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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
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第19話-7/7

ひとしきり感動の再会を味わった三姉妹は落ち着いたところで、その話題は蒼太に代わった。


「イマリ姉さんの言ってた通り蒼太さんは素敵な方でしたよ」


「でしょ?分かった?好きになったら駄目やよ」


へへんと胸を張るイマリだが、蒼太は彼女のものではない。


それは再三にわたって本人が伝えたから分かっているだろうが、彼女の口ぶりからして完全に諦めてないことが分かる。


「手遅れかも?私の気持ちは巻き戻せないから…」


耳を疑うようなカコの言葉におのずと蒼太の聴力は三姉妹の会話にひきつけられていく。


「奇遇やわ、うちも少しやけど興味わいてきてん。彼の人に…」


そう言ったのはミライ。


それにはすかさず蒼太も反論を述べようとしたが、彼の代わりに間髪入れずにイマリがミライに言葉を返した。


「それは絶対に駄目でしょ?今回の原因はみらいがそうたを嫌いってことでこんな騒動になったのに」


「だめもへちまもあれへん、うちも自分に素直に生きるって決めたんやさかいな」


もはや蒼太の入る隙がなく、呆気に取られている所へ部屋を出ていた他の面々も合流してくる。


「どういうことだ、これ?」


蒼太に色めきだってる三姉妹を目に、マサキは問いかける。


「俺も分からない…ってか頭が痛いよ」


額に手をあてがい、首を左右に振る蒼太。


ここに居るミクやユカも蒼太を狙っているキャストの一人だ。


ネネやシュミはその類ではないだろうが、蒼太が持つ独特な色気?に毒される可能性は0ではない。


「あ、蒼太さん。ムーンさんの誕生日!」


手を打ってそう告げたのはカコだった。


「え?今日?あれ?昨日?…俺、何かしたっけ?」


突然言われて思い出したかのように記憶を手繰る蒼太。


カコのスキルの影響もあってか若干記憶が混濁しているが、昨日の行動はそれほど活発的なものではなかった。


ミライが描いた予想図ではデートやプレゼントをしていたが、カコの巻き戻しですべてが無かったことにされた今では蒼太に未来予想図の記憶は全く残っていない。


あるのは自堕落的に時間を浪費し、一日を過ごした記憶だけだ。


「何もしてませんよ、本当ならデートして一晩過ごして素敵な展開でしたがそれを全部なかったことにしましたから…誕生日なのになにもしてないですよ!なにも!」


最後の方はまるで自分の事のように少し腹立たし気に声を荒げるカコ。


「まじか…誕生日自体忘れてたよ…」


一度過ごした8月18日の出来事は何もなかったように、彼は月姫の誕生日自体を忘却の彼方に置いてきてしまったようだ。


「そうどすなぁ、うちが仕込んだ完璧なデートプランやったさかい、蒼太はんは昨日は休みやったはずやし…なにしてはったんやろ?」


にたにたと独特のいやらしい笑みを浮かべながらミライが蒼太に顔を近づけて来る。


二人の姉が離れたところで、カコは再びシーツで自身の身体を覆いながら、昨日たどった道を思い出そうとしていた。


「確か、未来予想図すべての事象を書き換えると、蒼太さんは久しぶりの休みで昼間っから少しお酒を呑んでエッチな動画を見漁ってXXして、お店に来てミライ姉さんを欺くために萌乃ものさんと一緒に夜を過ごしたぐらいしか記憶してないですね」


彼女の言った通りの記憶が蒼太の中にも残っていた。


いや、事実それ以外の事はしていないし、それ以外の記憶はない。


「ちょっ…俺のプライベートの暴露は辞めて…」


女性キャストばかりの前で露骨に語られるそれに膝から崩れ落ちる蒼太。


かろうじて好意を寄せているツバキがこの場に居ないことは救いかもしれないが…


萌乃ものさんはすぐに寝入ってしまって隣で悶々とはしていたみたいでしたけど…」


更に続く追い打ちに蒼太は座り込み耳を抑えてしまう。


「ろくでもない男だな、いや…ミライの言葉を借りたら、しょーもない男やな」


「ほんでもうちは蒼太はんを見限ったりしまへんで」


「いまりもっ!そうたらしいもん!」


「あたいだって、ソタは天性のむっつりってことは知っておるぞぇ」


それぞれがフォローする言葉をかけるが耳を塞ぐ蒼太には届いていない。


それを良いことにまだまだ盛り上がりを見せるキャスト達だが、変わらぬ優しさで蒼太に接する人物が一名居た。


塞ぎこむ彼の肩にトントンと合図を送ると、穏やかな表情で微笑みかける。


その顔に耳を塞いでいた手をどけると彼女の優しい声が届いた。


「一息ついたら一緒にプレゼント選びに付き合いましょうか?」


声の主はユカだった。


「それはあたしの役目!」


抜け駆けをしようとしたところでそれが専売特許のイマリが割り込んでくる。


「せやったらうちも付き合うたってもかまへんよ?」


「あたいもあたいも!」


「ちょ、ほんとに…一件落着か?」


我先にと蒼太の手を取りあうキャスト達に蒼太は呪う様に一言呟き落とした。


ネネとシュミのように小脇に距離をとっていたマサキがそれに一言付け加えた。


「だな、お前の人気ぶりにちょっと嫉妬するぜ」


結局この後實三姉妹とユカ、ミクと半ば強引にプレゼント選びに連れていかれる蒼太であった。



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