捕食した後、一説によれば消化液で骨まで溶かしてしまう逸話も残ってい


る。



「怖い?怖いだろ?おもらししちゃっても構わないぞぇ?


 あたいは心が広いからなんだって許したげるぞぇ!」



今の状態ではどこが上でどこが下か分からなかったが、両手の先に硬い物体が


あり、それを両手で押すことは出来そうだった。


全てが推測に過ぎないがそれを押し開く事が出来れば脱出できるのではないかと


想定した。


意を決し、壁らしき物体を押すための力を籠める。


と同時に蒼太の目に光が差し込んできた。



弥紅みくさん、なにしてるのかな?」



声と同時に視界に飛び込んできたのは上から見下ろす月姫の顔。


彼女は宝箱の蓋を開け、中に閉じ込められている蒼太を発見したのだった。



「あら~ムンじゃない、こんなところで~奇遇ぞぇ」



「あら~じゃないです。奇遇もなにも…そうちゃん、遊んでないで行きましょう」



月姫の手が蒼太に延ばされ、彼はその手を握って閉じ込められていた箱の中から


脱出した。



「あ、遊んではないんだけど…」



初めての出来事に生命の危機を少し感じていた蒼太は不服そうに呟いた。


蒼太を喰った宝箱は獲物に逃げられるとまばゆい光と共に人の姿に形容を


変えていく。


黄色のツインテール、白と黄色でデザインされたワンピースに身を包んだ小柄な


女性。


いかにも意地悪そうな感じの表情に虹彩はドルのマークを催した独特の瞳。


月姫にミクと呼ばれた彼女もISKのキャストの一人だ。


蒼太も経験したが内部に取り込まれた後不定形に蠢く彼女の身体は一部に熱狂的


なファンを持っているほど人気は高い。


オイルに満たされた体内で味わう快感は一度経験してしまうと沼ってしまうほど


の他所では得ることができないとのことだ。



弥紅みくさんも次からは変な悪戯はしないで下さいね、これから私の代わりで


 みなさんのお世話、お手伝いする蒼太さんです」



仕切り直して月姫がミクに対して蒼太を紹介する。


改めて蒼太も一度身なりを整えると、自分の肩ぐらいまでの身長のミクに対して


挨拶と握手を求めた。



「よろしく」



お楽しみを邪魔された不満を顔に露呈させながらミクは口を尖らせてブーと


一言だけ鳴いた。


そんな不満な表情も一瞬、すぐさま営業スマイルを浮かべると蒼太が出した手を


すり抜け、ぎゅっと抱き着いてくる。



「あたいはミク。よろしくしてやんから、また相手してくんなまし」



ISKの挨拶のようにハグの後は蒼太の頬に頬を付け自然に体を離した。


精一杯彼の顔に近づけようとつま先立ちで背伸びする姿は変にいじらしく感じ


取れた。


彼女にとっては軽い暇つぶしだったのか挨拶を終えた後はそそくさとどこかへ


行ってしまった。


そんなミクの後姿を見ながら蒼太は心の声が口から洩れてしまった。



「かぐって力強かったんだ…」



ぼそりと言った言葉にすぐさま月姫は両手を交差させ、左右に振って否定を


唱えた。



「違いますよ、失礼ですね。弥紅みくさんは内側から対する力は異常に強いんですが、


 外から開けられるのにはとても弱いんです」



その言葉に蒼太の脳裏にとある爬虫類が思い浮かぶ。



「あ~ワニみたいなものか」



「ワニ?ワニってあのワニ?」



突如出てきた生物の名前に首をかしげる月姫。



「そ、ワニは噛む力は1トンぐらいあるけど、開く力は子供が抑えても


 開けれないほど弱いんだ」



と言いつつ蒼太はミクの口がワニになった姿を思い浮かべ一人吹き出して


しまった。



「そうなんですね。でも弥紅さんみたいなキャストも居るからなんでもかんでも


好奇心で近寄らないで下さいね」



要注意人物としてすぐに頭に浮かぶキャストこそ居なかったが、あながちこ


この住人は男性に対して好奇心旺盛だから要注意だと思った。


一部シノやサキなど同性でも相手構わずスキンシップが過ぎる人物もいるが…



「分かったよ、でも本気で取って食おうってキャストはいないよね?」



「もちろんそうですけど…似たようなこと考えているキャストばかりです。


 恥ずかしながら…」



蒼太の問いに応えつつ月姫は顔を赤らめた。


なぜ異住人である彼女たちがISKで働いているか、その目的は何なのかは


まだ説明されないがそれを知る月姫にはどうしても色情が脳裏に浮かんで


しまう。



「その、飢えてるんですよ。みなさんお盛んなので、


 昼間からこの話題は避けましょう」



月姫の顔がぼっと燃え上がってしまう。


彼女はこの手の話題は苦手で経験不足なためすぐに顔に出てしまうようだ。



「なるほど、そう言うことなんだね」



彼女の様子から蒼太がその内容を察するのは簡単だった。


男として蒼太も興味がないことはないが今はそのことで時間を浪費するより、


これからの仕事について一つでも知る時間に充てたいと思うのだった。



ご覧いただきありがとうございます。


ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。


誤字脱字のご報告いただけると助かります。


応援していただける方は、ぜひここで☆の評価とブクマをお願いします!!


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