指輪
「美里ちゃん、誕生日欲しいものある?」
僕が聞くと、美里ちゃんはしばらく押し黙って考え込んでいた。
「ある……けれど高いよ」
「えー」
「偽物なら或いは」
「偽物があるの?」
「昨今の技術力の高さを知らないな〜」
「知らん知らん」
美里ちゃんはメガネを人差し指で押し上げながら、僕にレクチャーした。
本物の金やプラチナの指輪は何万円もするけれど、合金だと2、3百円で買える!最近ではサージカルステンレスのが良い!
「あとはデザイン次第ねー」
「どんなのがいいの?」
「ラインストーンがついてるのがいいわ」
「ふむふむ」
「四つ葉のクローバー、っぽいのとかいいなー」
果たしてそういう物体はこの世に存在するのだろうか?
僕は汗ジトでスマホで検索をかける。
「ステンレスの奴でそれっぽいのあるけど、サージカルステンレスって表記はないなぁ」
まだ技術はそこまで発展していないのか?!
それに、サイトによって値段がピンキリ。美里ちゃんは2、3百円って言っていたからそう言うのにしとこう。
昭和生まれのおばちゃんが、便利な世の中になったもんだ、とぶつくさ言っていた。
ボールペンのデザイン一つにしても、多種多様ですごいって。