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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
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第17話-9/9

その興奮はもちろん性的な意味合いではないのだが…


「さぁ~でもダインしてからユカのタイドもカわったでしょ~?」


言われて記憶の糸を手繰ってみると確かにと頷いてしまう場面が何度かあったように思われる。


「ん~言われてみれば…でもセシルとかイマリはあんまり変わらない気がするけど」


蒼太が思うに、セシルは初対面からほとんど態度での変化はないように思えるし、イマリに至っては最初から猛烈なアピールがあり唾飲前後で変わったとは言い切れない。


「コジンサはあるのかもね~ミクちゃんなんかいつもソタソタ、ソタソタイってるもの~」


サキはサキで自身の謎が一つ解けたとご満悦のようだ。


そして彼女の中で感じた体液の濃度、唾液や汗などでなく血や精液なら深く依存してしまうのではと推測する。


ミクの騒動に立ち会ったミアももしかするとすでに蒼太に好意を抱いているのではと思っていた。


「え?初耳ですけど?」


「あぁミえてシャイなのよね~ミクちゃんってば~」


異世界行脚の一件依頼ミクの姿を見ていない蒼太はそのことを知らなかった。


現にミクはアレテイアでは惚けるように遠くを眺めては、蒼太のことばかり考えていることが多いようだ。


「じゃあ誰彼構わず唾飲はしちゃだめってことだね…サキさんは大丈夫なの?」


「アタシはマエからそうちゃんにはゾッコンよ~♡」


「はいはい、大丈夫そうですね」


心配して損したとばかりに呆れるように蒼太は彼女に告げた。


彼女の冗談と本気を見抜くなど蒼太には100年経ってもできはしないだろう。


「それこそチでタメしてみたいわ~」


サキは再び蒼太ににじり寄りながら甘い誘惑の言葉をかける。


「遠慮します、そう簡単にはこの世界で血を流すようなことはありませんから」


結果として何らかの答えを導き出してくれた彼女を邪険に扱う事も出来ず、彼はサキに身を委ねた。


「でもアルちゃんがそうちゃんのチをスったらどうなるのかしら~、アルちゃんがカつか、そうちゃんがカつか…」


サキが珍しく蒼太に疑問を投げかける。


以前からアルカには何度か吸血させてくれと頼まれていたが、軽く応じなくて正解だったと蒼太は思う。


「興味はあってもしませんよ?今の話を聞いたらなおさらです」


「もうスコしジカンアマってるけど~シちゃう?」


個室に入ってからすでに8分が経過していたが、占有時間は10分と定められているため時間的にはまだ余裕がある。


この部屋に入ってからずっといきりたつそれをズボンの上から撫で上げるサキの指。


「しませんってば!そりゃ~抜いて欲しくないと言えばうそになりますけどもね!」


思わず誘いに乗ってしまいそうになる蒼太は自分に言い聞かせるように声を荒げてサキに告げた。


「どうしてもってイうならチケット3マイとプレート3マイいただくわよ~」


すかさず営業トークをぶちまけるサキ。


「そこは商魂逞しいんですね、個室に誘っておきながら…」


今度は蒼太が不服を申し立てる番だった。


てっきりサキのおごりだと思っていた今回の出来事。


有益な情報を知り得たことに対価は惜しまないが、それなら先に行っておいて欲しいものだと蒼太は愚痴る。


かといってサキも本当は蒼太からチケットもプレートも徴収するつもりはなかった。


「ルールにうるさいエルフがイるからね~」


名前こそ出さないがそれが誰たるか分かるようにサキは皮肉めいていった。


ルール違反が常な彼女にとってはその相手は天敵としか言いようがない。


「だめですって!そんな噂をしたら地獄耳なんですから!」


「そうね~カベにミミあり、ショウジにメアリーってイうからね~」


「メアリーじゃなくて『目あり』ですよ、もぉ。では出ましょうか」


この部屋に観葉植物として置かれているロタフレンの効果もあって終始エレクトした状態の彼の男性自身だったが、それが治まることはなくやや前のめりになりつつ股間を抑えた状態で部屋を出ようとする蒼太。


扉を開けるといつもの雰囲気で出迎えてくれるISKのホール。


部屋自体の防音効果が高いのか会話も普通に会話もできる個室の性能の高さを改めて思い知った。


しかし個室の防音効果が高いのではなく、ISKとは異なる世界に通じてるがゆえに音が届いていないに過ぎない。


「ざんね~ん♡マジメなハナシだけでオわっちゃった~」


耳元で蒼太にだけ聞こえるように囁くサキ。


「話だけじゃなかったですけどね…少しはためになりましたけど」


振り回されっぱなしだったが今回に限っては非常に有益な時間を過ごせたと蒼太はサキに笑顔を見せながら言った。


ホールに出てもサキは蒼太に体を寄せたまま離れようとしない。


そんな二人の眼前に突然現れた黒い影…


「うわっ!」


ぶつかりこそしなかったが蒼太は衝突寸でのところで歩みを止めた。


「勤務中にキャストとさぼりに興じるとは良い心がけとは言えないな」


姿を確認せずともその口調ですぐさま相手が誰かを悟る二人。


噂にしたサキにとって天敵に相違ない。


「え、エルナだってこの前…」


「あれは新人教育を兼ねてのことだ、そうくんには少し反省してもらう必要がありそうだな」


必死の言い訳を思いつく蒼太だったが、彼女はそれを軽く一蹴してしまう。


「コールがハイってるからアタシはイくわね~、またね~バイバ~イ♡」


蒼太に先ほどまで密着していたはずのサキはするりと自ら離れるとふわりと空中を漂い、後の始末を任せたとばかりに呼び出しのかかっているテーブルへと向かって行った。


「そ、そんなぁ…」


ゆっくりと遠ざかっていくサキの後姿を恨むように眺めながら左手をがっちりとエルナに掴まれた蒼太は一気に押し寄せる虚脱感と共に足元から崩れ落ちていくのだった。


そして30分程エルナの小言と説教をその身に受けるのだった。



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