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野人転生コミカライズ記念エッセイ「コミカライズして気付いたこと」

作者: 野人

活動報告に書こうか迷ったのですが、エッセイにして投稿しました。

 私は以前、エッセイで小説のイラストにおかしいものが多い、もっと作品を愛せ! というエッセイを投稿しました。


 そのエッセイに寄せられた感想の返信に、作中に書いてあるキャラクター描写と実際のイラストが違うのは良くないよね。そう書きました。


 しかし、コミカライズ版野人転生の主人公は作中のイメージとは違う感じになっています。


 作中の野人は慎重系脳筋という面倒くさい感じのおっさん。コミカライズ版の野人は、ワイルドで生命力に溢れている、いい意味で漫画の主人公っぽい感じになっています。


 前に言っていたことと違うじゃねぇか! ダブスタか、野人この野郎! そう思われる方もおられるでしょう。実際そう思われても仕方ないと思います。


 ですが、私なりに理由があってそうしました。


 言い訳乙と思われるかもしれませんが、なぜそうなったかの経緯を説明したいと思います。


 書籍化を飛ばしていきなりコミカライズ。そんな、稀有な経験をした私の驚きや発見、それをエッセイで伝えられたらと思います。



 野人転生に書籍化の打診が来たことはありません。私も、金を取れるクオリティの文章じゃないと思っています。最近は多少マシになっていますが……。


 もちろん、内容に関しては自信があります。自分が面白いと思ってもいない作品を投稿などしません。他の人がどう思おうと、内容には自信があります。


 その内容の値段だと思えば、書籍化もありかな? とは思いますが、小学生の読書感想文レベルの文章300ページで1300円を取れるのか? と言われるとプレッシャーで胃に穴が開きそうになるので、難しいところです。


 色々な偶然が重なって日刊ランキングに入ったけど、書籍化なんてむりむり。なろうを読み始める切っ掛けになったスラ転様(当時はアニメ化で話題になり、ポイントが伸びて日刊上位に来ていた)とランキングで並べただけで満足。超いい思い出になった。


 そんな風に思っていました。


 何時も通りなろうのホーム画面を開くと、運営様からのメッセージ。


 やべぇ、何かやらかしたか? ドキドキしながら内容を確認すると、コミカライズの打診でした。


 それから電撃大王コミックの編集様とお話をさせて頂き、ネットで情報を収集してからコミカライズのお話を受けさせて頂くことにしました。


 野人! 金に目がくらんだか? そう思われる方もおられるでしょう。


 そんなことはありません、ネットで検索してもらえれば分かるのですが、コミカライズはあまりお金になりません。


 原作者がコミカライズする利点は宣伝効果があり、原作が売れるという部分がでかいと思います。コミカライズだけで収益をあげようとすると、重版連発でかなりの部数売れないと大金と呼ばれる額にはならないです。


 それ以前に、単行本が出るかも分からないんですよね。アンケートが悪いと打ち切りになると思いますから。


 今回、コミカライズの打診が来たのは、電撃大王25周年記念の新連載ラッシュ、その中の変わった作品枠で選ばれたと私は思っています。


 もちろん、編集様はそんなこと言っていないのですが、状況から見るとそうかなと。それ自体は、非常にラッキーだったと思います。


 新連載枠が多かったので、私の作品も引っかかったのだと思います。ただ、掲載できるページ数は決まっているので、壮絶なサバイバルが予想されます。


 おそらく、アンケートが悪い作品から切られていって、単行本発売までこぎつけられない可能性もあると思います。


 現実世界でもサバイバルです。



 ですので、プレッシャーや不安によるストレスがエグく、金銭面だけで見れば割りに合っていないと思います。


 趣味を仕事にしてはいけないと言われている理由が分かった気がします。


 しんどい部分もありますが、楽しい部分もあります。なので、コミカライズの打診を受けたことに関しては後悔していません。



 原作版の書籍が出ていないので、コミカライズしても原作の宣伝にならない私は、コミカライズに対して、金銭的な魅力はあまりありません。


 ではなぜコミカライズの打診を受けたのか? それは嬉しかったからです。商業として、作品の価値が認められる。そして、世の中に形として残る。


 こんなに嬉しいことはありません。


 誰もが経験できることではないし、作品が形となり世に出れば、野人という人間の生きた証が残る。これで、トラックに轢かれてくたばっても笑顔で死んでいける。そう思いました。


 前振りが長くなってしまいましたが、本題に入ろうと思います。



 なぜ、原作の描写と漫画版の主人公が違うのか? その理由は小説と漫画の『違い』が原因です。当たり前のことなのですが、その違いをしっかり理解していなかった私は、非常に驚きました。


 小説は情報量が多い媒体だということに改めて気付きました。漫画は視覚情報が多い分、決められたページ数に対する情報が少なくなってしまうのです。


 web版野人は、水を飲むのにも慎重です。水は透き通っているか? 流れはあるか? 昆虫の幼虫がいないか? 川エビなど綺麗な水を好む生物はいるか? 有害物質はないか? 酸性またはアルカリ性に極端によっていないか? 軟水か? 硬水か? 様々な手段を用いて、そういったことを判断します。


 もちろん、web版でもこれを全部書くと長尺になるのである程度カットはしますが、非常に慎重に行動しています。


 しかし、漫画版でこれをやると、それだけで1話終わってしまう勢いです。私は嫌いじゃないのですが、おそらく、そんな漫画は売れません。


 水を飲むという行為を1コマで表すと、それなりの流れがある綺麗な川の水を飲む。という描写になります。


 見た目が綺麗な水は、それだけで危険度が下がります。川の流れがある程度激しいと、昆虫の幼虫などが生存しにくいので、このリスクも減ります。


 でも、見た目が綺麗で流れが早い川=ある程度安全 という説明がなされていないので、読者様から見ると、最低限の警戒すらせず、不用心に川の水を飲む奴に見えるわけです。


 ですが、その説明を漫画ですると、長尺でテンポが悪く盛り上がりに欠ける作品になってしまいます。


 この時点で、web版主人公のような臆病で警戒心が強い。という描写が無理になります。


 なろう作品らしくない主人公の性格も、野人転生の魅力ではあるので、残念な部分はありますが、原作通りの主人公という線はこれで消えました。


 次にキャラデザですが、先に書籍化のオファーがあれば、私は原作の文章通りのキャラデザをお願いしたと思います。


 ああいったエッセイを書いたので、後には引けません。しっかり自分の意志を通したと思います。


 ただ、今回は書籍化をすっ飛ばしてのコミカライズです。原作を忠実に再現したイラストを元にコミックを書くという手順ではなく、キャラデザも作画担当の小林先生にお任せすることになります。


 どうせweb版のような主人公を描けないんだったら、キャラデザも原作基準じゃなくていいじゃないか。私はそう思いました。


 商業化するなら、プロにお任せして商業的に成功しそうなデザインにしてもらおう。そう思ったんです。


 私は派遣社員として色々な仕事を経験しました。飛び込みの営業マン。イベント会社の物流担当。カスタマーサービスの電話オペレーター。J◯で野菜の加工をしたこともあります。


 その経験で気付いたことは、プロの仕事に素人が口を出すとろくなことにならない。という当たり前のことです。


 ですので、原作に忠実な主人公を描写できないのなら、プロにお任せしてしまおう。という考えに至ったわけです。


 私は内容の適合性と格闘描写のチェックをして、後はお任せという丸投げに近い形を選びました。


 原作者としてそれで良いのか? という思いはありましたが、漫画版野人転生に関しては、それで正解だったと思います。


 原作に忠実なバージョンのネームより、漫画として魅せるバージョンのネームの方が明らかに面白かったんです。


 やはり、餅は餅屋。プロにお任せした方がいい結果になりました。


 web版の四角い体型のゴリゴリのおっさんにも愛着はありますが、自分以外の感性が融合した漫画版野人転生の主人公も好きになりました。


 web版の主人公はこれからもweb版でもがきながら生きていく。漫画版の主人公も、web版とは違う魅力で読者様に楽しんで頂く。


 同じ作品だけど、別物として楽しんで頂ければ素敵じゃないか。そう思ったんです。金に目がくらんだ訳でもなく、編集様にゴリ押しされた訳でもありません。


 正直、ネットに蔓延る出版関係のトラブル情報にビビりまくっていたのですが、作画の小林先生と担当編集者様はとても丁寧に対応してくださり、安心して仕事ができています。


 作画の小林先生は、私の長ったらしい説明と、重箱の角を突くような指摘にも丁寧に対応してくださいます。


 担当様も、細かな部分までしっかり確認してくださり、私の質問にも丁寧に対応してくださいます。



 応援して下さる読者の皆様。支えてくれる作家仲間たち。様々な人に恵まれて、野人転生はコミカライズされ、本日発売の電撃大王7月号に掲載されています。


 改めて、感謝の気持ちを捧げます。本当にありがとうございます。


 ゴールではなく、これからがスタートです。現状に満足せず、作品のクオリティを少しでも上げられるように、これからも精進していこうと思います。



 話が散らかっているので、最後にまとめ。


 コミカライズのオファーを受けたのは、自分が生きた証を残すため。(中二病)

 キャラデザが原作と違うのは、漫画版では原作主人公の描写が不可能。書籍版のキャラデザも存在しない、それなら漫画版に最適化されたキャラデザにしてしまおうと考えたため。


 あれ? まとめると4行で終わってしまった。


 しかし、結構ぶっちゃけて書いちゃったな。後で編集様に怒られないといいけど……。

本日発売の電撃大王7月号にて野人転生、連載開始です。書店でお手に取って頂けると幸いです。読んで面白かった! そう思われた方は、アンケートを書いて頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
マンガを見て原作小説を読んだあとにココに来ました。コミックと原作との違和感それは私にもあってそれの回答的な物があるのかと思って…結果無しでした(-_-) 私の違和感はパピーをなぜオオカミではだめだった…
いきなりコミカライズだったなんて今初めて知りました! 私が知らないだけで書籍版もあると思い込んでました! webもコミカライズもどっちの野人も好きですわ!
[良い点] どっちも面白いですし、何よりどちらの主人公も好きです
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