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welcome to CLUB『ISK』へ  作者: れいと
第一部 刻まれた未来
10/192

第1話-10/16

初めまして、【れいと】と申します。


初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。




「さっきのテーブルからチケットも持ってきてるからいつ使っても良いニャ!」



そういわれてチケットの存在を思い出すと同時に、


エルナに教示してもらったこの店のルールが頭の中をよぎった。


ミオからの愛情表現ではあるが、


チケットを使用せず接吻を行っても良いのか?という疑問。



「あ、うん…」



ミオの問いかけに生返事を返すものの、蒼太には一つの考えがあった。



「それとも浮気かニャ?」



図星をつかれた蒼太。


本当の所、彼は一人のキャストがとても気になっていたのだ。


幾度か店内を見渡しその相手を探してみるものの


全く姿を見つけることが出来なかった。


そのついでに沢山のキャストの水着から溢れそうな豊満な乳房や谷間、


水着が喰い込み気味に締め付ける臀部に視線を奪われてしまっていた。



「そもそも…」



と言いかけて語尾が濁る。


ミオに特別な感情があるわけでもなく、


ましてや彼女と呼ぶべき存在でもないと言いたかったが


彼女を敵に回したり遠ざけることは自分にとってマイナスしかないと


言葉を発する前に気がついたのだった。


言葉の続きを待つミオが怪訝な表情を浮かべていたが、


そこに割って入るように初見のキャストが目の前に現れた。



「移動するなら移動するって言って欲しいわん」



「あ…いぬ…」



良いえて妙というかミオの言葉は的を射ていた。


ミオを猫と例えるなら目の前の新参者は犬のオプションに


近いものが体の端々から感じ取れた。


言葉遣いもその一つである。



「ファナーさん、ビールをお持ちしたわん」



犬っぽい彼女はそう言いながら蒼太の前のテーブルにビールを置く。


先程マツリが注文してくれていたものだが、


届く前に移動してしまったのでその捜索に手間取っていたようだ。



「邪魔するニャ!あっち行けニャ!しっ、しっ!」



蒼太に抱き着きつつ、


ミオが新参者を厄介払いをしようと手で向こうへ行けと合図を送る。


犬のような耳を垂れ、


紹介さえされていない彼女はがっくりと肩を落としてしまう。



「扱い酷いわん、まだ挨拶もしてないわん」



「えっと?」



可哀想に思った蒼太が、犬らしい彼女に助け舟を出す。


赤茶色のぶち模様の犬っぽい耳にブラウンの髪、


尻尾も明らかにミオと違った大型犬を思わせるそれが


蒼太の言葉に元気づけられ一瞬左右に振られた。



「そうさん、壱瑚いちこって言うわん、よろしくしてわん」



蒼太の左に座っているミオを避けるように


ソファの右側に回り込みイチコは蒼太とハグを交わした。


通例通り、ハグをしたまま頬を合わせ、


おまけとばかりに壱瑚は蒼太の頬をペロペロと舐め回した。


それを見て不機嫌さを露わにイチコの頭をペシっと叩くミオ。



「舐めるニャ!」



シャーと牙を剥き、爪を立て引っ掻くそぶりを見せるミオ。


日常では味わえない蒼太にとっては


女性二人に取り合いされる現状が心地よかった。


非常に背が高く、スタイルの良い女性が


そのボックス席を通りがかった所で足を止めた。


背の高さで言えば蒼太以上、今はソファーに座っているため、


その高身長にかなりの威圧感を感じてしまう。


イチコが赤茶色を基調にしているなら


その女性は紫色を基調とした水着と装飾品で飾っていた。


彼女は首に黒いチョーカーをしており、


イチコもまたそれと同じものを身に着けていた。



「またやってるのか、毎日飽きないな」



知的な印象を受ける紫色したフレームの眼鏡の奥から切れ長の目が


あざ笑うように揺れ、ため息交じりにその女性は吐き捨てた。



「出たニャ、いぬ2号」



戦闘態勢を取ったままの姿でミオはいぬ2号と呼んだ相手ににらみを利かせる。


イチコと比べると数段大人びた女性。


体の線が細く、腰部のくびれや立ち居振る舞いのしなやかさから


イチコとはまた違った雰囲気を醸し出していた。


中性的な印象さえ受ける彼女。


競泳水着のようだがおへそのあたりの布はなく、


競技水泳としての役割は低い代物だと推測できる。


若干控えめな乳房は彼女の中性ぶりをさらに引き立てるかのようだった。



「つっかかんなって、ファナーが迷惑してるぞ?」



呆れた顔のままスレンダーな彼女が忠告を投げかける。


その言葉にミオの牙と爪が収まるとまん丸い目をして蒼太の顔を覗き込んだ。



「え?迷惑ニャ?」



ミオの甘えるような視線と声は非常に愛らしく


すべてを許してしまいそうになるぐらい守ってあげたい気持ちにさせられる。


彼女は猫なで声を猫が本気で出したらこうなるを体現する。



「あは、あはは」



どちらを立てることも出来ず蒼太は


ただ乾いた笑いを浮かべ場を鎮めることに努めた。


二人に対しスレンダーの彼女はやれやれと肩をすくめ、


蒼太に一歩歩みを進めると、ミオを見やって言葉を投げる。



「ほどほどに相手してやってくれ、俺は瑠璃芭るりは。挨拶しとくか?」



先ほどの猫かぶりはどこへやらと一瞬にして身を翻し、


ミオは外敵に向かって威嚇する。


ルリハも素早く反応すると一歩あとずさり、


眼鏡のフレームに触れながらため息を零した。


犬猿の仲ならぬ犬猫の仲なのか、


水と油のようにそれら交わりにくいことが証明される。



「ミオが居ないときまでお預けだな」



再びルリハはやれやれと再びお手上げのポーズを上げ、


蒼太に聞こえる様大きな声で別れを告げる。


ルリハの後姿を見ればイチコと同じような


大型犬を思わせる紫色の尻尾が揺れていた。


そして彼女の頭には壱瑚とは違った三角形の耳がピンと立っているのが分かる。


脅威が一つ去ったことでミオは蒼太を挟んで


反対側に座るイチコに向かって相手を変えた。



「ほら、ボックスに居座るニャ!いぬは呼んでニャいニャ!」



「ひどいわん、たまには仲良くしてわん」



蒼太の左右を前、後と手が行き来する。


穏やかに過ごすというにはほど遠い有様。



ご覧いただきありがとうございます。


ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。


誤字脱字のご報告いただけると助かります。


応援していただける方は、ぜひここで☆の評価とブクマをお願いします!!

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