表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/38

26.

 

「じゃあ」


怒留湯基ノ介(ぬるゆきのすけ)は言った。


「そのなに、何か血縁で構成されている。いやそれだけではないかもしれないけれど」


数登珊牙(すとうさんが)は肯いて聞いている。


「とにかく安紫(あんじ)会は血縁が多い状態だからこそ、(くみ)として存在していてかつ仲間割れも多いとか。そういうこと?」


怒留湯は言った。


「仲間割れがあったから。頭蓋骨のDNA鑑定の結果にもつながってくる、ということか」


桶結千鉄(おけゆいちかね)も添える。


「ええ」


数登は微笑んだ。


「次」


「次がまだあるのか」


怒留湯は言った。


数登。


「ええ。次は、依杏(いあ)さんと郁伽(いくか)さんが関わった件です」


「うん。だがね、たぶんもうすぐ着く」


怒留湯は言った。

促す。


杵屋依杏(きねやいあ)の視界に入る刑事の数が、多くなってくる。


九十九(つくも)社諸君の一存の話も訊きたい。が。着くものは着くからな」







随分と(ひら)けた場所へ出た。

最初は(みち)が悪くなった。

徐々に車も不便になる。

それで五人で徒歩になった。

山道、樹木はまばらでかつ歩道のある道。

前方に開けたのは、平らに続く一帯。

数人の刑事たちが何かを引き上げている様子も、依杏の眼に映る。


怒留湯が言う。


「残念ながら犯人じゃない。だが、なんとなくもう分かったかな」


依杏と郁伽は、ただ前方を見つめている。

依杏は何も言葉が出て来ない。

怒留湯はかぶりを振って言った。


「同じ場所にあったってことだね」


「そうなります」


と桶結。


「あと、ここから先は。一応警察の管轄内」


怒留湯はそう補足した。


数登。


「ええ」


「あんたらは、ちょっとこの辺で待っていて」


「ええ」







怒留湯は、ずんずん進んで行った。

依杏の視界に、映る刑事たちの数はかなり多くなる。

恐らく、ここが怒留湯さんの()う目的地なのだ。

一帯と言っても、その一箇所に刑事さんたちが沢山居る。

「残念ながら犯人ではない」と怒留湯さんが言ったこと。

ということは要するに、大体予想はついた。

だからこそ茫然となってしまう。


何かが引き上げられた。

その時にそこへ刑事が更に群がった。

桶結は、今も数登たち三人が突っ立っている脇へいる。

怒留湯は行ったが、逆に近づいて来る者がある。

清水颯斗(しみずはやと)である。

片腕を上げている。


「清水さんが」


依杏はそう言った。


「頭蓋骨のことなんだが」


と桶結は数登へ言う。


「ええ」


「そろそろ言っても()い頃合か」


「そうですね」


依杏と郁伽は顔を見合わせる。


清水も数登と桶結たち、四人へ合流した。


「DNA鑑定の結果。九十九社が関わったという前提で話をする。安紫(あんじ)会の伊豆蔵蒼士(いずくらそうじ)のものだった。若頭(わかがしら)のだ」


桶結は言った。













一帯はおそらくとある山の、とあるエリアの一部と言ったところ。

辺りの緑は鮮やかである。

どちらかというと短い草が多い。

一帯が(ひら)けているのは元々なのか。

あるいは、後から人の手によって開けた状態になったのか。

とはいえ、山道のような状態は保たれている。

やはり山である。


数登と依杏と郁伽。

怒留湯(ぬるゆ)たちの管轄内と言われたのもあり、立ったままで居た。

だが、いつまでもその場に残っているわけにはいかなかった。

三人は警察ではない。

葬儀屋ではある。

葬儀屋が動く時は、どんな時か。

今の場合が、それに該当した。


葬儀屋と警察の共通点。

遺体に慣れているということだが、今は警察の管轄内に居るのである。

葬儀屋の管轄ではない。

捜査車両には乗った数登たち三人。

だが正式なものではない。


頭と遺体。

頭は一つ。そして身体(からだ)も一つ。

頭というのは頭部だ。

身体というのは一つの身体。

全身つながって不足のない身体である。


刑事たちの手によって引き上げられた。

依杏と郁伽が見つめていた、刑事たちが群がった場所。

その辺りは少々窪んだようになっていた。

清水と合流したあとに結局、四人でその辺りまで脚を向けることにした。

突っ立っているだけではなかった。

頭と遺体が引き上げられた。

横たえられる。

着衣はある。


一方(いっぽう)で、頭の方は頭部だ。







怒留湯は言った。


御覧(ごらん)の通り首から上だけだ。今のところ該当人物で思い当たるのは」


「頭って」


郁伽(いくか)が言った。


「頭があるかないかという話ですか。それはさっきも」


怒留湯。


「そうだ。だが入海(いりうみ)先生の自宅には、頭部はなかったがね。それで目下(もっか)。いま見ている頭を見て思いつくのは」


数登。


「ええ。例の他殺体と」


「そう。力江航靖(りきえこうせい)。それから同じ場所に、この仏さんがあるという状況だ」


怒留湯と桶結(おけゆい)は、今引き上げられた遺体へ向かって手を合わせる。


数登(すとう)は言った。


「ディアと郁伽さんは、入海暁一(いりうみあきかず)さんにお会いしたことは」


郁伽は顔を拭った。


「いえ。ありません」


「今が初めてです」


依杏と郁伽も手を合わせる。


そう。遺体で全身つながっているものは、入海暁一の身体(からだ)だった。

詳しい身元確認はまだだ。

だが依杏も郁伽もそう思ったのだろう。


清水が冷静に言う。


「亡くなったのは一日前。死因は今調査中ですが、手首に縛られた(あと)。それから脇に、一箇所刺し傷」


「なんだか首の部分にも、痕があるな」


と怒留湯。


清水。


「どちらが致命傷になったかは、今はまだ」


一方。

頭部の方は数日経っているのは明らかだった。

それを頭だと判断するのに、時間を要した。


清水。


「葬儀屋さん三人もたまたま、今ここに居る」


「私たちは怒留湯さんに、車両へ押し込まれました」


と郁伽。


怒留湯。


「分かっている。だが今このタイミングで引き上げられたのと。あんたらが居合わせたのは同時になった。葬儀屋さんは、遺体に慣れているだろう」


とは言われても、依杏はいまだに慣れない。


「遺体の身元。俺らはもう面識のある人物だから分かる。いろいろ身元を確認しなくても、あんたらだって見た瞬間にいま『入海暁一』と言った。遺体なのだから、多少人相が変わっているとかはあるかもしれない。だがね入海先生と見て間違いないだろう」


「遺体に関しては、その後の処理もいろいろある」


桶結も言った。


数登は肯く。













「死後数日だったとお聞きしました」


「そう。数日というか()三日(さんにち)しか経っていなかったんだ」


車両が変わり、今は清水が運転。


助手席は郁伽で、数登と依杏は後部座席だ。


「数日であのような白骨っていうのは珍しいな、なんて思いましたよ」


清水は言ってカーブを切る。


「頭蓋骨になるまでにも、時間は要するはずですからね」


数登。







人間の身体(からだ)だから、周辺組織と骨格と内臓等で構成されているはずである。

その骨を取り巻いているのが、肉体。

肉体や(きん)組織や内臓は、それは骨格より更に大部分を、身体を構成する要素として占めている。

と依杏は思っている。

骨格を取り巻くもの。

それの形成というか、肉体部分は時間が掛かって構成されたものである。

頭蓋骨。

数登が土から掘り起こしたものだが、土へ埋まっている間に組織と骨格に微生物が作用するとして。

組織の部分を、少しずつ侵食する程度に過ぎないはずだった。

二、三日であれば。


「そう。数日というのは珍しいんだ。あれはフネが鑑定したものだよ」


告船(つがふね)さんですね」


「そうだ」


「先程、ディアが途中で言いそびれたことがあります」


依杏(いあ)


「ええと、さっき途中で出した資料のことですよね」


西耒路(さいらいじ)署に居て、捜査車両に押し込まれる前の段階での話よね」


と郁伽。


「そう。ちょっと前後しちゃいますけれど」


と数登へ。


「ええ」


「いま怒留湯さんたちと居た所の件もあるし」


郁伽は顔をしかめた。


依杏は俯いた。







依杏には、清水が以前言っていた「正体不明」について考えていたこと。

それが、自身の頭の中で形をとりつつある。

その頭の中で形を取りつつあったものと、遺体。

入海のあの状態を見ては、打撃が大きい。

入海は一体、(なん)のためにあのようなことに?

それもきっと何か原因があったからである。

それは分かっている。


何もなしに、家の中を荒らされる。

突然どこかの誰かに連れ去られる。

そして今見たように、刑事たちの手で横たえられる状況になる。

通常の生活を送っていて朝から夜まで、例えば入海の場合であれば。

整形外科の医師として診察室その他でカルテを書く。

その他部署とか、看護師さんの連絡事項。

その他突然の学会。

手術への呼び出し。

患者への対応。

そして帰宅する。

その中で通常でないことが起きるっていうのは、何か原因がない限り起こり得ないものである。

と依杏は思う。







清水は依杏(いあ)へ言った。


杵屋(きねや)さんは何か、劒物(けんもつ)大学病院へ尋ねに行ったそうだと」


依杏は言われて顔を上げる。

少々顔を伏せていた。


今は後部座席。

数登は助手席。依杏と郁伽は後部座席に居る。

依杏の眼に映ったのは、清水の後頭部。


「資料って言うのは、その病院の件についてなのか」


「ええと大体合っています」


と郁伽。


更に依杏を見て言った。


「あたしたちの行った裏からの正面突破。その話の続きは中断したまま。内容は話せる状態にはあるかしら」


「あ、それは話せますけれど。でも」


依杏はまた俯いた。


「今のような場合。大丈夫でしょうか」


「いま怒留湯さんやその他の刑事さん。その他大勢の方々は現場に残っているし。うちの社の方でもいろいろが終わったら、清水さんに話すのもそうだけれど。私も一緒に病院へ行ったとはいえ、詳しくは聞いていないし」


依杏は肯いた。







入海と同じ場所で見つかった頭部。

今はまだ頭部が見つかった、という段階に過ぎない。

調査も何も始まっていないし。

その他鑑定だってこれから始まる形になる。

だが発見された、全身つながった遺体が五人して入海であると見て取ったように、頭部もまたある程度の予想は立てられていた。


頭部と言って連想出来たのは、逆に頭部のない遺体である。

意図的に切られていたとみて、違いないだろうという見解。

清水たちが、安紫(あんじ)会から武器を押収して切り口を見ていた遺体だ。

阿麻橘(あおきつ)組の力江航靖(りきえこうせい)である可能性が濃い。

そう怒留湯(ぬるゆ)も見ていたようで。







軸丸(じくまる)さんのお話は参考になりました」


数登は言った。


(なん)の話」


清水はきょとんとしている。


「死後二、三日であるという点についてです」


「なんだかまた話が飛ぶようだね」


「ええ」













西耒路(さいらいじ)署で行われる作業の量、圧倒的に増えた。

遺体が発見されたことによる。

手配するものが多いのだ。

そこは葬儀屋、九十九社は遺体方面では動きやすい。

自然、西耒路署が手一杯であるところを埋める形で動くことになった。

最初は数登と依杏と郁伽の三人だ。

入海(いりうみ)の発見された現場に直接居たからである。

そのうちに、九十九社からの人数も、署の方へ回されて増えるのかもしれない。


西耒路署としては検死から解剖から身元の改めての調査から。

その他現場に関する事項。

入海の自宅への捜査を増やす。

証拠採集。誰かの目撃証言。誰が犯人か。動機は何か。

様々集めて組み立てるのに動き回る捜査員。


いまの段階で「入海」だと断言したものの、それは五人だけだった。

正式な身元確認はまだである。

遺体方面については、九十九社の方で正式にいくつか請け負うことも出来た。


夜になった。

慌ただしく動き回り、時間が過ぎる。

自然に空は暗くなる。







「抗争のことになってから、その後。いろいろありました。私はまず、安紫会の事務所へ珊牙(さんが)さんと行く、ってことになりました」


「任意でよかったんです」


数登(すとう)は言って微笑む。


「任意じゃないですよ! 一緒に行ってくれって言ったじゃありません」


少々むくれる依杏(いあ)


「で、安紫会です。組事務所だから、正直どうしようってなっていました」


「動揺していたのは分かります」


「分かっていたんですか」


「ええ」







数登と依杏、それから郁伽(いくか)と清水の四人。


西耒路署内五階に、テーブルを囲むことの出来るスペースがある。

自動販売機は二台置かれている。

あまり糖分の多い飲料が入っていない。

捜査で動くために気を(つか)って、飲料配分が行われているのかもしれない。


全面ガラス張りになった窓。

そこから署に面する街の様子を見渡せる。

五階以上ある建物に関しては上空へ伸びていく、その建物の途中部分。

それが窓から見えることになる。

今は夜だ。

夜の空や暗さを反射して、どのビルの窓も暗く見えている。

一方このスペースの照明は明るい。

だからもしかすると反対側のビルから、明るく見えているかもしれない。

とか依杏は思う。







依杏は続けた。


「私は珊牙さんにガサ入れを、誘われたんです」


「ええ。分かっています」


「私は行っていない」


郁伽は真面目に言った。


依杏はなんだか肩の力が抜けてしまった。

一旦息をつく。


「少し話を戻して()いですか」


「ええどうぞ」


と三人。


依杏は姿勢を正してノートパソコンを取り出す。


「正直、事務所だからどうしようって。珊牙さんの()うように動揺していました。直参(じきさん)とか直系(ちょっけい)とかいろいろあたし、調べていたんです」


「あのね、その話はちょっと脇へ置いておこう。直参はこの場にはいないよ」


郁伽はツッコんだ。


依杏。


「分かっています」


()れている」


「じゃあ本題行きます」


と依杏。


「で、私は動揺したから動揺したなりに。何もしないわけにはいかなかったんです」


「何かしていたのですか」


数登は言って眼をぱちくりした。


「何かしていたというか。珊牙さんは九十九社なのにガサ入れだとか、いろいろ首突っ込むんです。だからあたしも考えたんです。ただついて行ったわけじゃない」


三人は顔を見合わせた。


「いろいろ自分なりに準備していました」


「それはさ」


郁伽が苦笑して言った。


「過去に珊牙さんと一緒に受けた、九十九(つくも)社で受けた依頼に関する経験則(けいけんそく)から来る行動ね」


「そうかもしれません!」


依杏はノートパソコンを開く。


「そんな感じです。たぶん。で、準備っていうのはスマホをオンにして収拾したこと、です」







収拾したデータは、郁伽が言うように「裏からの正面突破」によって、既に劒物大学病院へいくつか渡してある。

データ解析中だ。

大きな欠損はないデータの数々。

ただ入海の遺体その他のことで、時間は過ぎた。

依杏はまだ、資料を解析してもらっている研究室から連絡をもらっているかどうか、確認をしていなかった。


そして今である。


「さっき、珊牙さんが云っていたような。西耒路署と、どこか機関の連携とか。西耒路署と七日生(ななせ)さん宅の連携とか。そういう話はうちの九十九社にはない」


(なん)(はなし)だい」


清水は眼をぱちくりした。


「いや、とりあえず私の話は置いてください」


依杏は赤くなる。


「それで」


依杏。


「置いておきますが、あらかじめ私が準備して。安紫会の事務所で収拾しておいた情報。今それは劒物大学病院さんの方で解析していただいています。そして、その解析結果がどんなものかなあっていうの、ちょっと予想してみたりして」


「正式な結果についてはまだ、だものね」


と郁伽。


依杏。


「そうです。それで、どんなところに収拾したものを回したかっていうと、聴覚分野で」


「ほう」


と清水。


依杏。


「たぶん、私と珊牙さんが安紫会の事務所へ行ったことが、展開を変えてしまったのではないかと」


(なに)それ」


郁伽は眼をぱちくり。


「どういう意味よ」


「郁伽先輩が来ていても、同じだったかもしれません」


「そんなこと言われても、猶更(なおさら)分からないだけだ」


「郁伽先輩は七日生さんからの依頼の件。なくし(もの)が盗難だったとすれば。それには女性が関わっているかもって云っていた」


清水は郁伽を見た。


依杏は続ける。


「安紫会の事務所に、私たちが行かなかったとすれば。展開はもう少し違ったのかもしれません」


「その展開というのは、どういうことだい」


「企画動画のブラックアウトがあったこと。そして事務所でも盗難が起こったこと。いえ、盗難というよりまた、少し違うのかもしれません」


依杏はノートパソコンの画面にファイルを、一つ一つ並べていった。


雑音が多い中で、飛び交う会話。


「音声ファイルのようだね」


と清水。


依杏。


「そうです」


「全体的に事務所の音を録音していたってことで、収拾」


と郁伽。


「今の音声ファイルの他にもあります。いくつか収拾しました。いま劒物(けんもつ)大学病院の先生に解析していただいて結果待ちです」


「予想というのはどういうこと? その解析結果を予想したということかい」


清水が言った。


「それもありますけれど」


と依杏。


「展開が違う場合もあったと考えるなら、杵屋さんとしてはどう展開したと思う?」


「企画動画がブラックアウトする、展開は起らなかったかもしれない」


「ふむ」


清水は言って画面を見つめる。


「医師の(かた)にお願いして、今出しているこれについては聴覚の分野だったのですが。例えば音声の復調です」


「そうだね」


清水はファイルを見て言った。


「スマホの録音ということは。何か破損は?」


「それについては大きな欠損はなくて」


「なるほど。ただね、電子機器で収拾する音というのには限界があるんだよ。だから、スマホの音そのままで解析するってのは難しいかもしれない。それで復調ということ?」


依杏はポカンとした。


「ええと、よく分からないんですが」


「分かんないの」


郁伽はツッコんだ。


依杏。


「ええと、とりあえず復調、その後に解析という感じです。その、何故展開が違ったかというか。郁伽先輩の話や清水さんたち鑑識さんの、お話を考え合わせるに」


「確か、安紫会の事務所で起きたことについて。いろんなことが意図的に起こされたんじゃないか。っていう話をしたわよね」


郁伽が言った。


依杏は肯く。


「しました。あたしもガサ入れに行くのは怖かったんです。でも事務所で流すっていう企画動画には興味がありました。意図的にってことは、そこに誰かの都合とか考えがある」


「庭にあったコードも切られていたっていうし。意図的に」


清水が郁伽に言う。


「よく知っているな」


郁伽は苦笑した。


依杏は続ける。


「動画が途中で中断したのなら。中断させずに、そのまま流れていたという展開もあったかもしれません」


「意図的な作用が、何もなかったらね」


「動画が流れていたら都合が悪かった。意図的としてはそのように感じました」


数登もノートパソコンの画面をのぞき込んだ。


「正式な結果はまだですけれど。行った研究室の(かた)に教えてもらったことがあります。いま出しているのは解析が終わった後の、サンプル画面です。あらかじめ、それをもらっておきました」


数登。


「認証システムのレベルは各段に、上がって来ていると」


依杏は肯く。


「私の収拾したものでも、認証システムは動いた感じです」


「そうか」


と清水。


数登。


「なるほど」


「ただ、収拾出来るものというのは。あくまでも外部のものです」


依杏は言い添える。


「あくまで外部のもの」


と郁伽。


依杏は言う。


「その出処(でどころ)というのは、その元というのは変化のしようがない」


「ふむ?」


と郁伽は依杏へ言った。


数登と郁伽は顔を見合わせた。


「例えば、今回のような場合です。企画動画の場合」


「動画は配信されたものでしょう」


と郁伽。


依杏。


「動画は配信されたものです。仮に事務所で動画がブラックアウトしても、動画の配信元がブラックアウトのようになっているとは考えにくいんです」


「そりゃそうね」


郁伽は肯いた。


「劒物大学病院で解析していただいているものは全て、外側を伝って私のスマホへ記録されたものです」


「うん」


「ですがその収拾するための音になった部分の出処は、出処(でどころ)なので変化のしようがない」


「なるほど」


と数登。


「つまり、例えば人からの音声で言えば喉」


「はい」


依杏は肯いた。


「専門用語で言うなら、声紋です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ