プロローグ
今日……俺の親友は息を引き取った……。
事故だった。
普段通りに下校し、変哲知らずの帰り道を、これまたいつもと変わらぬ感覚で、帰路に着いている途中……それは起こった。
居眠り運転をしていたトラックが赤信号を無視して交差点へと侵入。
普段であれば直ぐに気付いたのだろう親友は……しかし、その時に限っては、何か思い悩む様な表情を作り、トラックの存在に気付いていなかった。
物凄い勢いで突っ込んで来たトラックは親友をアッサリと吹き飛ばし……その命を無残にも奪って行った。
……即死だった。
唯一の救いは……親友が苦しむ事なく死ねた事だろうか?
実際、苦しむ事はなかったと思う。
それだけ一瞬の出来事だった。
数日後、俺は親友の葬式へと足を運んだ。
眼前には、親友の遺影が飾られた……良く見る葬式の様子が映っていた。
おおよそ、現実とは思えない光景だ。
数日前までは元気に笑っていたんだぞ?
それが……そうだと言うのに、どうしてこんな事になるんだ?
もしかしたら、自分を騙そうとする、大掛かりなドッキリなんじゃないのか?……そんな、有りもしない妄想まで、自分の中に生まれてしまった程だ。
親友……田中庄司は、俺にとって唯一無二の親友にして、高二となる今の今まで続いた、無駄に長い腐れ縁の幼馴染でもあった。
本当に、今思っても良くこんな状態が続いた物だと思ってしまう。
少なからず、高校は別になると思っていたよ。
だって、庄司は絵に書いた様な優等生だったからさ?
学力旺盛、品行方正、文武両道!
天は二物を与えないとか言うけど、あれは嘘だと思う。
俺が知る限り、庄司は天から二物も三物も与えられていたんじゃないのかな……はは、羨ましい限りだ。
他方の自分は……ハッキリ言って、個性皆無の隠キャ男だ。
今にしても思うよ。
庄司の様な、全てに置いて恵まれている様なヤツが、死ぬその時まで俺の様な個性のない隠キャと親友であってくれた事は、とんでもない幸運であり、奇跡だったな?……ってさ?
同時に感謝したい程だった。
成績は平凡、運動神経もなく……顔もパッとしない上に、特技と言う特技もない、冴えない男の、見本の様な自分と親友でいてくれた事に。
俺の事を、誰よりも理解してくれた……親友であった事に。
そんな庄司の遺影が眼前にあった時、俺の心にポッカリと穴が空いたかの様な? 名状し難い喪失感と無力感で一杯になってしまった。