第3話-4/9
初めまして、【れいと】と申します。
初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。
すでに許容範囲は広がったが、なぜ現実離れした世界がここに存在しているかが気に
なった。
こんなことが本当にあるなら大問題になっているはずなのだから。
「話せば長くなるけど、パパの仕業…、折を見てまたいつか説明するわ」
「パパ…ってかぐのお父さん?あの失踪したって言う」
あまり多くは語らなかったが月姫の父は彼女が中学3年生の時に失踪して
しまっていた。
彼女の母はすでに他界しており、月姫はその年にして妹と二人で生活することに
なってしまったのだ。
だが、蒼太とも違う高校に進学し、それ以降は彼女の噂を耳にすることが
無かった。
大学に進学し、2歳年下の妹も無事に高校に入学したことまでは知っていた。
ISKで働いている月姫を見た時は生活苦もあり、水商売で働いていると
思っていたが本当のことは全く知らない状態だ。
「ええ、生きてたの、帰ってはこないんだけど…ま、パパのことはまた今度ね」
先ほどと同じように父親の話をする月姫は少し寂しそうで、詮索するのも悪いと
蒼太もそれ以上親について尋ねることを止めた。
妖精と別れた後月姫はそのまま芝生の上を歩いて行く。
その後ろを蒼太がついていった。
「ここは、パークと呼ばれるところで簡単に言えば公園ね。
自然があふれてて空気がおいしいところ」
広さにして大型ショッピングモールの駐車場ぐらいの広さは十分にあるだろう
面積。
全部を見たわけではないが端から端までは2、3kmぐらいありそうなほどだ。
「確かに都会の空気とは一味違うね」
ここに来てから気づいてはいたが改めてそれを言葉にして、大きく深呼吸をする。
喉を伝い、肺にまで清々しい空気が通っていくのを認識できるほどに冷たい
空気が体内の器官を通って行った。
「この自然を守っている所を今からチェックしに行きます」
業務連絡のように伝える月姫。
数年の距離が一気に縮まったとはいえ時折彼女はその雰囲気を殺してしまう時が
ある。
蒼太が知らない彼女の10年の月日は、幼少期から付き添った前の10年と同じく
大きく変えてしまっている。
「パパが言うには四元素と呼ばれるものが各所にあってそれが異常をきたして
いないか、目視でチェックしに行くの」
四元素とは聞き馴染みのない言葉だが幻想世界好きの蒼太にとっては当たり前の
ように聞き流せる言葉だった。
水・土・火・風からなるこの世界を形成している4つの元素。
「異常があったら?」
「それは大変なことになるらしいけど、今まで一度もそれは起きてないから安心
して。ただ異常があるといけないから必ず毎日チェックしないといけないの」
「そういうもんなんだね」
この調和がとれた世界を守っている根源に異常があれば…と考えるだけで怖いな
と一人想像する蒼太。
月姫は手にタブレットを持ち、蒼太にも情報の共有をしながら歩を進めた。
地図アプリで使用し、俯瞰で見ればこの建物の大きさが一目瞭然だった。
ただ気になったのは肉眼では太陽や雲、空模様が仰ぎ見れるが、アプリ上では
ここ建物には屋根があり、内部を知ることが出来なくなっていた。
巨大建造物、というよりは大きなホテルないしはマンションが建っているとしか
分からない。
ある意味外界から完全に閉ざされた地域なのではと思えてしまう。
目的地を説明し、タブレットを鞄の中に直すと、月姫は蒼太を先導するように前
を歩き始めた。
道中で何度か先ほどの妖精達とすれ違うが簡単な挨拶をし、その場をやり過ごし
ていた。
一見すればどの妖精も同じに見えるが、月姫が言うには服の色、髪型、髪色、
瞳の色などで違う妖精だと区別が出来ているようだった。
大人数で組まれたアイドルグループの一人一人を区別できない蒼太にとっては
外観的違いで妖精たちを判断するのは到底先の話だと思えた。
やがてたどり着いたのは沸き立つ泉だった。
泉の中央部分から噴水のように水があふれ出てそれらが川に流れていた。
とても住んだ湖、少し遠くに水浴びをしている女性が見える。
思わず蒼太は月姫が泉のチェックをしている間に女性が居る方角目を凝らして
見てみる。
水浴びをしているのだから必然的に女性は全裸であり、生唾を飲み下してしまう
が彼の目にはその女性が半透明であることを認知することが出来た。
昨日、一昨日とISKでお世話になった水系と呼ばれた異住人の類。
距離があるため声をかけることも躊躇ったが、その女性がルカでもネネでもない
ことをしると凝視するのを辞めた。
一歩間違えば覗きでしかないのだから。
そう思って月姫の方を向き直ったが、彼女はとても冷ややかな眼差しで彼を見返
していた。
彼女のそのまなざしの意味は蒼太にはわかっていた。一言で表すなら【軽蔑】と
いうものだ。
「ごめん、ごめん」「もぉ…」と短いやり取りがあったのち、この部分の
チェックすべきポイントを詳しく教わった。
湧き出る水の勢い、色、透明度、水位など、4か所にはそれらを調べる各々の
機器があり、体感でしか感じることのできない雰囲気をしっかりと感じて欲しい
と伝えられた。
月姫曰く言葉で言い表せない雰囲気に関しては数日やっていれば分かるとのこと。
水元素のチェックが終わったところで蒼太に業務用のスマホを取り出し、この
マンションの見取り図がインストールされたアプリを操作した。
四元素の位置も地図を見ながらならたどり着けると教わり、次のチェックポイン
トには月姫は後ろからついてくるので蒼太は慣れるために先導を任せられた。
残りの3か所を回るのに50分程度の時間を要したがこの日も特段異常はなく、
最後に風の元素を調和する無限の風車と呼ばれる風車小屋を後にした。
丁度このマンションの中央部付近に戻ってくると、そこには大きな大木が存在感
を放っていた。
「あれがマナの樹です」
月姫は大木を指さしながら蒼太に伝えた。
「マナの樹?マナってマナ?」
「どのマナか分からないけど、
均衡を保つためのエネルギーって教えてもらってるの」
「やっぱりそのマナだよな」
月姫にとってはマナというものは単語だけの呼び名で、それが何かは全く分から
なかった。
「先程使った転送装置は電気じゃなくてマナを動力にしているらしいです」
彼女が鵜呑みにしていた言葉を蒼太に伝える。
つまりマナは月姫にとっては電気やガスと類似しているとの認識だった。
あながち大きくは外れていないが、蒼太がここでマナについて熱弁したところで
彼女は興味を示さないだろう。
「まぁ、つまり魔法が使えるってことだと思うよ」
電気やガスと似てはいるけど非なるものだと伝えたかったが、やはり要約する
のは難しく思え蒼太もこれ以上深堀することをあきらめた。
しかも月姫はマナの樹の方向には向かわず違う方向へと歩き進めていった。
彼女が向かった先にあったのは小さな建造物。
一目でそれが何かは分からなかったが「ちょっとお手洗い…」と言って月姫は
そちらに向かって小走りに駆けはじめた。
蒼太は尿意があったわけではないが、次にいつ休息が取れるか分からなかった
ため、自分も用を足しておくことにした。
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ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。
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