第2話-1/9
初めまして、【れいと】と申します。
初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。
蒼太が夢の様な世界で夢のような出来事が起きた次の日。
日中のバイトのシフトを終えた彼は約束の時間に遅れないよう昨日足を運んだ
クラブISKの前に居た。
14時40分、待ち合わせの時間より少し早めに着いていたが10分前までは
階段を下りずその前で待つことにしていた。
「おっ?そうニャン!」
彼、蒼太の事を呼んだのだろう。
その愛称で呼ぶ人物に蒼太は一名だけ心当たりがあった。
昨日ここで一緒に居たミオだ。
彼女と確信し、声がした方へ振り向くとその姿は蒼太の予想を裏切っていた。
「あぇ?」
白を基調とした服に黄色と黒のアクセントを入れ、
ミニスカートにハイソックス。
どこかアイドル風な衣装にショートブロンドのくせっ毛、
雰囲気的にミオと思える雰囲気。
一見した感じはミオと似ているが特徴的だった尻尾も先のとがった頭の上部に
ついていた猫耳も装着していなかった。
というかあれは結局コスプレだったのか?とかってに思い描いていた期待が
音を立てて崩れていく。
当然といえば当然だろうが、
彼は思い描いていた幻想は幻想でしかなかったことに心を痛めた。
「どうしたニャ?あかニャさまに落ち込んだりして…
それより見てニャ♪可愛いニャッしょ♪」
そう言いながらミオは彼の前でくるりと一回転、
自身のかわいい対象である黒い鞄をアピールする。
確かに見てくれは可愛いと思えるが精神的ダメージを大きく受けた
蒼太にとってそれはどうでもよい事と思えた。
「うん、かわいい、かわいい」
「なんだニャ!その気持ちの入ってニャい可愛いは」
露骨にうなだれ生返事をする蒼太にミオが腹立たし気に言い返した。
現に今日は町行く彼女に何人かが声をかけてきていた。
ナンパにスカウト、それらに気を良くしていたが蒼太の反応に立腹するのも
無理がないだろう。
「だってさ…結局コスプレじゃん、期待しまくってたのに…」
コスプレ、その単語はミオも嫌と言うほど耳にしてきたものだ。
お店でも街中でもミオを見て人はこぞってその単語を口走る。
「ニャは~ん、さては…これの事だニャ?」
そういうが早いかミオは右手の時計を操作し、一瞬足元から電子的な光が
彼女の頭まで光らせると頭の上に昨日も付いていた猫のような耳が現れた。
同時に背中にはゆらゆらと尻尾が不規則な動きを描いていた。
「て、手品?」
「うんニャ、アプリニャ」
「え?アプリ?」
蒼太はそちら方面の情報に疎いわけでもないがコスプレをする
アプリなんて聞いたことがない。
単語を復唱する彼にミオも同じように応える。
「そそ、アプリを使って変身してたニャ!」
「よくわからないけど…結局はアプリで姿を変えてるってこと?」
事態が呑み込めない蒼太は自分なりの解釈で彼女に問いかける。
「そうそう、さすがに本当の姿で街を歩いたら目立つニャ、
だから変身アプリを使ってるニャ」
「今使って変身してるんだよね?」
「違うニャ、今まで使って人の姿に変身してたニャ!」
二人の言葉に行き違いが生じる。
今、変身したと思い込む蒼太に対しミオは今までが変身した姿と答えていた。
どちらにせよアプリを使って変身したことには違いないがその結果は
大きく異なっていた。
「ってことは今の姿が本物?」
「これがミーの本当の姿ニャ」
どやっ!と言わんかばかりの表情を浮かべ、自信満々に胸を張って応えるミオ。
まじまじと見つめる蒼太、確かに先ほどの比べ顔つきも体つきも変わったよう
に見える。
産毛以上の体毛、昨日はお店が全体的に暗く、詳細まで見ることはできなかった
が明らかに現代に生きる人とは一線を越えていることが認識できる。
「ってことはやっぱり君は異世界の住人!?」
蒼太の瞳の奥で好奇と興味の輝きが光る。
それでなければここで働きたいという意欲が半減どころか激減してしまう。
「お店の前であれこれ言うとニャンだから中で説明するニャ…
ってかまだ時間早いけど今日も遊びに来たのかニャ?」
先程アプリを使った時計の時間を再確認しながらミオは問いかけた。
時間はまだ15時になる前、お店の開店時間である18時にはまだまだ
早すぎる時間だ。
「ううん、今日はお客じゃなくてバイトで来たんだ」
「ムーンの言ってた新しいバイトってそうニャンのことだったのかニャ!」
彼の言葉に合点がいったように右手の手のひらにこぶしを作った左手が
ポンと置かれた。
「かぐ…ムーンって呼ばれてたメイドが言ったなら多分そう、
間違いないと思うけど、午後3時に来て欲しいって」
「そうニャンのことだったのか、
ならそう言ってくれればいいのにムーンも水臭いニャ」
どうやら話は通っていた様子で彼女が案内役として月姫に依頼されたの
だろうことが分かる。
そうと知るとミオも蒼太を見る目が変わり、ファナーとしての扱いではなく
同じキャストとして彼を迎え入れる。
「とりあえず中に入って説明と仕事の内容を伝えるニャ」
「よろしく」
蒼太の返事を待たずにミオは彼の手を引き、入口へと続く階段を下りて
いくのだった。
階下に行くと昨日と同じ大きめの扉が蒼太を待っていた。
看板になるネオンライトはまだ灯っていないが本当に意味でこの日から彼が
新しい世界の扉を開けることになった。
ご覧いただきありがとうございます。
ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。
誤字脱字のご報告いただけると助かります。
応援していただける方は、ぜひここで☆の評価とブクマをお願いします!!