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貴方がいてくれたから

わたくしは今の状況が分からなかった。

「…えっ!」

「頼む…! 落ち着いてくれ! 羽黒…!」

やっと理解できました。わたくし藤宮様に抱きしめられてる…

「…とても懐かしいですね。」



これはまだわたくしが藤宮様と会う前のこと。

「琴音、お稽古は終わったのかい?」

「はい、お父様。」

わたくしは子供の頃、華道に書道、ピアノにバレーにといろんな稽古に習い事をしていました。

「家庭教師の方が来る前に予習をしておきなさい。」

「はい、お父様。」

うちはとても厳しくて見た目にも厳しかった。

前髪は目の上5㎝の辺りで並べられ長さも肩まで毛先も並べられている。 そのせいクラスのみんなからは人形とか呪いの人形とか言われていた。 なぜ呪いの人形と言われるのは目の色が血のように赤く、髪が真っ黒だったからだ。そのせいでわたくしはいじめを受けていた。

わたくしはこんな生活にうんざりしていた。

「……誰か助けて……」

そんな叫びは届くわけもないと思っていたのですけど。

「おいやめろよ!この子は人形じゃなくて人だぞ!」

「なんだよ、この人形庇うのかよ!」

「俺はいじめは嫌いだ!」

なんて優しい人なんでしょう。

「大丈夫か?」

「あ、ありがとうございます。」

そうだお名前を聞かないと。

「あのお名前を。」

「あ、母さんが迎えにきたから俺帰るね。」

「あ…」

行ってしまいました。また会えますかね。

それから数日後、わたくしはお稽古や習い事がなかったので街を散歩してました。 すると道の先に男の子がいました。その男の子は以前わたくしを助けてくれた子でした。

喋りかけたいのですけどこの喋り方はちょっと硬い気がしますので喋り方を変えなくては。

「あ、あの!」

「うお!ビックリした。 あれ確か君この前の。」

「はい、じゃなくて うん。」

お名前を聞かないと。

「あの、この前はお名前…名前を聞いてないから教えて欲しいなって。」

「名前? 言ってなかったけ?」

聞いてませんよね?

「はい、あ、うん。」

「俺の名前は藤宮 涼 よろしくね!」

藤宮様と言うのですね、いや様付けは変ですよね。

「藤宮君よろしくね、わたくし…じゃなくて私は羽黒 琴音です。」

すると私の名前を聞いて悩み始めた藤宮さ…君。

「良しなら、はーちゃんだ!」

はーちゃんとは私のことでしょうか?

「あのはーちゃんとは?」

「羽黒のあだ名だよ。」

あだ名ですか。

「それでし…それだったら藤宮君にもあだ名付けていい?」

「もちろん!」

なんて付けましょう、藤宮君が喜んでくれるあだ名をつけなくては。 藤宮君と同じように名字の頭文字でどうでしょう。

「ふーちゃんはどうで…どうかな?」

それを聞いた藤宮君は悩んだ。やっぱり変だったでしょうか。

「いいねそれ!ありがとう、はーちゃん!」

藤宮君とても喜んでくれた。

「私もふーちゃんって呼んでいいかな。」

「当たり前だろ!」

それから私とふーちゃんは毎日のように遊んでいた。

だがそんな日々は長くは続きませんでした。

「お父様、藤宮君と遊んできます。」

「待ちなさい、琴音。」

「どうしたのですかお父様?」

この時のお父様の表情は今でも覚えています。

まるでゴミを見るかのような表現を。

「琴音、お稽古はちゃんとしているのか?」

「それは…」

「習い事をちゃんとしているのか?」

「………」

「勉強は?」

「………」

何も言い返せなかった。

「はぁ、…琴音が何も出来なくなったのはすべて藤宮という奴のせいか。」

「!?」

「もう二度、そいつには会うな。」

嫌だ、ふーちゃんに会えなくなるなんて嫌だ。

「ふーちゃんに会えなくなるのは嫌だ! ……!?」

「琴音、言葉使いまで…」

つい言葉に出してしまった。

「合わせないだけじゃダメみたいだな、お父さんがそいつと話してくる。」

ダメ、それだけはダメ!

「分かった!お稽古も習い事も勉強も頑張るから藤宮君にも会わないから!おねがい行かないで!」

「言葉使いがなってないんじゃないか、琴音。」

「……お稽古、習い事、勉強を頑張ります。藤宮様にももう会いません。ですのでどうか行かないで下さいお父様…」

本当はそんなの嫌だった。

「本当に出来るんだね、琴音。」

「はい、出来ます お父様…」

「分かった、なら今すぐにしなさい。」

会いたい、会いたいよ、ふーちゃん…

それから何日経ったのだろう。あの時遊びに行けなかったことをふーちゃんに謝りたい…

「頑張っているね、琴音。」

「…はい、お父様…」

会いたいよふーちゃん… 会いたい、会いたい、会いたい!! ……こいつさえいなければ……

私はどうしてもふーちゃんに会いたくて夜中に抜け出してしまった。

こんな夜中に迷惑だよね、でもふーちゃんに会いたい。

私は呼び鈴を鳴らした。

「はーい。」

ふーちゃんの声だ。

「…はーちゃん!」

ふーちゃんは私の名前を呼ぶと同時に私を抱きしめてくれた。

「ふ、ふ、ふーちゃん!?」

「良かったもう会えないかと思ったよ。」

私の心の中は嬉しさもあり悲しさもあった。

「ふーちゃんよく聞いてね、私、ふーちゃんとはもう会えないの…」

「えっ! なんで!」

心が痛かった。

「だからね、あのとき、遊びに行けなかったこと謝りに来たの。」

「ねえどうして!」

泣くな私。

「ごめんね!」

「待ってよ、はーちゃん!」

私は涙を見られたくなくて、走って逃げてしまった。

翌日、私が夜中に抜け出してふーちゃんに会いに行っていたことがバレた。

「もう二度と会えないように引越しをするしかないな。」

もう会えなくなっちゃんだ、ふーちゃん…

「琴音、分かったか?」

「はい、お父様…」

会えないなんて嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!

会いたいよふーちゃん…

もう一度会えたなら、もう二度とふーちゃんを離さない、誰にも邪魔させない。






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