表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Clergy Madness~聖職者の狂気~

作者: mutto

「行ってくるよ、父さん。ほらみんな行くぞ!!」


 「「「はーい」」」


 「気を付けていっておいで。暗くなる前に帰るんだよ」


そういって子供たちは元気に教会の外に走り出していく。この教会の神父であるテオ・フィスルは親に捨てられた子や病気や魔物などに襲われ幼ない内に親を亡くしてしまった子供たちを引き取り、自分の本当の子のように育てていた。そんな子供たちもすくすくと育ち一番の年長者であるトムはもう今年で8歳だ。彼が、親に捨てられて教会に来たときは彼の年齢は3歳であったのでもうそれから5年も経つのかとテオは少し感慨深い気分だった。

 子供たちが遊びに行くのを見送るといつも通り、テオは神に祈りを捧げるために、教会の中に入っていく。


 「なんだあれ?」


 何か黒い羽根のようなものが、教会の長いすが挟んだ通路の真ん中に落ちている。それを拾い上げると光が全く反射しない吸い込まれるよう漆黒の羽根だった。すると突然バサバサという音とともに、黒い鳥が飛び立って行った。


 「カラスか...どこから入ったんだろう?」


 そんなことを思いつつ、教会の掃除を隅から隅までこなし、指を組んで片膝をつき祈りを捧げる。26歳になるテオも15歳からこのような日々を送っているので、慣れたものだった。

 それからほどなくして、町の人々がお祈りをするためにぼちぼち教会に現れ始めた。

 その間テオは、講壇に立ち聖書を人々に読み聞かせる。全章とはいかないが2,3章くらい読み終わるとどんなに祈りの長い人でもそろそろと教会を出ていく。全章読み終わるころには日は傾きだし、教会に町の人はいなくなり、テオだけになっていた。

 「そろそろ、子供たちがかえって来るな...今日は何にしようか」


 夕食の献立をぱっと決め、夕食を作って子供たちを待とうと考えていると、やけに外が騒がしいことにテオは気が付いた。

 町の人々は何か慌てた様子で何やら物々しい感じだ。どうやらかなり多くの魔物が出たらしく、町の冒険者たちは総出で対応するらしい。

 魔物は魔に取りつかれた動物たちのことを言い、普通の動物たちの何倍も力があり、何十倍も気性が荒い。

 そうなるとテオは、まだ帰ってきていない子供たちが、魔物たちに襲われていないか不安になってきていた。町の周りには防護壁があるとは言えそこまで丈夫なものではないので、いつ破られてもおかしくない。

 探しに行こうかと迷っていると、トムを除いた子供たちが走って帰ってきた。


 「お前たち、大丈夫か?けがはしてないか?」


するとトムの次に年長者のミラが、


 「冒険者の人達が守ってくれたの!!」


そう元気に答えるので、安心した気持ちと同時にそんなに魔物の近くにいたのかという恐怖にも似た不安で卒倒しそうになった。

 「それでトムは?」


ミラがあまりにも元気なのでトムが死んでいたり、けがをしていることはないだろうと思いつつテオはミラに問う。


 「冒険者がかっこいいからもっと近くでみてみたいって...止めたけど全然いうこと聞いてくれなかったよ」


 少し頬を膨らませながら言うミラの頭を撫でつつ、

 「そうか、じゃあ家に入ってなさい。外は危険だからね。私が帰ってくるまでおとなしくしていなさい」

 子供たちを教会の中に入らせ、冒険者の近くにいるというトムを連れ戻すためにテオは防護壁の近くに向かって行く。

 いつもなら夕方の今頃は、狩りを終えた冒険者や、仕事を終えた人々が酒場で騒いだりしているのだが、今は人がほとんどおらず、いたとしても剣や杖を携えた冒険者たちばかりだ。

 防護壁に近づくにつれだんだんと魔物達の咆哮と人間達の怒号が聞こえてくる。

 本当にトムは無事でいるのだろうかと心配になる気持ちが抑えられなくなってきたテオは、トムの名前を叫びながら走り出す。


 「おーい、トムー。いるなら出てきてくれー」


走りながら何度か叫んでいると、防護壁の門まで来てしまっていた。慌てた様子で何の装備もなしに走ってきたテオを見て不審に思った冒険者が話しかけてきた。


 「どうした?ここも安全じゃない。早く非難しな」


 「トムを、トムを見ませんでしたか?これくらいの小さな男の子です」


そういってテオは自分の胸のあたりに手を持ってくる。


 「見てな、いや...四半刻前くらいにここにいた気がするな」


 それではトムは冒険者を見るために門の外に出たのではないか、そんな考えがテオの頭を過ったとき、


 「父さん、なんでこんなところにいるの?」


とトムが後ろからいつもの調子で話しかけてきた。


 「トム!!ああ、よかった無事だったんだな。早く家に帰ろう。みんなも待ってる。


 勢いよくテオが抱き着くと、トムは少し鬱陶しそうに、

「大げさだなぁ、痛いよ父さん。早く帰ろう」

と言った。


 教会に帰ると、ミラがほかの子供たちと一緒に食事の準備をしていた。いつもならこの時間帯にはテオが準備した食事をとっているので、子供たちが食事を作ることはほとんどなくあったとしてもミラを筆頭に女の子たちが手伝ってくれるくらいだ。一から準備なんてしたことは、ないだろうにとテオは子供たちの成長を見ているようで、少し涙が出そうになった。


 「早く席について、父さん、トム兄さん」


子供たちはよほどお腹が空いているのか、体が前のめりになっている子もいる。


 「そうだな、よしトム座りなさい。お祈りをしようか」


 そういってトムを席に着かせ、子供たちとテオ全員で指を組み、神に感謝の言葉を捧げる。


 「さあ、みんないただこうか」


祈りが終わり、テオのその言葉を待ってましたと言わんばかりに、子供たちは食事に食らいつく。その様子にテオは苦笑しつつ、魔物が襲ってきて不安な状況ではあるが、豪勢ではないが、つつましい食事を家族でとれることに神に感謝した。いくら魔物でもこの町の鍛え上げられた冒険者にかかればなんとかなるだろうとその夜のテオはそう考えていた。


///////////////////////////////////////


 次の日、テオは魔物の咆哮とともに飛び起きた。昨日は、門の近くまで行かなければ聞こえなかった魔物たちの声が教会からでも聞こえてくることに違和感を感じ、急いで教会の外に出る。すると町の人々は村の中心に向かって急いで逃げているように見える。

 もしやと思い、テオは、近くを走っている男に話しかけた。


 「いったいどうしたんです。そんなに急いで。まさか...」

と話を続けようとしたが、

 「魔物たちが門を破ってきたんだ!!もう冒険者たちも長いことはもたねぇ。神父さんもわるいことはいわねぇ早く子供たち連れて逃げろ!!」


と半ば叫び声にも聞こえるような必死の声で言い終えると、すぐさま逃げていった。

 テオは子供たちだけでも逃がさねば、と思い急いで子供たちを起こす。


 「トム、魔物たちが門を破ってきたそうだ。子供たちの中でトムが一番の年長者だ。君がしっかり子供たちをまとめて逃げるんだ」


 テオがそういうと、

 「父さんも逃げるでしょ?」

とミラが言ってきた。テオも逃げ切れるならもちろん逃げたい。だが、先ほどの男の言葉を信じるなら、子供たちと一緒に逃げてもここにいてもどちらにせよ魔物たちに殺されてしまうだろう。


 「いや、私はここですべての人が助かるように神に祈ることにする。トムみんなを頼んだ」


 「...わかったよ、父さん。また後で。ミラ行くよ」


 「いやだ、いやだ。父さんも一緒に逃げようよ!」


 そういいながらトムに連れていかれるミラと子供たちを見ながら、テオは教会の中に入っていく。そして指を組み、膝をつき、祈る。

 どうか、子供たちを、町の人々をお守りください。テオは心の中でひたすら祈った。

 どれだけ時間がたっただろうか。朝方より魔物の声がさらに近づいてきたように感じる。もう時間がない。やはり神はいないのか、そう思い手を組むのをやめると、バサッと何か羽ばたくような音が聞こえた。

 そこには、伝承に伝わる悪しきもの、悪魔の姿がそこにはあった。教会に伝わっている醜い姿ではない、むしろ人間に近い姿をしていると言っていいだろう。だが、悪魔とはっきりとわかるのはその邪悪なオーラと背中に、吸い込まれそうな漆黒の翼が生えているからだ。


 「ようやく、神なんていないことに気が付いたか、テオ?祈っても救ってなんかくれないんだよ」


 テオの心の中を見透かすようにその悪魔はそういった。


 「そ、そんなはずないだろ。それになぜ、私の名前を...」


 「じゃあ、なぜ祈るのやめた?神に祈れば救われるかもしれないぞ?それに何故おまえの名前を知っているかって?それはな...」


と悪魔が言いかけたとき、教会のドアがダァァァンと大きな音を立て始めた。どうやらもう魔物たちがここまで迫ってきたらしい。


 「時間がないな。テオ、俺と契約しろ。そうすれば、ここの子供たちも町の人々も救える。いいことづくめだろ?」

 子供たちも町の人々も救える。その言葉に揺れかけたテオだが、悪魔との契約には死より残酷な代償を払う必要があると伝わっている。それでも子供たちを救えるなら..


 「対価はなんだ...」


 そうテオがい言うと悪魔は笑いながら、


 「お前もなかなか目ざといなテオ。そうだな...対価はお前の寿命30年だ。今回はそれだけでいいだろう」

そう言った。

 テオはそんなはずない、悪魔との契約は自分の大切な人や、最低でも自分の命は取っていく。なのに、寿命30年だなんて、おかしい。そう思っているとそれを見透かしたように、

 「おいおい、そんなに警戒するなよ。お前の子供たちの魂を取って食おうなんてかんがえてねぇよ。

今、この町には絶望が満ち溢れている。俺たち悪魔は、人の絶望を糧にして生きているんだ。だから自分の命より大切なものを契約の代償としてうばってやるのさ。だから、絶望が満ち溢れているのにそんなに代償とっても意味ないだろ?」

と言う。

 そういわれればそう感じるが、悪魔を信用はできない。これは刷り込みにも近い教会の人間のおきてだった。

 そうこうしているうち魔物たちは教会のドアを壊して入ってきたようで、魔物のハァハァという息遣いが、静かな教会に響くため、すぐそばにいるような絶望に近い恐怖を感じる。


 「なぁ、テオ。お前が感じているその恐怖、今この瞬間、子供たちが味わっているかもしれなぞ?もしかしたら今頃もう...なんてな!」


 そう嗤う悪魔にテオは苛立ちより更なる恐怖を感じる。狂っている。それに恐怖しているのもある。それよりもテオ自身も契約を交わすしか方法がない、そう思っている自身に恐怖しているのだ。

 幼いころから刷り込まれた教えを必要に迫られているとはいえ、死んでも交わすなと言われている契約をかわそうとしている自分は、いったいどうしてしまったのかと。


 「もたもたしていると子供たちも食われちまうぞ?きゃー父さん助けてー、てな。いいのか?このままだとお前も死んじまうぞ?」


 そう急かす悪魔。テオももう冷静な判断は下せなくなっていた。


 「契約する。早くしてくれ...」


 そう気力のない声でテオは言う。悪魔は待ってましたと言わんばかりの笑顔で嗤う。


 「ああ!では、さっそく。汝、このサタンに代償を払い、契約を結ぶか?」


 その問いにテオは間髪入れず、


 「ああ」


と答える。

 すると、悪魔は先ほどの笑顔よりもっと凶悪な笑顔を浮かべ、

 「契約は今成った。汝に、人外の力と狂気を!!」

 そういうとテオの体から赤黒い何かが出たかと思うと、

 「あは、あははははははは」

と狂ったような笑い声が聞こえてくる。悪魔が笑っているのかと思いその方向を向くが、悪魔は口角を釣り上げているだけで声は出していない。

 じゃあ誰が?そうテオが思っていると、

 「いい笑い声だな。それは狂気だ、テオ。お前は今まで持ち合わせたことのないような殺戮衝動に駆られる。大丈夫だ、人間は対象外にしておいてやった。手始めにそこの魔物でその力を試せよ」

と言う。

 まさか自分がこんな笑い声をあげているとは思わなかったテオは驚きつつ、笑い声のせいで魔物たちに気づかれてしまったと魔物たちの方に向き変える。

 しかし、今まで感じていた恐怖はなく、なぜか無性に魔物たちの血が見たくなった。血が見たい。その一心で魔物に飛び掛かる。5メートルほど離れた位置に魔物たちはいたのだが、テオの今のスピードでは、その距離を詰めるのに1秒もかからない。まさに人外である。

 魔物たちは自分たちの反射神経の認識外での攻撃に対応できるはずもなく、頭上から振り下ろされた拳になすすべもなく頭蓋骨を粉砕される。周りにいた魔物たちもそれを見て怯えたのか腰が引けている。それを見たテオは嗤っていた。これまでにない感情の昂ぶりに、テオは快感を覚え始めた。それから残りの魔物たちをすべて殺すために横なぎに蹴りを放つ。二体まとめて蹴り飛ばし、両手で二体の頭を地面に叩きつけた。

 教会内の魔物たちを一掃したので、テオは悪魔の方を振り返ったが、もうそこには悪魔はいなかった。


///////////////////////////


 「おい、神父さんよ!なんでこんなとこにいんだよ。早く逃げろ!」


 そう必死に一人の冒険者がテオに言うが、テオはその言葉を待ったく聞かず、どんどん門に近づいていく。ここに来る道中に魔物を倒してはいたが、それを見ていない冒険者はこんな何の装備もしていないただの神父では魔物に殺されるのが目に見えているといった感じだ。その実、目の前にいる神父は先ほど悪魔と契約を交わし、自分よりも何千倍も強いというのに。

 何度も忠告され、鬱陶しくなってきたテオは、その冒険者の鳩尾を殴りつけ、気絶させた。そして剣も拝借しておく。テオは剣など使ったことはないが、拳より血が出やすい剣を使えばもっと血が見れると、今のテオの顔は見たら人はその狂気に2,3歩後ずさりしそうな顔をしている。

 門を出ると冒険者のほとんどが疲れ果てているようで、押されているどころかところどころから、魔物がすり抜けて町に入っている。その町に入ろうとしている魔物を横目で見つつ切り殺し、どんどん前線に出ていく。冒険者はテオの姿を見ると門の中に戻すために声をかけようとするが、自分のことで手一杯であるため声をかけられず、その間にテオが切り殺していく魔物を見て、止めることをやめるのだ。

 テオがようやく最前線に出ると、そこにはひときわ大きい個体の魔物が存在感をはなっていた。この群れのリーダーなのか、周りにはその個体ほどではないが、比較的大きな個体が何体も見える。それを見たテオは恍惚の表情を浮かべる。

 テオはリーダーの集団に弾丸のように突っ込んでいく。それに反応できなかった。周りの魔物はテオの剣が横なぎに振られた瞬間に噴水のように血を出しながら、倒れていく。あまりのテオの強さにリーダーも恐れをなしたのか大きな叫び声をあげる。

 すると、今まで冒険者に向かっていたはずの魔物たちが、どんどんテオの方に向かってくる。その間にリーダーは後退していき、かなり遠くに離れてしまった。それからは、ひたすらテオは魔物を狩っていた。殺しても殺してもやってくる魔物たちを笑顔で切り刻むテオ。その様子に今まで魔物と戦っていた冒険者たちは自分達が助かったという気持ちと同時に、魔物より魔物らしいテオに恐怖を覚えていた。

 一振り剣を振れば、そこ一帯の魔物たちの首が飛ぶ。テオの全身とその周辺は血で真っ赤に染まっていた。そして誰かが言った。「悪魔だ...」と。それからほどなくして、リーダーとその周辺の個体以外の魔物を狩りつくしたテオは、笑顔でリーダーのもとに向かう。

 怯えて動かない個体を一振りずつで殺していき、リーダーの前までたどり着く。

 「やあ!ずいぶん君の下っ端にたのしませてもらったよ。君も楽しませてくれるよね!」

そう笑顔で言うテオには以前までの人格が嘘かのような、狂気的で残忍な人格が形成されていた。

 追い詰められたリーダーは決しの覚悟で、テオを確実に殺すために首にかみつきにかかる。それをテオはサイドステップで少し横に躱し、顎から頭の上まで剣で貫通させる。あっけない終わり。だが、人間を超えた動きを人間の身で行ったつけか、テオは次の瞬間地面に倒れ伏した。

 体がいうことを聞かない。そのままテオは嗤った。そして気を失うまで笑い続けた。


///////////////////////////////////


 テオが目を覚ますと、町の人々の姿が目に見える。よかった。みんなをちゃんと助けられたのか。そうテオは思った。魔物と相手していた時の記憶はあいまいだが、まるで自分の中に別の何かがいるかのような、そんな感じだった。

 結果的にみんなを救えたことに安堵したテオは、人々の中に子供たちを見つけると、そちらに向かおうとして、動こうとすると体が動かないことに気が付いた。下を見てみると、足が地面に打ち立てられた杭に縛りつけられ、手は杭の後ろで縛られているようだ。どうしてこんなことをするのか、そう言おうとするが、声が出ない。喉もつぶされているようだ。

 「これより、悪魔と契約を交わした罪でテオ・フィルスを火炙りの刑に処す」

声のしたほうへ、顔を向けるとそこには教会関係者と思われる服装をした、聖職者がいた。確かに悪魔とは契約したし、こうなるのも仕方ないかと、テオは思った。それでも子供たちや町の人々を守ることができてよかった、後悔はしていないとテオは思っていた。

 しかし、その人々の方を向くと、全員テオを見て恐怖の表情を浮かべている。なんで、なんでそんな顔するんだ?確かに恐れられるようなことをしたかもしれない。それでもテオは、彼らを救ったのだ。

 「司祭様、早くその悪魔を焼いてください。俺はあの日のこいつの表情を思い出すだけで夜も眠れないんです」

 そういって助けたはずの冒険者が聖職者に向かって言うのだ。テオは、それを聞いて悲しくなった。人々を守るために苦渋の決断で契約を結んだのに、そんなことを言われてしまっては、自分の気持ちが報われない、テオはそう思った。

 さっきの冒険者に続いて人々から心無い言葉がどんどんテオに向かって放たれる。テオは顔を上げることをやめた。どうせ火に焼かれて死ぬのだ。もう何も考えないようにしようとそう思ったのだ。だが、最後に子供たちの顔を見ようと顔を上げると、そこにはテオは恐怖したような顔で見つめる子供たちしかそこにはいなかったのだ。今まで父として慕ってくれていた子供たちはそれが嘘だったかのようにテオを恐怖の対象として見ていたのだ。

 それに気づいたテオは絶望した。そして考えることをやめた。


 「それでは火を放て」


聖職者の一言で、町の人々がテオのしたにあるわらに火を放つ。徐々に燃えていく自分の体を見てテオは最後に悪魔のような嗤いを見せた。それはすべてに絶望した時の嗤いだった。


 「父さん、簡単に悪魔何て信じちゃだめだよ」


 「どうしたの?トム早く家に帰ろ?」


 「ああ、そうだな」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ